東京の土人形 今戸焼? 今戸人形? いまどき人形 つれづれ

昔あった東京の人形を東京の土で、、、、

大晦日の水簸(すいひ)

2017-12-31 15:04:24 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 秋以来、忙しかったので水簸の作業から遠ざかっていました。それでもこれまでは、粘土不足もなく、寝かせてあった分で何とかなっていましたが、この先土がないと困るので、寒中ですが根性でやっています。

 お天道様がでているか否かで外気にさらされている水温の差がかなりありますね。昨日は思ったほどでもなかったですが、今日は厚手のゴム手袋超しにも冷たさが伝わってきて手が麻痺してくるような感覚。作業を終えて手を洗って後も指先のあちらこちらに霜焼けのようなむず痒さを感じます。しかしこれだけは蓄えておかなければ仕事にならないのでやらないわけにもいかず、、、。

 手前の沈殿用のバケツは一晩おけば、粘土は水位の半分くらいまで沈殿するので、上澄みを汲み上げてから沈殿分だけ、別のバケツに移して更に沈殿させ、隣の撹拌用のバケツから次のどろどろを篩にかけて満タンにさせていきます。

 明日の仕事はじめはまず水簸から、、。


危機一髪

2017-12-28 12:03:10 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 被官様の鉄砲狐を済ませて、年内最終の王子の「狐の提灯行列」向けの「装束稲荷」から授与される「招き狐」を型抜き乾燥させていたものを素焼きしようとしたところ、焼成窯の電源が不調で稼働しなくなっていました。

 昔の人形では(今戸人形でも)焼を省略して彩色したケースはありましたが、そういう場合は人形はムク(土びっしり)になっているのですが、焼くつもりで用意していた招き狐はガラ入りの中空なので焼かないととても脆いので無理です。

 電気窯を製造、納品した業者は調べてみると既に他社に統合されて今はなく、辛うじてその会社に問い合わせたところ、当時納品、設置を担当された方がいらしたのですが、現在の会社では陶芸窯の取り扱いがなくなっているとのことで、それでもその方が時間をみて動いてくださるとのことでお願いしましたが、1月中旬以降になりそうです。

 その間、焼成ができないのは納期を考えてもご迷惑をおかけするので、当座向けに小型の電気焼成窯を購入することにしました。それでも年内の納品が難しいとのことなので、大晦日の「装束稲荷様」には申し訳なく、先方に事情をお話したところです。

 同時に「装束稲荷」向いの「王子 ヤマワ」さんからも狐ものを頼まれていたので今までに素焼きして残っていたものをかき集めてお持ちしようとしているところです。画像がそれですが、「はは呑気だね」といいますか、久しぶり楽しみながら塗っています。どれも今まで手掛けたもので大きな変化はないのですが、手前から2列目の浅草型の「招き狐」を色変わりにして塗ってみました。どうでしょうか。「袖なし」が「くさのしる」(または鶯色)のものです。砂子(真鍮粉)を蒔く代わりに、宝珠模様を散らしてみました。今戸にこうした模様があったかというと、全く同じではありませんが、宝珠チラシの模様の人形は見たことがあります。それよりもどこの人形かわかりませんが、巨大な狐拳型の狐で宝珠ちらしの模様の入ったものを観た記憶があり、それを思い出して描いてみました。

 窯のことで崖っぷちですが、とりあえず代用の窯の注文は済ませたので、年内は無理でもいずれ納品されるので、それまでは彩色とか土いじり、あるいはぴいぴいの鞴作りだけでも作業は山のようにあり、それで時間をつないでいこうと思います。


髭を描き終わって、、、。

2017-12-24 14:15:04 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 例年、羽子板市向けの支度の追い込みをする前に稲荷の狐をお納めしてから、という順番で年内に仰せつかっていた数の約4分の3をお納めして、残り4分の1は羽子板市向けの納めが済んでから、とお伝えをし、さて干支や他の人形をぎりぎり仕上げなければ、、と思っていたところ、これでは足りない追加100組(200体)という仰せに、正直目の前が真っ暗になりましたが、それをやらない訳にもいかず、羽子板市向けに着手する前にとにかく型抜きを素焼きを済ませ、その裏で羽子板市の準備をすることにしました。その分羽子板市への出品するつもりの人形の完成が間に合わなくなり、残念で切ない思いをしました。
 まずは済んだので、再び狐の素焼きとやすりがけ、地塗りと彩色を進め、今やっと髭を描き終わりました。(髭は面描きと同様、墨で入れるので目と同時に入れてしまうのが能率的ではありますが、自分の場合髭だけは塗った狐の顔や雰囲気でペアを作ってから髭あり、髭なしのバランスを考えて描いています。)
 狭いスペースでの作業なのでここまで来るのも不効率なんですが、これからこれらの狐をペアで薄葉紙で包んでいきます。包み終わったら、急いでお納めしないと部屋の中の立ち居ができないので、早く済ませてしまいたいです。

