東京の土人形 今戸焼? 今戸人形? いまどき人形 つれづれ

昔あった東京の人形を東京の土で、、、、

作品展前日

2019-04-27 01:52:09 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 長いことご無沙汰しておりました。日々迫ってくる作品展に並べるべき拙作の人形を年明けくらいから少しずつ型抜きし、素焼きして貯めてしましたが、2月中は亡父の三回忌法要の準備、3月は法要に参加いただいた方々へのお礼、そして確定申告などなどのハードルを乗り越えて、いざこれから、とうところで急に親の介護の必要が降ってきて、正直目の前が真っ暗になりました。それでも少しずつでも人形を塗り貯め、今日に至った次第です。焼貯めた全てをこなすのは時間的に無理ということになってしまったのが残念ですが、べにや民藝店さんのご助力で本日会場に足を入れてみて、案外と空虚な(数が少なくて)という感じでもないことで安堵しました。(欲を言えば初志貫徹で焼貯めた全てを並べることができなくなったという原因を考えると無念ではありましたが、、、)

 さて、明日10時開店を前に、今回出品の人形をいくつか(新登場?)をご紹介させていただきます。

 最初の画像、「みみずく」。実はこれは嘉永安政風型の丸〆猫とほぼ同じ時期から取り組んでいたものなのですが、何度もモデリングを直してみたり自信がないので久しく外に出すことができなかった人形です。「みみずく」といえば、錦絵に描かれている張り子人形をおぼしきものや、伝世している浅草田原町の練り人形と言われているものが知られていますが、都内の近世遺跡から、江戸の土で作られた色のとれてしまった出土遺物が何点かあります。画像の「みみずく」は新宿区内の近世遺跡から出土のものをお手本にモデリングしました。胸からお腹にかけてたてに谷間が走っています。江戸の土人形として作られたみみずくの彩色については確固とした配色の資料がないので、いろいろ折衷して塗ってみました。胸からお腹にかけて「壽」の文字や宝珠を入れるという手もありますが、錦絵に描かれている黄色のストライプの上に毛並みを描くというパターンを取り入れてみました。とりあえず初日に向けて画像の分だけ色を塗って搬入しましたが、既に素焼きや地塗りを済ませたみみずくがまだありますから、様子を見ながら会期中に追加できれば、と思います。

 2枚目の画像「叶福助」(かのうふくすけ)、これは大分昔に起こした型なのですが割型を整理していて久しぶりにみつけたので、再度取り組んでみました。お手本は我が家にある江戸出来の人形で両耳の上に孔を空け、棕櫚縄(しゅろなわ)を解いた繊維を束ねて植え込みました。伏見系の土人形産地によくみられる構図の人形ですが今戸版だとこういう感じの配色があります。大抵扇に「叶」の文字を入れることが多いですが、この人形では肩衣に大きく「叶」を書き込んでいます。その代わりに扇は地に植物の煮出しとして「きはだ」(黄柏)を煮出した液を重ね塗りして透明感のある黄色にした上に燻した「まがい砂子」(真鍮粉)を梨地のように蒔いてみました。「叶福助の下の棚にみえる「熊金」(熊乗り金太郎)も久しぶりに作ってみました。もうすぐ端午の節句なので、、。べにやさんに並べるのははじめてなんだそうです。最近作っていませんでした。

 3枚目の画像は「鳩笛」。実をいうとこれらの小さな鳩笛の割型は施釉の鳩笛のために起こしたものなのですが、楽焼風、「舐め人形」風の施釉についてはまだ実験中なので、江戸から続いた最後の今戸人形師であった尾張屋 金澤春吉翁のお作りになったもっと大型の鳩笛に施される配色を写してみました。胡粉で下地を塗らず、素焼きの地色を残しているのが特徴で、墨田川や荒川流域の工事現場からもらってきて使っている「東京の土」の焼き色をみていただきたいと思います。

 このほかにも今回「新登場」のつもりで作りかけている「たけす(竹に雀)の笛」(福良雀の笛)もあり、初日には残念ながら間に合いませんが、会期中には会場へ持ち込みたいと思います。

 そのほかにも「新登場」ではないけれど久しぶりに作りかけている「大黒天ねずみ」も会期中に間に合えば持っていきたいですし、提灯狐もまだ塗りかけています。よろしければお店の方、または会場に詰めている私にお声かけください。

