チャイコフスキー:歌劇「マゼッパ」
指揮:ワレリー・ゲルギエフ、演出:ユーリ・ラプテフ
ウラディスラフ・スリムスキー(マゼッパ)、マリア・バヤンキナ(マリア)、スタニスラフ・トゥロフィモフ(コチュペイ)、エカテリーナ・セメンチェフ(リュボフ)、セルゲイ・セミシュクール(アンドレイ)
2019年6月2日、9日 マリインスキー劇場(サンクト・ペテルブルク) 2020年6月 NHK BSP
チャイコフスキーはかなり多くのオペラを書いているようだが、知っていたのは「エフゲニー・オネーギン」、「スペードの女王」、「イオランタ」で、これらは映像で見ているが、「マゼッパ」は知らなかった。
「マゼッパ」というオーケストラ曲があったと記憶しているが、これはリストの交響詩だった。
マゼッパは18世紀ウクライナの英雄で、独立を期してスウェーデンと組み、ピョートルのロシアに挑むが果たせず敗れる。このオペラはそこに実際にあったかどうかはあやしいエピソードを配している。
マゼッパは同僚で友人コチュペイの娘マリアと相思相愛で、反対を押し切って結婚する。コチュペイはそれを恨み、マゼッパが陰謀を企んでいるとロシア皇帝ピョートルに讒言をするが認められず、逆にマゼッパにその処刑が託されてしまう。マリアは夫の愛が覚めてきたのを疑うが、マゼッパはロシアに挑む意図を明かす。その後マリアは父の処刑を知ると、母とともに狂乱していく。
マゼッパの反乱は結局失敗し、最後はコチュペイの旧宅に逃げてくるが、そこでかつてマリアに恋していたアンドレイと出会い、これを倒す。そして夢遊病者のようなマリアが出てきて、同行しようとするがあきらめて去る。後に残ったマリアの弱い狂乱の場で幕となる。
第一幕では民衆の歌と踊りが存分に繰り広げられ、これは当時の劇場娯楽の定番として要求されるものかもしれない。権力と男女の愛、この流れは第2幕から本格的になる。
とはいってもこの作品、どちらかというと叙事、史劇にメロドラマをちりばめたという感じがあり、人間的なドラマの側面は弱いように思う。それでもチャイコフスキーの作曲能力は高く、見ていて飽きるという感じではない。
ドラマとして見た甲斐があったのはやはり「エフゲニー・オネーギン」、「スペードの女王」特に後者だろうか。ちょっと変わっている「イオランタ」もよかった。
歌手はみな役柄にあって、不足はなく、マゼッパのスリムスキーも立派なだけでなくふさぎの虫の感じもあるところがいい。マリア・バヤンキナはロシアのオペラにしては線が細い美人かなと思ったが、終幕の場面はむしろ彼女の特質を活かした演技だった。
指揮はゲルギエフだから、チャイコフスキーの硬軟、さらに豪というか、こういうオーケストレーションをやらせると本当に安心して聴けるし、さらに細かいところがうまい。
今、このウクライナの英雄のオペラをここで上演するということ、いろいろ考えさせるものがある。
指揮:ワレリー・ゲルギエフ、演出:ユーリ・ラプテフ
ウラディスラフ・スリムスキー(マゼッパ)、マリア・バヤンキナ(マリア)、スタニスラフ・トゥロフィモフ(コチュペイ)、エカテリーナ・セメンチェフ(リュボフ)、セルゲイ・セミシュクール(アンドレイ)
2019年6月2日、9日 マリインスキー劇場(サンクト・ペテルブルク) 2020年6月 NHK BSP
チャイコフスキーはかなり多くのオペラを書いているようだが、知っていたのは「エフゲニー・オネーギン」、「スペードの女王」、「イオランタ」で、これらは映像で見ているが、「マゼッパ」は知らなかった。
「マゼッパ」というオーケストラ曲があったと記憶しているが、これはリストの交響詩だった。
マゼッパは18世紀ウクライナの英雄で、独立を期してスウェーデンと組み、ピョートルのロシアに挑むが果たせず敗れる。このオペラはそこに実際にあったかどうかはあやしいエピソードを配している。
マゼッパは同僚で友人コチュペイの娘マリアと相思相愛で、反対を押し切って結婚する。コチュペイはそれを恨み、マゼッパが陰謀を企んでいるとロシア皇帝ピョートルに讒言をするが認められず、逆にマゼッパにその処刑が託されてしまう。マリアは夫の愛が覚めてきたのを疑うが、マゼッパはロシアに挑む意図を明かす。その後マリアは父の処刑を知ると、母とともに狂乱していく。
マゼッパの反乱は結局失敗し、最後はコチュペイの旧宅に逃げてくるが、そこでかつてマリアに恋していたアンドレイと出会い、これを倒す。そして夢遊病者のようなマリアが出てきて、同行しようとするがあきらめて去る。後に残ったマリアの弱い狂乱の場で幕となる。
第一幕では民衆の歌と踊りが存分に繰り広げられ、これは当時の劇場娯楽の定番として要求されるものかもしれない。権力と男女の愛、この流れは第2幕から本格的になる。
とはいってもこの作品、どちらかというと叙事、史劇にメロドラマをちりばめたという感じがあり、人間的なドラマの側面は弱いように思う。それでもチャイコフスキーの作曲能力は高く、見ていて飽きるという感じではない。
ドラマとして見た甲斐があったのはやはり「エフゲニー・オネーギン」、「スペードの女王」特に後者だろうか。ちょっと変わっている「イオランタ」もよかった。
歌手はみな役柄にあって、不足はなく、マゼッパのスリムスキーも立派なだけでなくふさぎの虫の感じもあるところがいい。マリア・バヤンキナはロシアのオペラにしては線が細い美人かなと思ったが、終幕の場面はむしろ彼女の特質を活かした演技だった。
指揮はゲルギエフだから、チャイコフスキーの硬軟、さらに豪というか、こういうオーケストレーションをやらせると本当に安心して聴けるし、さらに細かいところがうまい。
今、このウクライナの英雄のオペラをここで上演するということ、いろいろ考えさせるものがある。