山形県在宅医療実態調査
-庄内地域でのデータをもとに考察ー
調査期間:平成29年7月3日~7月31日
調査対象:県内のすべての病院および診療所
調査対象:789
回答数:743(病院66、診療所677)回答率94.2%
1、訪問診療と往診の実態
訪問診療あるいは往診を実施している%
病院:37%、診療所:54%
<考察>
訪問診療や往診に馴染まない診療科を考慮すると、
54%は決して低い数字ではないのではないか(問11では内科系で71%が実施)。
一方で、自院通院中の患者が在宅医療に移行し、患者・患者家族が希望するのであれば、
訪問診療を行うことは、かかりつけ医としての責務であることの啓発活動は必要。
2、24時間365日での在宅医療の実施状況
病院:60%、在宅療養支援診療所:100%、その他の診療所:40%
<考察>
在支診の条件が、24時間365日対応なので、当然の結果か。
その他の診療所でも、40%が対応しているのはある意味評価できるのではないか。
(24時間、365日対応しなければならいとなれば、在宅医療から手を引く医療機関もでてくるのではないか。)
訪問看護師の活用、病院との連携、他の医療機関とのグループ診療などは、
今後とも積極的に進めていき、無理なく在宅医療ができる体制づくりが必要。
3、在宅医療の対象患者
以前から自院で対応していた患者:21%
他の医療機関から紹介された患者:29%
限定していない:46%
その他:4%
<考察>
在支診のほとんどは、自院以外の患者でも受け入れている。
在支診は、病院などからの在宅医療の紹介先として、機能しているのではないか。
4、1か月間の延べ訪問回数
病院:80%が月21回以上
在宅支援診療所:60%が月31回以上
<考察>
在支診でのばらつきが大きい、
訪問診療を増やす余地のある在支診があるのではないか。
一方で、在支診以外の診療所で、かなりの数の在宅医療を行っている施設もある。
在支診の要件の厳格化が必要?
5、訪問診療の実施状況
5-1 医療機関が予定する訪問診療対の応可能患者数と実際の患者数
51~100人の患者を診ている在支診、1-20名程度を診ている在宅支援診療所以外の診療所で、
まだ対応の余地がある。
<考察>
現在の患者数以上の対応不可と回答した医療機関においても、
訪問看護師や他医療機関との連携を探ることで、さらなる対応は可能ではないか。
5-2 1か月間の訪問診療の訪問先別患者数
総数
自宅:37%、集合住宅:12%、グループホーム:17%、老人ホーム:30%、
病院
自宅:56%、集合住宅:1%、グループホーム:10%、老人ホーム:31%、
在宅支援診療所
自宅:31%、集合住宅:19%、グループホーム:17%、老人ホーム:28%、
在宅支援診療所以外
自宅:41%、集合住宅:4%、グループホーム:19%、老人ホーム:34%、
<考察>
県の考察では、今後老人ホームは増えないとの予測であるが、老健、特養は増えなくとも、
有料老人ホームは増える可能性がある。
自宅を対象とした在宅医療は、介護負担、独居の増加、認知症の増加などの状況を鑑みると、
これ以上は無理ではないか。
今後は、集合住宅、有料老人ホーム、GH、小規模多機能などへの在宅医療のニーズが高まるのではないか。
6、在宅医療で対応可能な診療内容
留置カテーテル:62% (195人)
在宅酸素:60% (67人)
褥創管理:59% (159人)
PEG:58% (187人)
人口肛門管理:30% (14人)
中心静脈栄養:28% (24人)
人工呼吸器管理:25% (21人)
腹膜透析:5% (1人)
輸血:4% (0)
<考察>
上記は庄内のデータであるが、実践している患者数は、庄内地域で圧倒的(?)に多い。
緩和ケア普及のためのプロジェクトなどの活動によるものか?
