メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

白川静 漢字の世界観 (松岡正剛)

2009-01-22 16:49:07 | 本と雑誌
「白川静 漢字の世界観」 (松岡正剛 著)(平凡社新書)
 
白川静(1910-2006)の業績が大変なものだということは、少しずつ知り始めていたものの、それ以上はなかなか入りにくかったし、この本で松岡が書いていることによれば白川静について第三者が書いた本はなかなか出てこなかったようである。
 
昨年、NHKの「知るを楽しむ 私のこだわり人物伝」で松岡正剛が4回にわたり「白川静-漢字に遊んだ巨人」を語ったものは、私が白川に興味を持つきっかけであった。この本もその流れで出来たようである。
 
本全体がですます調の話し言葉で、比較的楽に読み進むことが出来る。漢字のなりたち、特に古代の祭祀とのかかわりは放送に次いで確認できた。
詩経、孔子、狂字から遊字、といったところはそれでもわかりにくい。
 
ただ最終章「漢字という国語」で、万葉仮名から、仮名、カタカナ、万葉集、古今和歌集、紀貫之あたりの展開は、なるほどそうだったのかで、日本に漢字がもたらされた後、単に文字がなかった世界への道具の輸入でなく、表音から表意、そして文脈とのかかわりで多様な意味をもつかたちなど、日本語の魅力あふれる世界が生まれてきたことがよく理解できる。
 
やはり、軽々に日本語に対して、改変、漢字の制限などをすることは、これを読むと本当に愚かなことであり、日本の活力を削ぐものであることが、もう一つ上のレベルでわかってくる。

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