日本医師会医療情報システム協議会の事例報告でNote4Uを紹介してきました。
演題:患者・家族参加型システム「Note4U」の運用と課題
抄録:
山形県鶴岡地区医師会では、15年以上にわたり地域電子カルテ「Net4U」の運用を継続し、とくに在宅医療の分野で多くの実績をあげてきた。一方で、在宅医療においては、家族支援という視点も重要なことから、医療・介護などのサービス提供側の連携のみならず、主体者である本人あるいは家族などのネットワークへの参加が望まれている。そこで、当地区では2013年に患者・家族支援ツールとして「Note4U」を開発した。「Note4U」は、「Net4U」と連動することで、「Net4U」の検査結果や処方内容など患者サイドを提供でき、また、患者サイドからはバイタルなどの見守り情報や医療側へ伝えたい情報を「連絡ノート」として伝えることを可能としている。とくに、医療サイドとの連絡ツールである「連絡ノート」は、患者・家族にとって、安心して在宅医療を継続できる信頼感にも繋がっており、最近では有用な事例を経験するようになった。「Note4U」の活用事例を報告するとともに、今後の課題についても触れたい。
山形県鶴岡地区医師会では、地域電子カルテ「Net4U」を運用し、今年で16年目を迎えます。
今回は、Net4Uのサブシステムである、患者・家族参加型システム「Note4Uの運用と課題」について報告させて頂きます。
まずは、簡単にNet4Uの歴史について述べます。
Net4Uは、2000年の経済産業省の事業おいて開発された地域電子カルテですが、
2012年に、ストローハット社の開発により、医療と介護を繋ぐヘルスケア・ソーシャル・ネットワークNet4Uとして
おもに在宅医療における医療・介護連携を目指したシステムとして全面改訂されました。
その後、ID-Linkへの対応、今日のテーマである患者・家族参加型システム「Note4U」、また地域連携パスへの連携機能などを順次追加し、現在に至っています。
現在、鶴岡以外では、富山県、宮崎県、新潟県、長野県など、全国の6地域、800程度の施設に導入されています。
なお、新潟市では、SWANネットと呼んでいるようです。
新Net4Uは、在宅医療における医療と介護の連携をおもなターゲットに開発されたSNS的なシステムですが、
電子カルテとしての要件を満たしており、在宅医療のみならず、病病、病診連携などさまざまな局面で活用できる仕様となっています。
因みに、わたくしの医院では、全患者を登録し、地域と繋がる、診療所用電子カルテとして活用しています。
さらに、Net4Uは、ID-Linkのような広域ネットワーク、地域連携パス、ORCA,訪問看護業務支援システム、本日のテーマであるNote4Uなどと柔軟にシステム連携を行っています。
鶴岡地区の参加施設数ですが、近年、介護系施設の参加が増えています。
一方で、診療所の参加施設が増えないというジレンマがあります。
2017年1月末現在での登録患者数は、5万人を超えました。
毎月、400人前後の登録があり、順調に運用されています。
このグラフは、2013年から2015年の3年間における、各職種のNet4Uへの書き込み数の年次推移を示したものです。
医師の書き込み数に著変はありませんが、看護師、リハスタッフ、ケアマネ、薬剤師の書き込みは年々増加傾向にあります。
職種毎のユーザー数の比率です。
ケアマネ34%、看護師25%、医師19%の順であり、ケアマネの参加率が高いことが分かります。
ケアマネと看護師で60%を占めます。
Net4Uは、当初、医師間の病診連携のツールとして始まったものですが、
今やケアマネ・看護師が主たるユーザになっており、
在宅医療における、医療・介護連携に、ニーズが高いことが示されていると思います。
さて、本日の本題である、患者・家族参加型システムNote4Uについて、解説します。
在宅医療においては、患者さんと接する時間が多い、家族への支援はとても重要になります。
そこで、患者・家族が、サービス提供側である医療や介護と繋がる仕組みとして、Note4Uが開発されました。
Net4Uは、医療・介護従事者のための患者情報共有ツール、という位置づけで、セキュアなネットワーク上で機能しています
一方、Note4Uは、一般的なインターネット回線を利用したPHRというべきシステムで、Net4Uとは別のネットワークで機能します。
このNet4UとNote4Uをデータ連携させることで、
患者・家族側は、Net4Uの検査結果、処方内容を閲覧でき、
見守り情報機能を使うことで、患者の状況を医療者側へ伝えることができます。
また、連絡ノートを利用することで、相互のコミュニケーションが可能となります。
Note4Uの画面です。
体重、血圧、心拍数、意識障害などの見守り情報を入力することで、患者の状態を医療側(Net4U)へ伝えることができます。
処方内容や検査データは、Net4Uから自動転記されます。
