メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ゲンスブールと女たち

2012-07-19 18:11:01 | 映画

ゲンスブールと女たち (Vie Heroique 、2010年、仏・米、122分)

原作・脚本・監督:ジョアン・スファール

エリック・エルモスニーノ(セルジュ・ゲンスブール)、ルーシー・ゴードン(ジェーン・バーキン)、レティシア・カスタ(ブリジット・バルドー)、アナ・ムナリス(ジュリエット・グレコ)、サラ・フォレスティエ(フランス・ギャル)、ダグ・ジョーンズ(ラ・グール(面))

 

歌手、詩人、作曲家、画家、俳優その他、マルチタレントとして、そしてスキャンダラスな言動で世の中を沸かせたセルジュ・ゲンスブール(1928-1991)の、子供の時から、女性遍歴、そして死まで、ドラマとミュージカル調の部分のミックスというかたちで、かなり自由に進めていく。

楽しめる傑作映画である。

スファールという人はゲンスブールのよほどのファンだったのだろう。実をいうとゲンスブールという人のことは知っていても、積極的に曲を聴くでもなく、ワルのイメージが強いが才能はあるくらいの認識しかなく、映画にしてもどちらかといえば娘のシャルロット・ゲンスブールの出た映画の方はいくつか見ているという状態だった。

 

セルジュはクラブのピアノ弾きの子で、父親は彼にかなり本格的なピアノを教えていたようだ。女性を前にして達者なショパンで感心させるという場面もある。そしてそれなりに才能はあったのだろう、だから悪徳、堕落を歌っても、その音楽がそんなに無理ないものになっている。また反逆的なものたとえば「ラ・マルセイエーズ」のパロディなども、説得力がある。 

 

何人もの女性に対してかなりひどい仕打ちもあるけれども、こうしてみると変に奸計を弄したものでなく自然なその時のわがままということが、またそれだから愛情も嘘ではないということが相手に分かるから、そんなに憎まれなかったのかもしれない。

 

そんな中、かなりの有名人が切れ目なくでてきて、存命の人もいるから、ここまでやっていいのかとは思うのだが、結果として相手に悪いようにはなっていない、ということは監督からというよりゲンスブールから来たものだろう。

 

ボリス・ヴィアン、ジュリエット・グレコが出て来る時期(戦後のある意味でよき時代)、ブリジット・バルドーとの不倫、フランス・ギャルのプロデュース(「夢見るシャンソン人形」など、懐かしい!)、そしてジェーン・バーキン、、、

 

これらの人たちは本人とよく似ている俳優とメイクで、見ていて楽しめる。もっとも主演の主人公本人がよく似ている。

フランス・ギャルはもうすこし子供っぽかったと思うが、グレコ、バルドー、バーキンは好演。

なかでも若いころのバーキンは本当にチャーミングで、惚れられたのはよくわかる。

ジュリエット・グレコを演じたアナ・ムナリス、はてどこかでと思ったら「シャネル&ストラヴィンスキー」のココ・シャネルだった。それにしても、女性歌手の大御所が結果として男性ミュージシャンを育てるというパターンはフランスでよくあるが、グレコの場合はマイルス・デイヴィス、セルジュ・ゲンスブールだから、大したものである。

 

 

 


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