国立劇場12月「梅の由兵衛」

2017-12-20 10:25:41 | 日々

 このところずーっと忙しくしていたので、自分にご褒美に歌舞伎に行ってきました。吉右衛門一座による「梅の由兵衛」と雀右衛門丈による「今様三番三」。「梅の由兵衛」は先代吉右衛門の当たり役だったとか名前は有名な狂言なのですが、めったに上演されないもので、自分のリアルの記憶でも自分が中3か高1の頃、つまり昭和50年代前半に国立劇場小劇場で故・9代目沢村宗十郎さん主演で上演があった以来ではないかと思います。小劇場は座席数が少ない分一番安い席でも中学生にとっては高額で、観ることができなかった思い出があります。それが今回吉右衛門丈中心に演じられるというのは興味深々でした。はじめて観る狂言ですが、江戸狂言といっても黙阿弥や南北の作とは異なりのんびりおおどかな雰囲気、それでいて流れや人情の機微に無理がなく、「生世話」ではなく「時代世話」、配役も適材適所でバランスのとれたうれしい内容でした。今回の上演は初代・吉右衛門当時の台本をもとに、改めて補綴された部分があるらしいのですが、ドケチで筋書きは買わなかったのでどこが挿入されたのかも知らず観ていたのですが、付け焼刃的な感じの場面というものは感じられませんでした。「宗十郎頭巾」姿の吉右衛門丈、姿の立派さは言うに及ばず、セリフの綾、人情あふれる侠客ですばらしく、敵役の歌六丈は立派すぎず安すぎずというたたずまいと演技がさすが。錦之助丈の金五郎、この手役はさすがこの役者さんの任にぴたりと嵌り、こういう系統の役では追随を許さない味ですね。「髪結新三」の忠七役、「法界坊」の手代役などもに期待したいです。菊之助丈のふた役もきれいでいてそれらしくいいですね。歌舞伎の演出に「見立て」というものがあり、先行作のさわりのパロディーとして「無限の鐘」(梅ヶ枝の手水鉢)を前髪の菊之助丈に演じさせるというのも楽しかったと思います。雀右衛門丈の「今様三番三」、先代も演していたした大時代な所作事ですが、先代のある意味タフさ、マッチョさを思い出されました。当然当代も先代譲りのタフさと可憐さと併せ持ってグラマラスな感じがしました。

 芝居へ行くときは大抵デパ地下でお弁当を買って持参します。「日本橋 弁松」の「蛸めし」の弁当が好きで多かったのですが、最近は「亀戸 升本」の「あさりめし」の弁当にハマっています。

 ここのお弁当はおかずが「これでもか」とばかりにたくさんあって食べでがあります。「亀戸大根のたまり漬け」と「亀辛麹」というつけダレがついています。「亀辛麹」のカップの下には別に「煎りなます」が隠れているんですよ。これは偶然ですが、今回の「梅の由兵衛」は隅田川東岸の本所、柳島辺りが舞台で、セリフの中にも「亀戸とか出ていたので図らずも、芝居で「眼福」お弁当で「口福」と揃って地域が重なっていたというのも愉快でした。

 珍しい芝居で見事なアンサンブル。流石吉右衛門一座です。現代の歌舞伎の最高峰でしょう。


鉄砲狐と招き狐

2017-12-18 03:57:48 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 羽子板市向けの準備が落ち着いたところで、次の狐類の支度に入っています。大晦日の王子 装束稲荷神社で授与される「招き狐」の型抜きとバリ取り、尻尾の貼り付けをしているところ。急ピッチで抜き出しています。