 会期内での在廊時間については、突発的なことがない限り、月・水・金は午後3時くらいまで、火・木・土・日は午後2時くらいから4時か五時くらいまで(実際そうできない日があったら申し訳ありませんが)

いるように考えていますのでお問い合わせがあればお声かけください。なお、初日の明日は開店時間から午後2時か3時くらいまで、そのあと6時くらいからギャラリートーク(広島民藝協会の千葉孝嗣さんとの)までおります。あさっても夕方、東京民藝協会例会は店内であり、広島民藝協会の千葉孝嗣さんによる「安芸の宮島の鹿猿」についてのお話を聴講しようと思っております。

 長いゴールデンウィークで遠くへお出かけの方が少なくないかと思いますが、東京にいらっしゃるみなさま、お時間あればお立ち寄りいただき、ご高覧いただければ幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

追記:在廊の時間についての変更があればべにやさんへお伝えしますので、お手数ですがべにやさんまでご確認ください。

 


お知らせ 「吉田義和 今戸人形作品展」(べにや民藝店)

2019-04-08 18:41:38 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 このたび駒場東大前の「べにや民藝店」さんで作品展をさせていただくことになりました。会期は来る4月27日(土)~5月6日(月・祝)。会期中無休。べにやさんの営業時間は11:00~19:00。但し初日4月27日(土)は店内で広島県民藝協会会員の千葉孝嗣さんと私とでギャラリートーク19:00より行うということになっております。また翌4月28日(日)の夕方(正確な時刻は確認の上ここに記します。)東京民藝協会の例会として同じ「べにや民藝店」さん内で上記・千葉他孝嗣さんによる「宮島の鹿猿の今昔」についてのお話があるそうです。(正確なタイトルは確認の上、ここに訂正します。)

 べにや民藝店さんでは青山にあった店舗内で7月だったかはじめて作品展をさせていただきました。それが4年前だったのですね。当時、初日の夕方、店内でお話会ということで昔の今戸焼本流の雑器とか昔の今戸人形の画像を準備して映写しながらお話する予定だったのですが、本番で機械が上手く作動しなくなって、ひとり夢中になって喋り続けていたのを思い出します。そしてその翌日、病院で即入院と宣告されて会期内は全く会場にいることができなかった思い出があります。

 本来ならば、その後4年間の研鑽の成果をご覧いただく、ということが本来の意義なんでしょうが、あわただしい毎日の中で、自分の中に進化なり進歩したものがあるのかどうかわかりません。単純に干支ものを含め、取り組んでいる人形の種類は増えていることは確かなのですが、よいとか悪いとか抜きに、とりあえず最近新登場という「みみずく」も何とか混ぜて並べることができるよう、今ふんばっているところです。また、今回はギャラリートークということで千葉さんに色々助けていただいての流れなので、4年前のようにひとり混乱した世迷言のようにはならないだろうと「大船に乗った」気持ちでいます。

 皆様いろいろご予定がおありかと思いますが、もしお時間ございましたら、お寄りいただけますと幸いです。

 初日は開店時間のあたりと上記のとおり夕方ギャラリートークということで途中一度家へ戻って出直すという感じの予定です。その他の日については基本的に午後2時くらい~2時間3時間詰めているようにと思っていますが、体の調子や家庭の事情等によりやむなく、、、、ということもあるかもしれませんので、べにやさんにお問い合わせください。

よろしくお願いいたします。

どうぞよろしくお願いいたします。


叶福助とみみずく

2019-04-06 01:37:15 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 隣の町内に作業場として借りているアパートの作り付けの下駄箱は余り使っていない割型やまだ決断できないやりかけの型などが入っていて、整理していたら久しぶりに出会ったという感じだったのがこれら「叶福助」(かのうふくすけ)と「みみずく」でした。「叶福助」は20年前くらいに作った割型で当時10個くらい抜き出して作って以来しまったままだったもの。これは、我が家にある江戸時代と思われる古い今戸の「叶福助」があり(以前このブログで採り上げました)それを手本に型を起こしたもの。今更説明するまでもなく、京都の伏見人形の型の人形が全国各地に伝播してそれぞれの土地で模倣して作られた代表的な型のひとつで、どこの産地でもこの構図の福助は伝わっていたのではないでしょうか。今戸で作られた「叶福助」も大小かなりあり、別の「福助とお福」の対となるずんぐりした型とは別に都内の近世遺跡からも出土していますし、「大丸百貨店」の創業の物語とも絡んで人気があったのでしょう。久しく作っていないのでちょっと抜き出してみています。

