8. リン(ミネラル)の大循環
リンは比重が重いので、陸上であれば河底、沼底に海であれば、深海の方にたまりやすい。従って、リンは山から川を経て海へ、海から深海へと重力により、低い方へ移動する。豊富なミネラル(リンを含む)は、深海水が海洋大循環の湧昇流にのって表層域に移動する。時には、海底火山の爆発によって突発的に海中、表層域に運ばれる。
海洋大循環によって、表層域に湧昇したミネラルを含んだ海水と太陽光によって植物プランクトンが大発生する。植物プランクトンは、このような海域では、数日で何倍かに増加する。このような所は、大漁場やサンゴ礁などであり、一般にイワシやニシンの大群を発生させる。離島のサンゴ礁に海鳥がこれらの魚を食べての糞が、数万年に渡って堆積して、化石化したものはグアノと呼ばれ、リン肥料として利用してきた。
イカなどの深海に住む魚類も、産卵のために表層域に上昇し、鳥や大型の魚類の食物連鎖により表層域に運ばれる。サケ、マスは、海を回遊して、産卵のために、川を遡上し上流で、産卵して後、自らの命を森に還す。アユやイワナ、カニさえも河口から上流部に遡上することによって、内陸深く食物連鎖により、ミネラルを運び上げる。
気仙沼の牡蠣養殖家の畠山重篤によると、ウナギは、マリアナ諸島沖で稚魚となって、黒潮に乗って日本沿岸まで旅をし、さらに川を遡って日本の田や川で育って、産卵のためにマリアナ諸島沖に帰ってゆく。ウナギは、森と川と海を繋ぐ指標生物である。「海は森の恋人」と言っているが、森は海と川によって、森から海に水ばかりでなく木葉の養分や稚魚が川を降り、魚や鳥は川を遡り相互に連環している。室根山の森、大川が実り豊かな時、養殖の牡蠣も大きく美味しくなる。
従って、リンは深海から表層域に、表層域から河口域へ、河口域から中流上流域へ、上流域から森へ、主として魚と鳥の連繋プレイによって、リン(ミネラル)は、結果的に、再び深海部から森へエントロピーを逆走して、森に戻った。これらがこのリンの大循環のエントロピー逆走エンジンである。
森の樹木は、花や実をつけるためにリン(ミネラル)を地中から吸い上げ、花を咲かせ実をつける、その花蜜や花粉や実は、鳥や昆虫や動物が食べ、鳥や動物の糞は、微生物によって分解され、森の樹木の養分となる。
リンの大循環は、海洋大循環、川を遡上する魚、鳥が魚を食べて森でひなを育てる等の複数の過程によって成り立っているため、北極の海氷が消えたり、ダムによって魚が遡上できなかったり、環境ホルモンによって鳥の産卵を攪乱したり、雛を家猫が襲ったりする時、このリンの大循環のリングは、切り離され緑の地球のポテンシャルは確実に低下する。(第10回)
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