 年内に浅草 被官稲荷神社向けにお納めすべき鉄砲狐(神社では「お姿」と呼んでいます)は目標数は既に揃えて素焼きまで進んでいるのでこれからやすりがけをしてから地塗り→彩色と運んでいきます。年内といっても残り13日を数えるだけなので、のんびりしているとまずそうです。何とかセーフで間に合わさねければ、、、。


羽子板市 2017 初日風景

2017-12-17 21:28:25 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 本日羽子板市の初日。午後3時過ぎに吉徳さんのご出展ブースを覗きに出かけてきました。流石日曜日とあって、地下鉄も駅も、観音様までの道筋もものすごい人出でした。ぶつからないよう人をよけながら境内まですすんだところ、、。

 観音様に一番近い立地の吉徳さんの露店。にぎわっていました。そして気になる拙作の人形のその後の行方は、、、?

 3番目の画像左端のピンク色の毛氈の段が毎度拙作の人形を並べていただいているスペースなんですが「丸〆猫(小・臥)」4体と「馬」1体のみ。

他の人形はすべてお買い上げいただいたとの事。干支の犬も丸〆猫もその他の今戸の招き猫、その他少しいろいろお納めしたのですが、それらが全てお買い上げいただいた、というのはありがたいこと。作っている本人冥利に尽きます。それにしても観音様のお導き、吉徳さんのおかげ、そして昔の今戸人形に関心を寄せていただいているお客様のおかげです。

 体がいまいちへとへとなので吉徳の皆さんにお礼申し上げてから寄り道しないで帰途につきました。年内にお納めすべきものがまだあるので何とか恙なくお納めできるよう頑張ります。みなさまありがとうございました。


浅草 納めの観音 羽子板市 2017

2017-12-14 22:47:46 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 本日、浅草橋の「人形は顔が命」の「吉徳」さんへ羽子板市向けの人形を納めに出かけてきました。

その羽子板市は今年も例年どおり12月17日(日)・18日(月)・19日(日)の三日間 浅草寺観音様の境内で開催されます。吉徳さんも露店を出され、その中で拙作の土人形を並べてくださいます。

 観音様の境内は古くからご参詣をはじめ人の行き来のあるところで、庶民の文化の展開されてきたところ。その中で今戸焼の土人形(今戸人形)をはじめ「ひねり鳩」とか箱庭細工や張り子人形をはじめ様々な浅草由来の人形玩具が鬻がれてきた舞台でもあり、最古の招き猫発祥の発祥として嘉永5年(1852)の「丸〆猫」(まるしめのねこ)を境内で売る老婆の話や大流行の記録やその実物の存在、描かれた錦絵が示すとおり、本家本元の「招き猫発祥由縁の地」はここ観音様の境内です。

 また、「東京風俗誌」の中に描かれている観音様境内で今戸の人形を鬻いでいるおばさんの姿というものも伝わっています。観音様境内の重要文化財に指定されている堂宇のひとつ「六角堂」が昭和の終わりに位置を移動された折、お堂の地面から大量の裃雛が出土した、という話も聞いています。

 それと羽子板市以外でも歳の市では今戸焼の恵比寿大黒が鬻がれていたそうです。

 そういう歴史の中での観音様の境内という位置と歳の市との今戸焼の人形のつながりを踏まえて、吉徳さんの露店で昔の今戸人形の再現として拙作の人形を並べてくださるという訳でありがたい、かたじけないことです。

 今日、お納めの折に吉徳さんの方々と雑談していて、毎度のことなのですが、夢のような話ですが、せっかく丸〆猫の古型を作っているのだから、自分自身がお婆さんの姿(またはパロディーとしての広重の錦絵の西行法師の姿)に扮して露店で「丸〆猫屋さんごっこ」をすることができたらいいな、、、という話になりました。あくまで夢ですけれど、、。

