この虫が外来種なのか在来種がなんらかの原因で天敵が消失して国内に蔓延したのか理由は定かでないが、盛岡市ではかなり猛威を振るっている。
ただこの虫、よくわからないのだが広がるスピードが遅いように感じる。もしかすると繁殖力か移動力が弱いのかもしれない。何にでもつくが、どうも相性があるのかもしれない。ユリノキ並木で一本だけ枯らす勢いなのに、両隣は大丈夫とかある。カツラやカエデ・モミジ類やナラ科の植物は蔓延しやすいが、そうでもない樹種もある。いずれ5年ほどかけて一本の木に広がってゆくようだ。初期は暑さや乾燥で木が弱っているように一見えるが、相手は虫なので、等比級数的に増える。なのである日突然大量発生したように見えるだけのようだ。
近所の庭を眺めていて一つだけわかったことがある。手入れで状態が変わるのだ。やはり手入れの難しい高木は被害が出ているが低木はさほどでない。庭師が入っている庭では被害が少ない。これは何を意味するのか。
枯れ枝を外しているのだ。庭の手入れの基本なのだが、枯れ枝を木に残しておくのはみっともない。そこでマメに枯れた枝を外している庭は被害が少なくなるのだ。
カツラマルカイガラムシは新梢について樹液を奪い取って枝を弱らせる。それが枯れるとカイガラムシは移動できないので、そこに残ってしまう。盛岡だと5月と9月にそこから幼虫が発生するので、枯れた枝を積極的に外してゆくと、カイガラムシの密度を下げることができる。高木でない限り可能な方法だと思う。枯れ枝は短く切って、燃えるゴミに出す。高さが3メーターまでの木だったらなんとかできると思うが、庭師に頼むのがベターだろう。
市街地の庭ではこういった対策が有効だろう。それでも蔓延したら、冬季に枯れ枝を外して石灰硫黄合材かマシン油乳剤等の農薬を散布する。石灰硫黄合剤は殺虫・殺菌効果があるので効果的だが、噴霧すると近所が温泉の香りに包まれてしまうという欠点がある。あと自動車やトタン屋根を腐食させる可能性がある。そして庭は落葉樹だけでできているわけではない。針葉樹や常緑樹には薬害が出る可能性がある。その意味ではマシン油乳の方が使いやすい。ただ効果は低い。
それでも発生するようだったら、幼虫発生時に指定の農薬を散布する。ただこれは素人にはわかりにくい。それでもダメだったら指定の農薬を樹幹注入する。これはキットがあるが、これまた素人には取り扱いが難しい。なので樹木医に相談して、庭師や業者に頼むことがベストだが、ハードルが高い。
やはりできるだけ枯れ枝を外すというのが、地味だが一番効率が高い方法だと思う。そしてそれは庭の手入れの基本なので、カイガラムシ対策ということだけではなく、続けてゆくのが一番いいと結論している。初期の頃なんて多分普通の人にはわからないし、蔓延してからだと遅すぎるので、この方法が一番だろう。
一番問題になっているのは里山と公園だが、蔓延してしまったら伐採するしかなさそうだ。残念ながら。枯れかけて風倒木になるのが一番問題だからだ。ひこばえ等を大切に育てて復活させるのが一番かもしれない。低木のうちなら管理が簡単で、それが高木になるまでにこの蔓延が収まっている可能性がある。ただ一時的に景観が悪くなるから、公園管理者にとって頭がいたいことだと思う。