東京の土人形 今戸焼? 今戸人形? いまどき人形 つれづれ

昔あった東京の人形を東京の土で、、、、

地塗り

2019-11-25 12:10:50 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 退院後久しぶりの猫もの等の地塗りをしています。入院のため「みそろぎ展」向けに準備していた猫ものが時間足らずで搬入することができなかった分を含めてこれからの年中行事や店やさん、個人でお待たせしている方々、順次できたらお納めできるよう頑張りたいです。(数年来お待たせしている皆様には本当にご迷惑おかけしてすみません。忘れた、ということではありません。)

 やすりがけと地塗りは自分にとっては全工程の中でいちばんしんどい工程です。なぜかというと、サンドペーパーで擦るとき指先を使うとか圧をかける作業なので指先が痛くなること。地塗りでは胡粉と膠とを乳鉢でゴリゴリやって、平筆の太目のもので素焼きの表面にむらがないよう塗りますが、結構面倒です。

 いちどに全面塗りたいところですが、置くのに困るのと手でつかむ位置を確保しなければならないので、まずが底、次に頭部から全面を塗って置き、しばらくしてから背面を塗る、というやり方をしています。また素焼きの表面にキズや余計な凹凸があれば、「薄美濃紙」をちぎって貼りながら上から胡粉を塗ります。

やっと終わったと思っても乾いたところで気になるムラがあれば、さらに上塗りします。

 

 人形によっては胡粉の上にキラ(雲母粉)を塗ってパールのような地を作ります。

季節をいうなら、湿気や気圧、気温の高い夏場よりこれからが膠が使いやすくなると思います。


国立劇場11月歌舞伎公演

2019-11-21 21:04:49 | 日々

 9月の歌舞伎座の秀山祭を見たいと思いつつ結局行けず、先日の入院中に偶然知ったこの公演、退院したらこれ観ずして後々の後悔とばかり今日出かけてきました。この演目「日向島」(今回の演題では嶋になってますね。)滅多に上演されることなく、昭和の戦後は現・吉右衛門丈の父上・初代 松本白鷗(8代目幸四郎)さんが昭和30年代に文楽座の綱大夫さん、弥七さんと組んで上演したというのが伝説のような話。その後昭和40年代にここ国立劇場で演じられた。そして現・吉右衛門丈が一度演じられたという話は聞いていますが、その時は観ていないので、今回はじめて観ました。能で「稀曲」という言葉があるように、この演目に関しては、戦後でも4回目くらいの上演という稀なもので、役者さんと義太夫節の技量がそろわなければできないもののようです。名前だけ歌舞伎雑誌や案内書の中で目にしたことはあっても観るのがはじめてです。昭和30年代の上演の際、文楽座の大夫さんが歌舞伎役者の舞台に出演するということがタブーだったと聞いています。今回の義太夫は歌舞伎の竹本の太夫さん(文楽座は大夫、歌舞伎は太夫)葵太夫さんがつとめていましたが、熱演されていました。日向島の場面、盲目になった景清の心の葛藤と絶望、実の娘との出会いによって源氏への恨み、平家への忠節を捨て、晴れ晴れとした船出までの流れが義太夫と役者さんの力の拮抗で進んでいくという感じ、いわゆるチョボという感じではないですねもっと圧の強い感じ。自分もそうだったのですが、目元に手がいってしまうお客さん少なくありませんでした。

 今日は奮発してすごくいい席。

正午開演なのでデパ地下で日本橋弁松か亀戸升本のお弁当を調達して行くつもりだったのが、時間の余裕がないので新宿駅構内の駅弁屋さんで買った弁当。

 普段の食事よりカロリーがありそうな感じですが、今日くらいはいいか?と、、、。

文楽での日向島の上演はあっても観たことがなく、歌舞伎ではじめて観れた、それも吉右衛門丈がいればこそ。歌舞伎座でも国立劇場でも吉右衛門丈のユニットによる上演は素晴らしいです。ここ数年の国立でも上演演目どれもよかった。

 本当は予習して舞台を観るのがいいのですが、、。岩波文庫の「素人浄瑠璃講釈」に「日向島」載っていたような気がするのですがどうだったか、買ったものが家のどこかにあるのに行方不明です。まあこの本「素人」と名がついているけれど難しい内容だという印象ですが、、。

 今日は行ってよかった。

 


道ばたの種々

2019-11-20 14:24:46 | 日々

 寒くなりました。早速風邪をひいてしまい、喉や鼻をやられています。

 駒場のべにや民藝店への道すがら足もとにあれ?という草や花が目に入りました。

 ちごゆりはこの時期の花だったかな?

 花も実もついていませんが、へびいちご。

 これはダリアの仲間ですか…?