いずれにしろ、高度な在宅医療には、病院や専門医療機関とのとの連携~バックアップ体制が
重要と考えられ、更なる医療連携が期待される。
7、1年間の往診患者数
<考察>
在宅医療の取組については、病院、在支診に関わらず温度差が大きい。
在宅医同士の話し合いの場や研修会など、温度差を短める努力が必要ではないか。
8、看取り実施状況
8-1 実施の有無
80%の医療機関は看取りに対応している(県全体)
8-2 看取った人数
1年間で、在宅で看取った人数(県全体):1615人
看取った人数毎の医療機関の%(県全体)
0人:21%
1-5人:53%
6-10人:11%
11-20人:5%
21-30人:4%
看取りゼロの割合
病院:8%
在宅支援診療所:12%
それ以外の診療所:27%
8-3 看取った場所
自宅:48%(46%)
老人ホーム:39%(46%)
集合住宅:4%(3%)
グループホーム:3%(3%)
()は全県での%
8-4 看取れなかった患者数と対応
平成28年1-12月で
看取れなかった人数:732 (県全体) *看取り患者の30%
その、96%は病院で看取り
8-5 自宅で看取れなかった理由
家族の希望:52%(57%)
本人の希望:15%(12%)
対応困難:17%
()は県全体
<考察>
看取りへの対応率は高く、対応困難以外は、自宅~施設での看取りが可能と思われる。
どこで亡くなりたいのか、医療者を含めた患者・家族との事前の話し合いとその記録が必要ではないか。
9 関係機関との連携状況
訪問看護ステーション:89%
リハ職:46%
緊急時の入院先:43%
薬局:35%
介護施設:37%
往診看取りを行る医師確保:28%
歯科診療所(口腔ケア):10%
<考察>
訪問看護師以外との連携は、まだ少ない、
今後、他職種との連携を深める活動が必要
10-1 在宅医療に対する関心の有無
関心ある
病院:85%
診療所:57%
在宅医療を行っていない医療機関で
関心ある:
病院:75%
診療所:35%
10-2 今後の在宅医療の取組予定
現在と同規模で継続 61(33%)
患者を増やす 11(6%)
患者を減らす 7(4%)
負担大で地域で対応が必要 4(2%)
在宅医療を実施していない医療機関で、
今後も取り組まない 67(37%)
機会があれば、取り組みたい 14(10%)
10-3 在宅医療に取り組まない理由
外来で手一杯:60%(52%)
必要性を感じない:9%(7%)
体力面の負担:7%(12%)
スタッフ不足:(10%)
知識・技術が足りない:(8%)
()全県での%
10-4 協力や参加が可能な在宅医療の取組
研修会への参加:77%
現場実習への協力:9%
研修会の講師などの協力:10%
<考察>
在宅医療に関心はあるが、まだ実施していない医療機関が少なからず存在し、また、
研修会などの参加も可能との回答が多い。
研修会や現場実習など、普及・啓発活動が必要ではないか。
11 診療所における診療科目別の在宅医療の実施状況(県全体)
在宅医療を実施している診療所
内科系:71%、非内科系:22%
在宅医療を実施していない診療所
内科系診療所:29%、
非内科系:79%
在宅医療を行っている非内科系診療科
皮膚科:41%、外科:33%、眼科:30%、整形外科:13%、精神科:3%
在宅医療への関心がある
内科系診療所:71%
非内科系診療所:38%
<考察>
内科系診療所で、今後も在宅医療に取り組まないと答えたのは24%
一方、8%は機会があれば、今後取り組むと回答している。
内科系診療所での在宅医療実施率の限界は、せいぜい75%程度であろう。
現在内科系診療所の在宅医療実施率は70%程度であり、その意味で、
これから新規に在宅医療に取り組む医療機関は多くはないだろうと推測される。
対策として、今後取り組みたいと考えている数%の医療機関への参入を促す取り組みと共に、
現在、在宅医療に取り組んでいる医療機関が、より負担なく、多くの在宅医療を行える
環境づくりが重要と考える。そのために、必要なのは、訪問看護師、ケアマネジャー、
薬剤師、歯科などとの多職種協働のしくみづくりであり、ITの活用も考慮すべきである。