患者・家族と医療・介護側(Net4U)との相互のコミュニケーションには、連絡ノート機能を利用します。
すなわち、患者・家族が、連絡ノートに、医療側に伝えたいことなどを記載すると、その内容はNet4Uに表示されます。
Note4Uは、操作がより簡便なスマートフォンやタブレットの利用をおもに想定しており、写真の添付や音声入力にも対応しています。
それでは、Note4Uの活用事例を紹介したいと思います。
患者さんは、76歳男性。Stege4の前立腺がんで、多発性の骨転移があり、認知症にも罹患しています。
2013年に、急性期病院を退院し、以後、在宅療養中で、その時からNet4Uが使われています。
徐々に病状が悪化し、家族(妻、長女)への暴言など抑うつ傾向が著明となり、
家族の精神的ストレスも増大するなか、レスパイト入院しながら、在宅療養を継続しているという状況です。
そのなかで、2016年6月からNote4Uも導入されました。
Net4Uの画面です。
カレンダー画面のアップですが、2016年6月のNote4U利用開始以来、連絡、見守りなどNote4U側からの情報が急増していることが分かります。
共有ユーザ一覧のアップですが、この患者さんに関わっている病院、訪問看護ST、薬局、診療所、居宅介護支援事業所が表示されています。
患者メモに、あなたと12人が既読ですという記載があります。
既読機能は、記載した内容を、誰が読んだかが分かるようにした機能です。
ここの12人にカーソルを合わせると、既読のユーザーがリスト表示されます。
例えば、ここでは、在宅主治医の記載に対して、
診療所の看護師、訪問看護師、中核病院の連携室や看護師、居宅介護支援事業所のケアマネなどが閲覧したことが分かります。
緊急性の高い事例では、とても有用な機能です。
患者家族が、Note4Uの連絡ノートに書き込んだ内容がNet4Uに表示されています。
記載のなかで、「Note4Uの役割の大切さを実感しつつ、また勇気づけられていました。」
などと、Note4Uで医療側と繋がることで、治療に対する疑問に答えてもらえたり、
やさまざまな助言や情報を得ることで、「辛い」介護から救われていることが述べられています。
患者・家族に深く関わってきた訪問看護師がNote4Uについての感想を書いていましたので紹介します。
Note4Uの有用性については、まだまだ検証が必要と考えていますが、
本来あるべき患者・家族主体の医療に貢献できるのではとの感触を得ています。
今後とも、事例を蓄積し、報告していきたいと思っています。
ご清聴、ありがとうございました。
演題:患者・家族参加型システム「Note4U」の運用と課題
抄録:
山形県鶴岡地区医師会では、15年以上にわたり地域電子カルテ「Net4U」の運用を継続し、とくに在宅医療の分野で多くの実績をあげてきた。一方で、在宅医療においては、家族支援という視点も重要なことから、医療・介護などのサービス提供側の連携のみならず、主体者である本人あるいは家族などのネットワークへの参加が望まれている。そこで、当地区では2013年に患者・家族支援ツールとして「Note4U」を開発した。「Note4U」は、「Net4U」と連動することで、「Net4U」の検査結果や処方内容など患者サイドを提供でき、また、患者サイドからはバイタルなどの見守り情報や医療側へ伝えたい情報を「連絡ノート」として伝えることを可能としている。とくに、医療サイドとの連絡ツールである「連絡ノート」は、患者・家族にとって、安心して在宅医療を継続できる信頼感にも繋がっており、最近では有用な事例を経験するようになった。「Note4U」の活用事例を報告するとともに、今後の課題についても触れたい。
山形県鶴岡地区医師会では、地域電子カルテ「Net4U」を運用し、今年で16年目を迎えます。
今回は、Net4Uのサブシステムである、患者・家族参加型システム「Note4Uの運用と課題」について報告させて頂きます。
まずは、簡単にNet4Uの歴史について述べます。
Net4Uは、2000年の経済産業省の事業おいて開発された地域電子カルテですが、
2012年に、ストローハット社の開発により、医療と介護を繋ぐヘルスケア・ソーシャル・ネットワークNet4Uとして
おもに在宅医療における医療・介護連携を目指したシステムとして全面改訂されました。
その後、ID-Linkへの対応、今日のテーマである患者・家族参加型システム「Note4U」、また地域連携パスへの連携機能などを順次追加し、現在に至っています。
現在、鶴岡以外では、富山県、宮崎県、新潟県、長野県など、全国の6地域、800程度の施設に導入されています。
なお、新潟市では、SWANネットと呼んでいるようです。
新Net4Uは、在宅医療における医療と介護の連携をおもなターゲットに開発されたSNS的なシステムですが、
電子カルテとしての要件を満たしており、在宅医療のみならず、病病、病診連携などさまざまな局面で活用できる仕様となっています。
因みに、わたくしの医院では、全患者を登録し、地域と繋がる、診療所用電子カルテとして活用しています。
