「ブラック・ダリア」(The Black Dahlia 、2006米、121分)
監督:ブライアン・デ・パルマ、原作:ジェームズ・エルロイ、音楽:マーク・アイシャム
ジョシュ・ハーネット、アーロン・エッカート、スカーレット・ヨハンソン、ヒラリー・スワンク、ミア・カーシュナー、マイク・スター、フィオナ・ショウ、ジョン・カヴァノー
第2次大戦が終わった後のロス・アンゼルズ、その市警でボクサー扮する兄弟のような関係になって事件を追う一方、先輩(アーロン・エッカート)とその女(スカーレット・ヨハンソン)両方と仲良く付き合う後輩(ジョシュ・ハーネット)。おかしな関係なのだが、それはもちろんわけがあり、ある女優志望者(ミア・カーシュナー)が殺された事件から、この地の有力者(ジョン・カヴァノー)、その娘(ヒラリー・スワンク)、また同じジェームズ・エルロイ原作の「LAコンフィデンシャル(1997)」同様、ロス市警の背後にある暗い世界、これらがおりなすストーリーである。
人間関係が複雑で、それが少しずつ明かされていく展開は、よほど注意していても細かい見逃し、聞き逃しがでてくるが、最後の30分はかなり丁寧な解決編となっている。
特に前半の進行はよどみなく、しかもさりげなく怖い雰囲気を次第にかもし出し、さすがデ・パルマと思わせる。
特に色調とカメラがいい。カメラは広角を多用しているのだろうか、中心人物に迫りながら、背景とマッチした「絵」になっている。
登場人物それぞれが重い過去と後悔を持っていて、バランスよく描いている反面、主人公には感情移入できない。それが物足りないところではある。
また2時間でわかりやすいストーリー展開にするのは困難のようだ。この人ならではの編集ではあると思うけれど。
ジョシュ・ハーネット、存在感はいまひとつだが、この若さはこれでよかったか。アーロン・エッカートは「カンバセーションズ(2005)」でもそうだったが、内にもう一つの人格をうかがわせる役はうまくこなしている。
スカーレット・ヨハンソンはここでも出過ぎなかったところが、見るものに最後にこの役を印象付けていて、これは成功である。普通なら、ヒラリー・スワンクに対抗して力が入りすぎてしまうところだろう。そのヒラリー・スワンクだが、もう少し力が抜けていてもよかったと思うのだが、この人はそうはいかないタイプなのかもしれない。
音楽が、全編うまく雰囲気をかもして出しており、最近の映画では久しぶりに秀逸なサポートであった。
LAではこのころから、ちょっと気取った家庭のディナーではビールよりワインを飲んでいたのだろうか。
最初は吹き替えで見て、2回目に字幕で見た。字幕の方が情報量は多かったが、最初にこちらで見たら映像、台詞両方とも見逃す部分が多かっただろう。今回は正解だった。