とくに、訪問看護師は在宅医療の要であり、在宅医療を実施件数を増やすためには不可欠
な職種である。一方で、人材不足や運営面での困難さも課題となっていることから、
訪問看護ビジネスに参入できるインセンティブや、病院看護師が訪問看護へ無理なく移行できる
制度的な配慮も必要と考える。
一方で、在宅医療に特化した診療所を増やすことも、現実的な対策かも知れない。
-庄内地域でのデータをもとに考察ー
調査期間:平成29年7月3日~7月31日
調査対象:県内のすべての病院および診療所
調査対象:789
回答数:743(病院66、診療所677)回答率94.2%
1、訪問診療と往診の実態
訪問診療あるいは往診を実施している%
病院:37%、診療所:54%
<考察>
訪問診療や往診に馴染まない診療科を考慮すると、
54%は決して低い数字ではないのではないか(問11では内科系で71%が実施)。
一方で、自院通院中の患者が在宅医療に移行し、患者・患者家族が希望するのであれば、
訪問診療を行うことは、かかりつけ医としての責務であることの啓発活動は必要。
2、24時間365日での在宅医療の実施状況
病院:60%、在宅療養支援診療所:100%、その他の診療所:40%
<考察>
在支診の条件が、24時間365日対応なので、当然の結果か。
その他の診療所でも、40%が対応しているのはある意味評価できるのではないか。
(24時間、365日対応しなければならいとなれば、在宅医療から手を引く医療機関もでてくるのではないか。)
訪問看護師の活用、病院との連携、他の医療機関とのグループ診療などは、
今後とも積極的に進めていき、無理なく在宅医療ができる体制づくりが必要。
3、在宅医療の対象患者
以前から自院で対応していた患者:21%
他の医療機関から紹介された患者:29%
限定していない:46%
その他:4%
<考察>
在支診のほとんどは、自院以外の患者でも受け入れている。
在支診は、病院などからの在宅医療の紹介先として、機能しているのではないか。
4、1か月間の延べ訪問回数
病院:80%が月21回以上
在宅支援診療所:60%が月31回以上
<考察>
在支診でのばらつきが大きい、
訪問診療を増やす余地のある在支診があるのではないか。
一方で、在支診以外の診療所で、かなりの数の在宅医療を行っている施設もある。
在支診の要件の厳格化が必要?
5、訪問診療の実施状況
5-1 医療機関が予定する訪問診療対の応可能患者数と実際の患者数
51~100人の患者を診ている在支診、1-20名程度を診ている在宅支援診療所以外の診療所で、
まだ対応の余地がある。
<考察>
現在の患者数以上の対応不可と回答した医療機関においても、
訪問看護師や他医療機関との連携を探ることで、さらなる対応は可能ではないか。
5-2 1か月間の訪問診療の訪問先別患者数
総数
自宅:37%、集合住宅:12%、グループホーム:17%、老人ホーム:30%、
病院
自宅:56%、集合住宅:1%、グループホーム:10%、老人ホーム:31%、
在宅支援診療所
自宅:31%、集合住宅:19%、グループホーム:17%、老人ホーム:28%、
在宅支援診療所以外
自宅:41%、集合住宅:4%、グループホーム:19%、老人ホーム:34%、
<考察>
県の考察では、今後老人ホームは増えないとの予測であるが、老健、特養は増えなくとも、
有料老人ホームは増える可能性がある。
自宅を対象とした在宅医療は、介護負担、独居の増加、認知症の増加などの状況を鑑みると、
これ以上は無理ではないか。
今後は、集合住宅、有料老人ホーム、GH、小規模多機能などへの在宅医療のニーズが高まるのではないか。
6、在宅医療で対応可能な診療内容
留置カテーテル:62% (195人)
在宅酸素:60% (67人)
褥創管理:59% (159人)
PEG:58% (187人)
人口肛門管理:30% (14人)
中心静脈栄養:28% (24人)
人工呼吸器管理:25% (21人)
腹膜透析:5% (1人)
輸血:4% (0)
<考察>
上記は庄内のデータであるが、実践している患者数は、庄内地域で圧倒的(?)に多い。
緩和ケア普及のためのプロジェクトなどの活動によるものか?
