C D 番 号 CACD5.00178F(2枚組)
収 録 年 1937年/1938年
評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)
総合 B- 平和でのどか過ぎるメルヘン風の魔笛
指揮者 B+ トーマス・ビーチャム(1879~1961)
管弦楽団 A- ベルリンフィルハーモニー
合唱団 A- Favres Soristen Vereigung
ザラストロ B- ウィルヘルム・シュトリーンツ
夜の女王 A- エルナ・ベルガー
タミーノ A+ ヘルゲ・ロスヴェンゲ
パミーナ A- ティアナ・レムニッツ
パパゲーノ A+ ゲルハルド・ヒュッシュ
音質 B- (モノラル:台詞なし)
私 見
1937年の収録だから、トスカニーニのライブ盤と同年の収録になる。この二大巨匠の魔笛は当時大いに話題を呼んだに違いないが、どのように評価され優劣をつけられていたのか興味深い。
個人的な感想だが、この魔笛に限ってはビーチャムはトスカニーニの域に達していないと思った。
音質は、スタジオ録音だけに雑音はそれほど目立たないし、70年前の録音にしては随分いい。やや感度が低いので、相当ボリュームを上げる必要があるが十分鑑賞の対象になる。
次に歌手陣だが、タミーノ役のロスヴェンゲがトスカニーニ盤に続いて起用されている。さすがに両指揮者とも大事なポイントをしっかり押さえている。ロスヴェンゲはここでは迫力よりもやや余裕を持って情感たっぷりの表現に徹しており、これはこれで悪くない。
ザラストロ役にやや不安定感を感じるが全体的に粒がそろっていて、歌手陣に不足はない。
ただし総合的には、平和でのどかな魔笛という印象が強すぎてやや物足りなさを感じた。波乱、葛藤、緊張などのピンと張り詰めたものが音楽の中にもっと伝わってきてもいいような気がする。
魔笛は指揮者の解釈によってメルヘン風、風刺劇、教訓劇、SF風、喜劇、宗教劇、恋愛劇など様々に色分けされるが、この盤は強いて言えばメルヘン風に偏り過ぎということになろうか。これはこれで悪くはないのだが・・。