田渕俊夫展 いのちの煌めき (渋谷区制施行80周年記念)
渋谷区立松濤美術館 2012年6月5日(火)~7月22日(日)
田渕俊夫(1941- ) の作品をじっくりみたのは、2009年に京都東山智積院に襖絵60面をおさめる前に、日本橋高島屋で公開されたときだけである。の草花や桜を墨で描いたものであった。
持っていたイメージはこれがベースで、一見地味な感じで精緻な写実を追求する日本画家というものであった。しかし、先入観とは恐ろしいものである。
なんという、広い世界と多様性を持った、個性的であり強い画家であろうか。
初期にかなり長い間アフリカに滞在し、またアジアにも多く題材を求めている。植物の不思議な生命力、また「時の証人」で描かれるのはホーチミン市で走るバイクの群れである。「天山」の上の二割ほどの部分にハイライトを持っていった大胆、3.11の震災後に描かれた巨大な墨絵「煌Ⅰ、Ⅱ」の圧倒するある意味で虚しい自然の力。「名古屋市」の夜景、空港などは、日本画家としては珍しい取り組みだが、「自在」ということを感じさせる。
墨絵に本格的に取り組み始めたのは2000年あたりからだそうだ。