いずれにしろ、高度な在宅医療には、病院や専門医療機関とのとの連携~バックアップ体制が
重要と考えられ、更なる医療連携が期待される。
7、1年間の往診患者数
<考察>
在宅医療の取組については、病院、在支診に関わらず温度差が大きい。
在宅医同士の話し合いの場や研修会など、温度差を短める努力が必要ではないか。
8、看取り実施状況
8-1 実施の有無
80%の医療機関は看取りに対応している(県全体)
8-2 看取った人数
1年間で、在宅で看取った人数(県全体):1615人
看取った人数毎の医療機関の%(県全体)
0人:21%
1-5人:53%
6-10人:11%
11-20人:5%
21-30人:4%
看取りゼロの割合
病院:8%
在宅支援診療所:12%
それ以外の診療所:27%
8-3 看取った場所
自宅:48%(46%)
老人ホーム:39%(46%)
集合住宅:4%(3%)
グループホーム:3%(3%)
()は全県での%
8-4 看取れなかった患者数と対応
平成28年1-12月で
看取れなかった人数:732 (県全体) *看取り患者の30%
その、96%は病院で看取り
8-5 自宅で看取れなかった理由
家族の希望:52%(57%)
本人の希望:15%(12%)
対応困難:17%
()は県全体
<考察>
看取りへの対応率は高く、対応困難以外は、自宅~施設での看取りが可能と思われる。
どこで亡くなりたいのか、医療者を含めた患者・家族との事前の話し合いとその記録が必要ではないか。
9 関係機関との連携状況
訪問看護ステーション:89%
リハ職:46%
緊急時の入院先:43%
薬局:35%
介護施設:37%
往診看取りを行る医師確保:28%
歯科診療所(口腔ケア):10%
<考察>
訪問看護師以外との連携は、まだ少ない、
今後、他職種との連携を深める活動が必要
10-1 在宅医療に対する関心の有無
関心ある
病院:85%
診療所:57%
在宅医療を行っていない医療機関で
関心ある:
病院:75%
診療所:35%
10-2 今後の在宅医療の取組予定
現在と同規模で継続 61(33%)
患者を増やす 11(6%)
患者を減らす 7(4%)
負担大で地域で対応が必要 4(2%)
在宅医療を実施していない医療機関で、
今後も取り組まない 67(37%)
機会があれば、取り組みたい 14(10%)
10-3 在宅医療に取り組まない理由
外来で手一杯:60%(52%)
必要性を感じない:9%(7%)
体力面の負担:7%(12%)
スタッフ不足:(10%)
知識・技術が足りない:(8%)
()全県での%
10-4 協力や参加が可能な在宅医療の取組
研修会への参加:77%
現場実習への協力:9%
研修会の講師などの協力:10%
<考察>
在宅医療に関心はあるが、まだ実施していない医療機関が少なからず存在し、また、
研修会などの参加も可能との回答が多い。
研修会や現場実習など、普及・啓発活動が必要ではないか。
11 診療所における診療科目別の在宅医療の実施状況(県全体)
在宅医療を実施している診療所
内科系:71%、非内科系:22%
在宅医療を実施していない診療所
内科系診療所:29%、
非内科系:79%
在宅医療を行っている非内科系診療科
皮膚科:41%、外科:33%、眼科:30%、整形外科:13%、精神科:3%
在宅医療への関心がある
内科系診療所:71%
非内科系診療所:38%
<考察>
内科系診療所で、今後も在宅医療に取り組まないと答えたのは24%
一方、8%は機会があれば、今後取り組むと回答している。
内科系診療所での在宅医療実施率の限界は、せいぜい75%程度であろう。
現在内科系診療所の在宅医療実施率は70%程度であり、その意味で、
これから新規に在宅医療に取り組む医療機関は多くはないだろうと推測される。
対策として、今後取り組みたいと考えている数%の医療機関への参入を促す取り組みと共に、
現在、在宅医療に取り組んでいる医療機関が、より負担なく、多くの在宅医療を行える
環境づくりが重要と考える。そのために、必要なのは、訪問看護師、ケアマネジャー、
薬剤師、歯科などとの多職種協働のしくみづくりであり、ITの活用も考慮すべきである。
とくに、訪問看護師は在宅医療の要であり、在宅医療を実施件数を増やすためには不可欠
な職種である。一方で、人材不足や運営面での困難さも課題となっていることから、
訪問看護ビジネスに参入できるインセンティブや、病院看護師が訪問看護へ無理なく移行できる
制度的な配慮も必要と考える。
一方で、在宅医療に特化した診療所を増やすことも、現実的な対策かも知れない。