「告白」(湊かなえ 著)(双葉社)
昨年のベストセラーの一つ、特に国内ミステリーではだんとつの評判と売れ行きだったらしい。
描いている世界が、いやというほど報道される少年少女(この小説では中学生)のいじめ、家庭内暴力、結果としてそうなる様々な事情などであり、そこで犯行が明かされているようで、どうして?という問いかけが読者から続いて出てくるように、うまく出来ている。
小説としての成功のわけを考えてみると、六つの章それぞれが事件にかかわる五人の一人称形で書かれている、つまりスピーチ、手紙、日記などであるということだろうか。全体が一人称、あるいは作者の視点で三人称というのが普通だが、こういう構成は記憶がない。
それが、単調にならない、視点がかたよらない、それでいて部分部分に真実味というか熱が温度が与えられている作品を成立させた、ということだろう。
そしてヒューマニスティックな終わり方でないのは納得できるが、読み終わった後の感じは、実はあまりよくない。これだけの素材を扱えば、その結末、カタルシスは簡単ではないが、少なくとももう一つ処罰がなければ終わらないはずである。
小説の中にドストエフスキーの名前が出てくるように、そういう世界、例えば宗教(神)、精神の病というよりはもっと強烈な悪、性、娼婦、というような要素でもなければ、結末は作れないのかもしれない。
それは作者もわかっているのか、各章には聖職者、殉教者というような、宗教者の名前が与えられている。