ヴェルディ作曲:レクイエム
カラヤン指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団、合唱団
レオンタイン・プライス(ソプラノ)、fジオレンツィア・コッソット(アルト)、ルチアーノ・パヴァロッティ(テノール)、ニコライ・ギャウロフ(バス)
映像監督:ジョルジュ・クルーゾー ハイビジョン・リマスター版
1967年1月 ミラノ・スカラ座
初めて見るが、これは確か伝説ともなっている有名な上演である。
カラヤンがベルリンフィル、ウイーン楽友協会合唱団と1972年に録音したレコードで何度もこの曲を聴き、その充実した音とドラマティックな展開に引き込まれた。
そのベースがここにあるのだろう。上記レコードの福原信夫による解説には、この演奏翌日の新聞で「トスカニーニのすぐれた解釈をその風土とし、その上に宗教的な因習にとらわれることなく、カラヤンは偉大なヴェルディの精神を実現した」と激賞された、とある。
ただ、こうしてみるとあのレコード録音よりはこちらのほうがより宗教的な、おごそかなおもむきがある。私がカラヤンをはじめて直に見たのは1970年、万博にあわせてベルリンフィルと来日したときであるが、そのわずか3年前の映像ではさらにスリムであり、またオーケストラ、合唱団の風貌も、イタリアで戦後20年、頑張ってきた人たちのいい意味で真面目で無骨な感が強い。別ないいかたをすると、出演者全員に贅肉がない。
カラヤンの表情、動作、集中のしかたなど、修道僧のようでもある。
歌手たちでは、録音と重なっているのはギャウロフだけだが、プライスの発音にちょっとくせがある(これはやむをえないところもあるが)のを除くと、文句ない。
それにしても、パヴァロッティはまだ体格がいいという程度で、若く、二枚目役でもヴィジュアル的にまったくおかしくないだろうと思わせる。歌唱も宗教曲らしいもの。