CD番号 WLCD 0084(2枚組)
収録年 1954年
評価(A+、A-、B+、B-、C、の5段階評価)
総 合 B+ 極めて上質の魔笛だが語り形式が大きなマイナス点
指揮者 B+ ヨーゼフ・カイルベルト(1908~1968)
管弦楽団 B+ WESTDEUTSCHEN RUNDFUNKS
合唱団 B+ 同 上
ザラストロ A+ ヨーゼフ・グラインドル
夜の女王 A- ヴィルマ・リップ
タミーノ A- ルドルフ・ショック
パミーナ A+ テレサ・シュティヒ=ランダル
パパゲーノ A- エリッヒ・クンツ
音 質 B- (モノラル:台詞なし)
”聴きどころ”
”名花”ランダルのパミーナ役は唯一この盤だけ。
第一幕パミーナとパパゲーノの二重唱「恋を知るほどの殿方には」
第二幕パミーナのアリア「愛の喜びは露と消え」
第二幕ザラストロのアリア「この聖なる殿堂には」
私 見
指揮者カイルベルトは南ドイツ出身でカラヤンと同じ年の1908年に生まれ42歳でハンブルグフィルの主席指揮者に就任している。1965年に初めてNHK交響楽団を指揮しており、その後も密接な関係を保ちながら同楽団の名誉指揮者になっている。通常、指揮者は長寿が多いが、惜しいことに公演中のさなかに60歳で急逝している。
音質の方はCDのジャケットに2005年・24BIT/96KHZのリマスタリングと記載してありスッキリした音質のモノラル録音で聴きやすかったが、奥行き感はそれほど感じられない。
さて肝心の演奏だが、台詞のかわりに幕間に語りが入る珍しい魔笛だった。あの1987年のアーノンク-ル盤と同様である。耳慣れた旋律を期待しているときに、いきなり語りが入るという具合で、どうも音楽の流れが途切れてしまう。慣れないせいもあって最後まで違和感を持ってしまった。
制作当時の歌芝居を意識しているのだろうがこれはどうもいただけない。台詞からアリアや重唱に移っていくときのあのテンポやリズム感が失くなるのはオペラでは致命傷に近いと思う。
歌手の配役は全て一流の印象で、粒がそろっており、しかも実力をフルに発揮している印象。主役のタミーノ役は始めて聞く名前で、後にも先にもこの1回だけの出演だが、どこに出ても立派に通用する歌唱力でこれで十分。
パミーナ役のランダルはトスカニーニが「世紀の発見」と言って見出した歌手で名ソプラノ歌手。あらゆる魔笛の中でこの盤限りの出演なので希少価値は大きい。
夜の女王役リップも5回にわたる出演の中ではこの盤が最上の出来だと思う。
とにかくアリアや重唱、合唱を独立したパートとして聴く分には、いずれも素晴らしい上質の出来栄えで何ら不足はない。
演奏も奇を衒ったところがなく、叙情味もある魔笛。第2幕に入ってやや密度が落ちてくる気もするが語り形式でなければA-以上の資格十分あり。