 

 同じ下駄箱にはこれもやりかけとして型にして保存しておいた「みみずく」の割型がありそれを利用して今回手を入れて初めて型抜きして作ってみようと思います。「みみずく」の人形や笛仕立てにしたものはいくつかの産地に散見するかと思いますが、江戸や浅草で「疱瘡除け」の赤物玩具として練り人形や張り子で作られた伝世品の人形もあり、錦絵や「疱瘡除け」の赤絵に描かれた作品も結構あります。わが家にも練り物製のみみずくや戦前の張り子製の起き上がりみみずくがあります。しかし(江戸東京ローカルの)土人形のみみずくの色の残っている古いものは観たことはありません。

 現在作っている「丸〆猫」(嘉永安政風型)のお手本となった新宿「水野原遺跡」出土の丸〆猫を遺跡報告書の巻末の出土物をどっさりひと山に撮影されている画像の一部に見かけて、報告書の内容にはそれについての遺物としての記載が一切なく、気になって閲覧申請をして実物を観てはじめて背中の「丸〆」の陽刻を確認できた頃(遺跡のご担当の方々には興味のないことなのは仕方ありませんが、実物に接して感激して、これはこういうものです、とご説明しても立ち合いの学芸の人には響くものなない様子でしたが、その直後、NHK「美の壺」招き猫のディレクターの人が我が家を訪ねてきた際、この話をしたら、すぐに新宿区の歴史博物館に撮影申請して番組で紹介されたといういわくがありますが、それ以降急に出世して廃校の地下室のパン箱のひとつにまとめて収納されていたものが、博物館の重要資料庫に納まったというお話)、、、、これと同じ時期に閲覧申請して出会ったのがこの「みみずく」のお手本です。バランス的に難しくて、ああだこうだとモデリングしていたのですが、そのやりかけを保存していた割型から今回抜き出して、もう一度手直しした抜き出したのが画像のものです。

 配色がわかりませんが、赤物であったであろうと考えています。錦絵や赤絵に描かれている「みみずく」は耳の形状から張り子か練り人形のようで、描かれたものに「これは土だ」と思われるものは記憶にありません。また創業300余年の浅草橋「顔がいのちの 人形の吉徳さん」に伝わっている 天保3年の「玩具聚図」という人形玩具の配色手本帖にはみみずくが描かれていますが、形といい文様といい、浅草の練り人形の古い伝世界品と瓜ふたつです。

 これから乾燥させて素焼きして塗っていきますが錦絵や伝世品練り人形なども参考にしてやってみたいと思います。

9年前にアップした「叶福助」の記事→


室内干し・天日干し

2019-04-03 13:18:48 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 4月に入りました。でも夜中はものすごく寒くて風邪をひいてしまいました。

型抜き作業は晩から明け方にかけてやっているものなので、パンヤ入りのベストを着て、両腕は汚れてもよいようにして、足元から冷えるので靴下の上に厚手のルームソックス?やらを履いていますが、狭くて怖いのでストーブは使いません。

 型抜きしてバリ取りや鞣し終わったものは、とりあえず板の上に並べて窯の上で室温で乾燥させ、いくらか表面は白んでいるものは、暖房のある部屋の高いところへ移動させて乾燥を続けています。「火入れ」など大きなものは必然的に肉厚なので乾かすのにも時間がかかります。

 室内で大方乾いてきているものは物干し台へ移して雨の心配のない夜中に夜風にさらして乾かし、天日に晒しても大丈夫そうなものは日のよく当たるところで乾燥させます。天気予報にびくびくしています。

 まだまだ抜き出すべきものがたくさんありますが、乾燥させて素焼きできるものは同時進行で窯入れしていきます。

 作品展はもう今月の下旬まで迫っています。こういう機会をいただくからこそ、新登場のものを発表したいところですが、今回はこれまでいろいろな作業があったり、家の事情で人形作りの集中し難い状況もあって冷や汗ものですが、とりあえず2点、間に合うよう祈りながら型起こしをしているところです。どうなることになりますやら、、、、。南無三。

 整理していたら「鬼平」とか「馬乗り小姓」の素焼きがみつかったのはラッキーです。