『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  605

2015-09-04 05:55:42 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、オロンテス、昨夕、二人に話してくれたな』
 『はい、話しました。二人は、それぞれに考えをまとめてくれていると思います』
 『パリヌルスにオキテス。オロンテスから話を聞いて考えをまとめているな。用件の一つ一つを考えてみて、答えの選択肢が数のある問題ではない。俺は俺で考え、昨日、統領と充分に話し合った。集散所と手を組む、それについては統領の賛同を得ている。意見を言い合うことはない。この五人で決断するまでだ。いいな』
 イリオネスは三人の目をを力強く見つめた。
 『判りました』
 パリヌルスが三人分の答えをまとめて言う。
 『まず、新艇の価格決めの会合に出席する二人を決める』
 『パリヌルス、お前の考えは?』
 『はい、私の考えでは、オキテスとオロンテスが適任であると考えています』
 『そうか、オキテスとオロンテス、おう、二人、君ら二人が最適であると考えられている。統領と俺も、その様に考えている。オキテスにオロンテス、引き受けてくれるな』
 『了解しました』
 二人は承諾した。
 『次の案件だ。明日、集散所の担当者二人、ハニタスとテミトスがこの地に視察に来る。この担当者二人に対する対応の件だが、オキテス、お前から状況を聞いておきたい』
 『はい、その件について話します。今朝早く、ドックスと用材の質と量についてチエックしました。用材の材質については、新艇建造にふさわしい、上質の用材であることを確認しました。申しぶんありません。用材保有量の件ですが、帆柱に使うレバノン杉の納入はまだですが、用材量については、有り余る状態ではありませんが、5艇建造に対応する量を保有しています。不足が予想される場合には、それに対応する体制ができています。次いで、新艇建造の場の件ですが、これについては、今日の午後ドックスと二人で、場の点検、及び、工具類、消耗品類について詳しくチエックを入れます』
 『よ~く、解った』
 『次、新艇の内覧会、試乗会についてだが、パリヌルス、お前の考えを聞く』
 『はい、この件については、私が担当することになっています。新艇の事業がスタートした時点から決まっていたことです。現在、その計画実現にどうするか思案中です。担当にギアスとその漕ぎかた連中の手を借りてやろうと考えています』
 『おう、よく、解った。統領、如何でしょう?』
 『一部始終を聞いた。俺からのとやかくはない。軍団長、DO IT!やるのだ!』
 『一同、それでやる!統領の言葉も聞いた。この方針で実行する、いいな。成功を約そう』
 一同の実行体制が決まった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  604

2015-09-03 05:41:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『よし、解った。俺が信じているドックスだ。ありがとう。俺が考えていた通りだ。安堵した』
 『オキテス隊長、私が新艇建造の任に就いたことをとても感謝しています。必ず期待にそえるものを造ります。ヘルメス艇はありあわせの用材を使って建造した試作艇です。ヘルメスを超えたいい新艇が出来あがります』
 『ほう、そうか、それは心強い。その一言このうえなくうれしい。三日後の事だが、新艇の価格決めの第1回目の話し合いが、キドニアの集散所で行うことになっている。自信をもって臨めるということだ。ありがとう、ドックス!』
 『はい』
 彼の返事は短かった。
 『ドックス、もうひとつ、二人で確かめたい用件がある。昼めしのあとでだが、時間をとってくれ。建造の場を詳しく見ておきたい。ここでも二つの要点だ。建造の場が、通常考えられる建造の場に比して、よくできているか否かだ。もうひとつは、建造に使用する工具類、釘やその他の消耗品類が揃っているか、それら消耗品類が上質のものを使っているかどうかについて、二人で目を通そう』
 『判りました。私は建造の場にいます』
 『解った』
 二人は朝めしの場に向かった。朝めしを終えたパリヌルスら三人は、イリオネスの宿舎の前に集合した。
 イリオネスが戸口から姿を見せる。
 『おう、おはよう。揃っているな、行くか。今日は、統領の宿舎で話し合う』
 彼らの表情はやや固い、決めた決断を胸に抱いている。足元の確かな歩みで歩んで行く、アヱネアスが宿舎の前で四人が到着するのを待っていた。
 『おう、おはよう』
 『おはようございます』
 『軍団長ご苦労。そこの木立ちの草の上でやろう』
 『判りました』
 ときおり、話し合いをやる木立ちの場である。樹木を裁断した座席が数席ある。五人が思い思いの席に就く。一同が顔を見合わせる。
 『俺からの前置きはない。軍団長、始めてくれ』
 イリオネスは、パリヌルスら三人の目を見つめて口を開いた。
 『前置きはない、即、本題について打ち合わせを始める。いいな』
 三人が異口同音で答える。
 『軍団長、始めてください』
 イリオネスが鋭い目で話し始める、場が引き締まる。パリヌルスらは緊張した面持ちで彼の口元を見つめた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  603

