メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

田渕俊夫展 (智積院襖絵)

2009-01-16 21:31:08 | 美術
田渕俊夫展」(智積院講堂襖絵完成記念)(1月14日(水)~27日(火)、日本橋高島屋8階ホール)
 
京都東山、智積院講堂の不二の間、胎蔵の間、金剛の間、大悲の間、智慧の間を仕切る襖絵60面を田渕俊夫が墨だけで描いたもの。これを寺における公開に先駆けて展示したものである。
 
これがどんなものであり、どのようにして描かれたかについては、前回のNHK新日曜美術館で見ていた。それでもこうして襖の実物を目の前にすると、この職人の、克明な仕事に驚かされる。
そう、現代のアートというより職人の仕事というべきもので、60面をこれだけ細かく、そして画家の思い通りに描ききった、それも修正の上塗りがきかない墨で、である。
 
といっても、さっと見てすごいというよりは、よく見ていくうちに、ここに描かれた自然がいとおしくなるといった印象だ。となると、修行の場でこれを見てリラックスしすぎないかという余計な心配はある。
 
これは実用のものだから、今後もっと時間がたって見られてどうか、というものだろう。 
智積院にわざわざ行くことは先ずないだろうから、こうしてみる機会を得たのは幸運だった。
 
この数年、東山魁夷(唐招提寺)、平山郁夫(薬師寺)と、有名画家によるこのような奉納が続く。話題づくりという感もあろうが、ヨーロッパでルネッサンスのころには多くの大画家、大彫刻家にこのようなプロジェクトがあった。珍しいことではないのだろう。
 
必ずしも全体が同じ技法ではなく、朦朧としたもの、輪郭が描かれたものなど、さまざまである。「桜」はやはりモノクロでも色を感じさせるし、「すすき」は秀逸である。

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