 これタラの木だと思うんですが…。春先の新芽通るたびに気になっていました。こういう実をつけるんですね。はぜの木にも似ているような…。

 日頃どたばたしていて、こうして季節の種々を眺めることが久しくないような気がしました。


無事並べました。

2019-11-17 17:13:00 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 何とか会場へ並べてきました、入院さえなければ、いつものように乾物屋の店先みたいにどっさりてんこ盛りにかざりたかったところですが…。

 ありがたいことに、並べているところから選んで持って帰ってくださるお客様もおいででした。「みそろぎ展」は火曜日まで。どうぞよろしくお願いいたします。

 


リアルタイムでのおしらせ

2019-11-17 15:00:12 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 先ほど完成させたものを包み、荷造りもすませましたので、これから会場へはこびます。只今途中で遅い昼食を摂っています。済みましたら電車に乗って向かいます、

 画像の種類です。ちょっと大袈裟かもしれませんが、これまでお問い合わせいただいたみなさまへお知らせいたします。


干支のねずみ作り ② 「どろめんのねずみ」

2019-11-17 11:43:37 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 これらの「どろめん」ですが手元にある古いお手本を見ながらモデリングしたものです。目の描きかたがこんな「ごまの粒」みたいな脱力したみたいな表情と言ったらよいか、何となく「カバさん」みたいな感じですね。ひとつだけ「蛇足」かどうか、、、お手本だと腰から後ろの朱色に胡粉を混ぜたような桃色でいびつに塗ってあるだけで尻尾には説明的な彩色はされていないのですが、時代を経たお手本そのものだと存在感がありますが、そのまま倣ったところすごく不安定な感じがするので尻尾にも色を置いてみた感じです。こんなものもあったんだ、、、ていうことで。


お待たせしています…。

2019-11-17 09:58:45 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 「みそろぎ人形展」会場の方よりご連絡いただきました。開場初日からたくさんのお客様からのお問い合わせがあり、ネット上の画像で紹介されている「白ねずみ」はないのか、いつ入荷するのか?等々。お騒がせしまして申しわけありません。「退院してからやりかけていたもののいくつかをできるだけ仕上げで会期中に会場へ運ばせていただきたい」と思って動いているところで、進行状況は画像のとおりです。「白ねずみ」の尻尾は同時進行で作業しているところで、本体に取り付けおわって完成。そのあとつつんで、荷造り完了してはじめて搬入準備完了という見通しです。

 準備完了して、これから会場へ向かいます、というタイミングでこの場でお知らせしてから動きます。お問い合わせありがとうございます。


大急ぎ

2019-11-16 00:42:22 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 昨日退院して帰宅。入院前に抜き出しておいた「どろめん」が乾いていたので早速窯入れ、素焼きしていました。先ほど炉内が100℃以下に自然に冷めたので取り出して地塗りしているところ。「白ねずみ」は地塗りの上に「きら」(雲母粉)を重ねてパール地にし、朱を刷り込んだ上に赤目と鼻孔と口、耳を入れ、墨で瞳を入れるところまで進んだ。

 さあこれから仕損じなく脱落なく会期内に会場へ持ち込むことができるかどうか…。

 どうか神様体調崩れず作業がはかどりますように、、、。


みそろぎ人形展 2019 に向けて…?

2019-11-11 12:02:48 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 先日、お知らせとしてアップしましたが、その後急に入院することとなり、それまで準備してきたものが一時的にストップしていますが、それ以前に完成していた鳩笛の大小は会場へお渡ししてありますので、予定どおり会場にならべていただくことになっています。また近々に退院の予定で、帰宅後にやりかけていた人形のいくつかは完成させた上、会期内に間に合えば、会場へ運ばせてもらいたいと考えています。会期中の鳩笛以外の作品の追加についてはまだ「絵に描いた餅」状態でしかありませんが、動きがあれば、この場で逐一お知らせしますのでどうかよろしくお願いいたします。

 鳩笛の大小は初日からならぶ予定です。

 干支の「白ねずみ」は途中までできているので退院ご最優先に取り組んで、動き次第この場でお知らせします。

 どうぞよろしくおねがいいたします。  

※追伸 11月1日より現在まで入院していますので「いまどき人形」HPトップページからのメールはこの間開くことができずにおります。すでにメールをくださった方、退院後開封の上連絡させていただきますので予めご了承ください。


鳩笛

2019-11-06 11:49:15 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 今度の入院前にぎりぎり仕上がっていた大きいほうの鳩笛。新登場で初めてひとさまにお見せします。

形や配色は生粋の今戸人形師最後の人であった尾張屋・金澤春吉翁(明治元年〜昭和19年)のお作りになられたものを手本にモデリングしました。

この春、目黒区駒場の「べにや民藝店」さんでの作品展では小さな本来施釉仕上げ向けに用意していた型に尾張屋さん風の配色で塗ったものをならべさせていただきました。(下の画像です)