さらに、Net4Uは、ID-Linkのような広域ネットワーク、地域連携パス、ORCA,訪問看護業務支援システム、本日のテーマであるNote4Uなどと柔軟にシステム連携を行っています。
鶴岡地区の参加施設数ですが、近年、介護系施設の参加が増えています。
一方で、診療所の参加施設が増えないというジレンマがあります。
2017年1月末現在での登録患者数は、5万人を超えました。
毎月、400人前後の登録があり、順調に運用されています。
このグラフは、2013年から2015年の3年間における、各職種のNet4Uへの書き込み数の年次推移を示したものです。
医師の書き込み数に著変はありませんが、看護師、リハスタッフ、ケアマネ、薬剤師の書き込みは年々増加傾向にあります。
職種毎のユーザー数の比率です。
ケアマネ34%、看護師25%、医師19%の順であり、ケアマネの参加率が高いことが分かります。
ケアマネと看護師で60%を占めます。
Net4Uは、当初、医師間の病診連携のツールとして始まったものですが、
今やケアマネ・看護師が主たるユーザになっており、
在宅医療における、医療・介護連携に、ニーズが高いことが示されていると思います。
さて、本日の本題である、患者・家族参加型システムNote4Uについて、解説します。
在宅医療においては、患者さんと接する時間が多い、家族への支援はとても重要になります。
そこで、患者・家族が、サービス提供側である医療や介護と繋がる仕組みとして、Note4Uが開発されました。
Net4Uは、医療・介護従事者のための患者情報共有ツール、という位置づけで、セキュアなネットワーク上で機能しています
一方、Note4Uは、一般的なインターネット回線を利用したPHRというべきシステムで、Net4Uとは別のネットワークで機能します。
このNet4UとNote4Uをデータ連携させることで、
患者・家族側は、Net4Uの検査結果、処方内容を閲覧でき、
見守り情報機能を使うことで、患者の状況を医療者側へ伝えることができます。
また、連絡ノートを利用することで、相互のコミュニケーションが可能となります。
Note4Uの画面です。
体重、血圧、心拍数、意識障害などの見守り情報を入力することで、患者の状態を医療側(Net4U)へ伝えることができます。
処方内容や検査データは、Net4Uから自動転記されます。
患者・家族と医療・介護側(Net4U)との相互のコミュニケーションには、連絡ノート機能を利用します。
すなわち、患者・家族が、連絡ノートに、医療側に伝えたいことなどを記載すると、その内容はNet4Uに表示されます。
Note4Uは、操作がより簡便なスマートフォンやタブレットの利用をおもに想定しており、写真の添付や音声入力にも対応しています。
それでは、Note4Uの活用事例を紹介したいと思います。
患者さんは、76歳男性。Stege4の前立腺がんで、多発性の骨転移があり、認知症にも罹患しています。
2013年に、急性期病院を退院し、以後、在宅療養中で、その時からNet4Uが使われています。
徐々に病状が悪化し、家族(妻、長女)への暴言など抑うつ傾向が著明となり、
家族の精神的ストレスも増大するなか、レスパイト入院しながら、在宅療養を継続しているという状況です。
そのなかで、2016年6月からNote4Uも導入されました。
Net4Uの画面です。
カレンダー画面のアップですが、2016年6月のNote4U利用開始以来、連絡、見守りなどNote4U側からの情報が急増していることが分かります。
共有ユーザ一覧のアップですが、この患者さんに関わっている病院、訪問看護ST、薬局、診療所、居宅介護支援事業所が表示されています。
患者メモに、あなたと12人が既読ですという記載があります。
既読機能は、記載した内容を、誰が読んだかが分かるようにした機能です。
ここの12人にカーソルを合わせると、既読のユーザーがリスト表示されます。
例えば、ここでは、在宅主治医の記載に対して、
診療所の看護師、訪問看護師、中核病院の連携室や看護師、居宅介護支援事業所のケアマネなどが閲覧したことが分かります。
緊急性の高い事例では、とても有用な機能です。
患者家族が、Note4Uの連絡ノートに書き込んだ内容がNet4Uに表示されています。
記載のなかで、「Note4Uの役割の大切さを実感しつつ、また勇気づけられていました。」
などと、Note4Uで医療側と繋がることで、治療に対する疑問に答えてもらえたり、
やさまざまな助言や情報を得ることで、「辛い」介護から救われていることが述べられています。
患者・家族に深く関わってきた訪問看護師がNote4Uについての感想を書いていましたので紹介します。
Note4Uの有用性については、まだまだ検証が必要と考えていますが、
本来あるべき患者・家族主体の医療に貢献できるのではとの感触を得ています。
今後とも、事例を蓄積し、報告していきたいと思っています。
ご清聴、ありがとうございました。