2015-09-02 05:55:59 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは、跳ね起きた、五感が冴えている、陽の出前の浜へ駆けおりる、朝行事も終えて、彼はドックスを待った。
 ドックスが姿を見せる。
 『あっ!オキテス隊長。おはようございます。今日は、早いですね』
 『おう、急ぎの用があってな』
 『相手は私ですか、そんな気がしました。今朝、アサイチの虫の知らせです。朝行事を済ませます』
 『おうっ!』
 ドックスは連れの者たちと離れて朝行事を済ませ、渚に立つオキテスの傍らに立った。
 『おう、ドックス、歩こう、用材の置き場へだ』
 二人は、オキテスが用向きとしている用材の置き場へと向かってゆっくりと歩いていく、オキテスがおもむろに話しかける。
 『ドックス、聴きたいことがある』
 『はい、何でしょう?』
 『二つだ。それを二人で見て確かめておきたい。まず、第一に聞きたいのは、納入された用材の材質だ。用材が新艇建造にふさわしい用材であるや否やだ。第二は、用材量の件だ。用材量が5艇を建造するのに十分かどうかだ。そうでない場合には納入計画ができているかどうかだ。その2点が今朝の用件だ』
 話し終える頃には、用材の置き場に着いた。
 『隊長、聴かれたことについて答えます。用材は新艇を建造するにふさわしい用材であることです。極上かと問われると肯定は無理です。新艇建造に用いる用材としては、上の上の部類になります。安心してください。極めて上質の新艇が建造できます。これについては、ガリダに感謝しなければならないところです。二番目の用材の量についてですが、現在の保有量では、有り余る状態ではありませんが、不足が予想される場合においては、即刻の調達ができるようになっています。帆柱用のレバノン杉が未納入になっていますが、製材担当責任者のノコギスの言によれば、近々中に納入される段取りになっているそうです。以上が隊長の質問に対する私の返答です。よろしいでしょうか』
 『解った。それだけ聞けば充分だ。安心していて、いいな』
 『安心してください。何か、不具合があれば、その旨を隊長に上申しています』
 オキテスは、彼の答えに安堵の胸をなでおろした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  602

2015-09-01 05:17:27 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『そうか、オロンテス、お前の指摘する通りだ。俺たちもお前の言ったことに注意を払わなかったわけではないが、それを丹念にやったのかと問われると、自信を持った返答ができない。集散所の担当が来る前に俺たちで念を入れて調査する。俺もその件について、ドックスに質してはいない。ドックスの方からは、今のところ、それらについて、意見があがってきていない』
 『集散所の担当の言うところは、調達した用材の材質と5艇建造に見合った用材量が調達されているかについて、調査の目が向けられている。ガリダとの交渉の件があるからだろうと考えられる。それから、建造の場が新艇建造に関して、いい設備状態かが問いたいところらしい。それがよくないと、いいモノづくりができないとみている』
 『おう、よく解った。明日そういったところを念を入れて点検する。軍団長が言う脚下照顧を、少々、怠ったかな。反省、反省!』
 『オロンテス、お前の言うところを理解した。十二分の配慮をして事に当たる。ありがとう。いま、オロンテスの言ったこと、俺たちの考え方やり方がに少々欠けているところがあったかもしれない。反省する』
 『俺たちのチエック姿勢が問われるところだな。解った』
 パリヌルスは、諾と頷いた。
 『オロンテス、そのほかには?』
 『軍団長発言だが、この取引展開について同期的に進める事項に、新艇の内覧会、試乗会の開催の事が話に出た。集散所にとっては船の試乗会など、初めての事らしい』
 『ほう、そうか。それは、俺の担当業務である。解った。それについては、俺の方で企画して実行することになっていることだ』
 パリヌルスが考えを述べた。話を継いでいく。
 『会談の内容の大体を理解した。オキテス、どうだ、いいか。アサイチの打ち合わせを終えたら、即、その作業に取り掛かろう。ドックスの目も節穴ではない、ドックスは信頼のおけるスタッフであることは間違いない。そのあたりの事を充分に心得て日々の作業に当たってくれているはずだ。気を病ませることはないと思っている』
 『オロンテス、解った。明日アサイチにチエックできることはチエックして打ち合わせに出席する』
 オキテスは、言って二人と顔を合わせた。
 『オロンテス、話はまだあるかな』
 『いや、今、言ったこれだけが要点だ』
 『オキテス、いいな。話し合いを終わろう。では、明日の朝だ』
 三人は月の淡い光が照らす道を互いの宿舎へとたどった。