 これら小さい鳩笛は頭、背中、尾の中心を縦に割り目が走るようになっているので型抜きしやすく、バリ取りのついでに両足の谷間をくり抜くやり方ですが、今回の大きな鳩笛は底にモミジのような形の両足の陽刻があり、縦割りでは引っかかって抜けないので、尾張屋さんはいったいどのように割り目をつけていたのか長年考えてきたのですが、難しそうですが、今回試してみました。

 割り目はクチバシから目の下辺りまで進んで首を下に下りて肩から翼の稜線に沿って尾につながるように走らせます。この場合合わせ目が肩から翼にかけての羽の形の彫りに被ってバリによって彫が潰れてしまうのですが、尾張屋さんのお手本を見ると彫が崩れているような箇所が見受けられます。

 

 配色については尾張屋さんのを手本にさせてもらいましたが、「人形は顔が命」の浅草橋の吉徳さんに伝わっている天保3年(1832)に描かれた、人形、玩具の配色手本である「玩具聚図」に描かれ、指定されている鳩笛の配色に酷似しているのです。生前の春吉翁は手本を見て鳩笛に彩色した、というより、若い頃からの修行のなかでごく自然に憶えて身についた江戸時代から続いた今戸人形の骨法のひとつだったと考えるのが自然だと思います。

 今回の彩色では尾張屋さんのお手本の配色に倣ってみましたが、改めて天保3年の「玩具聚図」に指定されている配色でも塗ってみて比べてみたいと思います。

 大きい鳩笛と小さい鳩笛。笛として吹き口、鳴り口の細工の原理は変わらないかとは思いますが、大きさで音色がだいぶ違ってくるものだと実際作ってみて実感しています。小さければ「ピーツ」っと高い音色。大きいと「ボーツ」という感じの鈍い音色になるんですね。土鈴の音色の加減も奥深いと思いますが、笛の音色も微妙なものだと思います。

 

 画像大小のの鳩笛は11月13日(水)からの丸の内丸善本店4Fギャラリーで開催される「みそろぎ人形展」でならべていただく予定になっています。お近くお出かけの際はお寄りいただけますと幸いです。


干支のねずみづくり ① 「白ねずみ」

2019-11-02 12:18:57 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 来年の干支はねすみ。例年ならば既にご紹介しているところですが今からになってしまいました。まずは新登場の「白ねずみ」から。

 この形の素焼きのねずみ(ただし本体のみ)は都内の複数の近世遺跡から出土していて割と親しまれていたアイテムだったのでは…と想像しています。ほぼ同じ大きさで部分の異なる2つのタイプがあり、ひとつは画像のように耳の彫りがあり、もうひとつのには別に作った耳を挿し込むためような孔が開いています。孔のタイプはうさぎ?という可能性もあるような気がするので前者の耳の彫りのあるタイプをお手本にしてモデリングしてみました。 

 顔体の左右の中心に型の割り目が走っていてお尻のところ後から見て割り目の向って右横に孔があけられているのです。(異なる遺跡から出た同じモデリングのねずみに共通すること)

 この孔、乾燥を促すための空気孔であれば、底にあけるとか彩色の時に串を挿し込んで串を持って作業をして、そのまま藁づとに挿して乾燥させる、という目的が考えられます。また笛として音色を出すための孔のあけ方ともあけ方が違います。位置的に尻尾が植えられていた、と考えるのが一番自然だと思いました。

 尻尾はどんな素材でどんな様子だったのか、遺跡出土品だと残っておらず、伝世品を見たこともないので、人形の製品としては土人形とは別格の高級品ですが「毛植え人形」のねずみの尻尾だとどうなのか、「お人形は顔が命」の浅草橋の「吉徳」さんで学芸員をされていた林直輝さんにお訊ねしたところ針金に絹糸を巻きつけて肉づけするということをご教示いただきました。

 土人形の尻尾の素材としては絹糸では高価過ぎるのでせいぜい古紙に着色したものを細く切って針金に巻き付きることで肉づけすることにして、障子紙に植物の煮出し汁(蘇芳ときはだ)を乾かし乾かし重ねて、その上に染料を重ねて色味を調節して使ってみました。

 ねずみはキラ(雲母粉)地にすることで古風さを意識し背中辺りに吉祥文的なものを、と考え、安易かもしれませんが宝珠を描いてみました。サンプルとして画像の4匹を完成させ、残りもこれから…というところで今年3度目の入院となってしまいましたが、退院できた後仕上げて出したいと思います。すでにひとまわり前に出している「大黒天ねずみ」や「面持ちねずみ」も用意してありますし、これから新登場のつもりで取り組み中のねずみもいるので追ってご紹介できればと思います。