 吉徳さんの帰り、毎度のことですが、雷門と観音通りの角の羽子板市の絵ビラを撮影してきました。

 毎年のことながら、9月から12月までの間は特に人形作りで忙しくしていますが、今年は特別忙しい感じで例えが適当かどうかわかりませんが、ハードルの数がとても多かったような気がします。その中でもこの「羽子板市」は自分にとっては「学芸会」「学習発表会」のように特に大切にしたい機会です。はじめに記しましたとおり、この場が歴史的にも今戸人形に由縁の深いところだからです。そういう意味では今回は当初予定して作って出そうと思っていたものが100パーセント納められなかったという残念さを感じています。具体的にいうと「招き猫発祥の地 浅草寺 観音様境内」つながりとして招き猫の数はまあまあたくさん作ったつもりですし、「来年の干支 戌(犬)」ものも3種類作ってお納めしてありますが、その他のもの(狐のいろいろ、今戸人形としてオーソドックスな古典ものなど)まで手が届かなかったという感じがします。「招き猫」と「洋犬」のぴいぴいは途中まで進めて作っていたのですが残念ながら間に合いませんでした。それでも何とか出来上がったものをお納めできたことにはほーっとしています。今晩は久しぶりに十五夜さんと一緒にたっぷり眠ってみようと思います。

 羽子板市になると毎度寒さが急に厳しくなる、というイメージのとおり、今年も寒くなりました。お近くの方、お時間ございましたら、羽子板市へお立ち寄りください。何時かわかりませんが、自分でも覗きに行ってみたいと思います。

 


日本民藝館展 2017

2017-12-07 23:35:53 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 本日、駒場の日本民藝館で今年度の公募である「日本民藝館展」の表彰式と講評会があり、出席してきました。

自分にとっては今回で3回目。べにや民藝店さんのお世話により13点の人形を出品したのですが、そのすべてが入選したということでうれしいです。

「3度目の正直」といいますから、はじめての出品の際の全部入選、昨年の出品作品に対して「日本民藝協会賞」を賜ったというわが身にとって嬉しすぎな2回のあとなので、今回こそは厳しい現実というものが巡ってくるのではないか、、、?と内心思っていたので「3度目の正直」がうれしいことになってくれて、ありがたや、かたじけなや、の気持ちでいっぱいです。

 館内は既に入選作品が展示されており、拙作の作品も素敵に展示していただいてうれしかったです。自分の作品に限り撮影OKということで手持ちのバカチョンで撮ってあるのですが、主催者からのお話で画像は展示が一般公開に供されて以降にしてください、とのことなので初日である12月10日(日)以降にこの記事に挿入させていただきます。

会場には琉球張り子の豊永盛人さんもいらっしゃっていて、お昼のお弁当をご一緒させていただきました。午後の各部門の講評会のあと乾杯とかあるのだと思って楽しみにしていたのですが、このところの夜なべが祟って調子がすぐれず、後ろ髪引かれる思いで途中で失礼して帰宅しました。

日曜日が初日です。お近くの方、お時間ありましたらよろしくお願いいたします。

12月10日 画像を追加します。

 

 今回は選に入れていただいた13点をケースの2段に分けて展示していただいています。

上段向かって左(手前)から 

「諫鼓鶏」(かんこどり)「鞠猫」「招き猫のぴいぴい」「娘河童」「羽織狐」「丸〆小判猫」「本丸〆猫」「洋犬のぴいぴい」「御幣猿」「赤犬」「鉄砲狐」「月見兎」

下段 

「犬」「丸〆猫」(昭和戦前風型・朱)

 会場が混みあっていたので、じっくり個別に接写するのを忘れてしまいました。


干支の戌(犬)づくり③ 「ひねりの犬」②

2017-12-02 12:23:57 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 毎年のことですが、一年中で一番あわただしい季節です。今回はそれに輪をかけてしんどいな、、、という実感です。当然、干支を中心に招き猫だの狐だのをまわして作業しているのですが、今年は早く犬や猫の納めを仕上げたいところなのですが、蟻地獄ならぬ狐地獄というべきか、いくらきばっても明かりがみえず、さらに深みにめり込んでいくような感覚です。とはいえ、先日組み立てていた「ひねりの犬」をやっと塗ってみました。鼻を描かなければ、口も墨の一本線なんです。お手本がこういうものなのでそれに従っているところですがどうでしょうか。首輪が黄朱色のほうが、お手本の配色で、実物は当時鉛丹で塗られたものが、経年や空気中のガスに反応して茶色っぽくなったという状態です。胡粉の白を混ぜた藍色のほうは試しに塗りました。他に白緑とか紫土色などで塗っても悪くないのでは、、とも思います。

 今、他の犬たちや猫ものの地塗りを進めているところですが、何とか際に間に合わせたいと焦っています。