『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1145

2017-10-20 08:06:03 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『これについては、船種、用途、大きさですな。今、浜頭と私の乗っているこの程度の大きさ、新艇水準の大きさの船であれば、イリオネスのところの造船でいけると考えられます。これ以上の大きさの船となると注文主の発注を受けての建造となります。イリオネスらのところでは建造が無理と考えられます。また、新艇より小さい船は船大工で十分にいけます』
 『そのように考えるとイリオネスらが建造する大きさ船は市場の要求する大きさの船であったというわけだ。この2種の形態の船の建造で市場に乗り出していけばいいということになる』
 『いうなれば、彼らは、そういうカタチで船の建造事業を行い、市場の要求に応じていけばいいということになるわけですな。彼らの事業経営をそのように指導してやることが重要です』
 『そういうことになる』
 課題の論議が一段落して話が違う方向に振られていく。
 『おう、スダヌス、俺がいま、操舵している、この新舵だが船の未来を考えると、この新舵方式の構造になると考えられる』
 『そのように考えられますか』
 『また、2本帆柱、2段帆、この構造も未来を先取りしている構造といえる。将来は、このカタチの発展形になると自信をもって言える。その意味では彼らは大した者らである』
 『そうですか、彼らの先見性、構想力は見あげたものです』
 『スダヌス、これでお前と話し合って決めるべきを決めた。話し合った甲斐があったというところだ』
 『ご苦労でした』
 『しかし、お前もよく考えてくれた、ありがとう。また、イリオネスに代わって礼を言う』
 二人は目を合わせる、うなずき合った。
 『俺は、エドモン浜頭と話し合う。そして、マリアの集散所にテコ入れする。お前はキドニアの集散所にテコ入れをやれ。この俺が手を貸す』
 『解りました。力を尽くします』
 二人の話し合いは終わった。
 『おう、スダヌス、いま、どのあたりを進んでいる?』
 『もう、モノナフテスの岬の沖です』
 『そうか、この速さなら、あと半刻余りでイラクリオンに着くといったところだな。レテムノンを出てから櫂を使うことなく来たか』
 テムノスは航走を振り返る。
 『そうですね、いい風に恵まれました』
 スダヌスがゴッカスを手で招く。
 『おう、ゴッカス、今日はいい風に押されてここまで来た。あと半刻余りでイラクリオンに着く。イラクリオンの浜へは俺に操舵を任せてくれ、勝手知ったる浜だ。いいかな?』
 『スダヌス案内役に任せます。操舵担当のグッダスをこちらにつけておきます』
 『おう、そうしてくれ。このことをオキテス隊長に伝えておいてくれ。じきじきに隊長の許可もらうべきところなのだが許せ!』
 『了解しました』
 スダヌスがテムノスに代わって、試作戦闘艇の操舵棒を握る、艇はモノナフテスの岬の沖で進行方向を南東に転進する、帆に受ける風の風向角度が変わる。
 船速がややおそくなる、致命的な速度減ではない、艇はしぶきを飛ばして波を割って進んだ。
 テムノスが艇首のイリオネスの隣に座す、オキテス、ゴッカス、操舵担当のグッダスが艇尾の舵座に来る、スダヌスの舵操作を見つめる。
 オキテスがゴッカスとグッダスに声をかける。
 『ゴッカスにグッダス、指示しておく。イラクリオンの艇の係留について、スダヌス浜頭から係留の件についての要領を聞いておくこと。いいな』
 『解りました』
 『スダヌス浜頭、よろしく頼みます』
 『おう、了解!』
 オキテスが艇首に戻っていく、スダヌスは、ゴッカス、グッダスの二人とうなずき合い、操舵棒を握る、艇首のかなたにイラクリオンの浜を視野に入れた。