「なぜ、ご飯に味がついていないのですか?」「なぜ、力士は褌一本で恥ずかしくないのですか?」・・・・・。
海外の人から聞かれて、おもわず答えに詰まってしまう質問がある。文化の違うところから出てきたこんな質問の答えを考えているうちに、日本人の面白い「特性」に気がつく。
表紙カバーにこう記載された本が「なぜ、日本人は?~答えに詰まる外国人の質問178~」(2007年5月23日、(株)ジャパンブック)。
表題どおり、178の興味深い質問と回答が網羅されているが、特に面白いと思ったものを紹介。
☆ 「なぜ、茶道や華道には「道」がついているのですか?」
まず、「道」という漢字から説明しなければならない。この漢字は1字だけだと「みち」と読むが、他の語の後ろについたときは「どう」と発音される。
この字にはふたつの意味があって、まず第一の意味は実際に歩く道のこと。
そして、第二の意味は自分の精神をより高いものにするために歩く精神の道といったもの。このため、何かをする技術を磨くためだけではなく、それを通して精神も高めようとするものに対して「道」という言葉がつく。
それでは、お茶を飲むことや生け花にどうして「道」がつくのだろうか。
お茶を飲む習慣は、禅宗とともに中国から持ち込まれ、やがて村田珠光(1423~1502)という室町時代の僧によって茶道の原型がつくられた。
一方、花を生ける習慣は古くからあったがやはり室町時代に、京都・六角堂の僧侶が、お寺の本尊である如意輪観音に花を供えていたことから華道の原型が体系化したといわれている。
つまり、茶道にしても華道にしても、それぞれに仏教の結びつきがあり、それも関係して「精神修養」としての意味合いを強く持っている。
華道には「生け花」という言い方もあるし、茶道は「茶の湯」ともいうが、ことさらに技術だけではなく精神修養もするとき、それを強調するために「道」をつける。
☆ 「なぜ、電話に出たときに「もしもし」と言うのですか?」
日本で電話が使われるようになったばかりの頃、「もしもし」と言って話し始めていたことから、この言葉が残った。
この「もしもし」は「申し、申し」を縮めた呼びかけの言葉であるとされている。つまり、電話をかけた人は出た相手に、これから話しますよと伝えている。
このため、受け手側が「もしもし」で始めるのはおかしいとして、ビジネス・マナーでは「もしもしと言わないように」と教育される。
また、「もしもし」は、英語の「ハロー」に似たニュアンスの聞き返しの言葉として用いられることもある。電話が使われるようになったばかりの頃には、自分の言葉が相手に伝わっているかという不安から「もしもし」と呼びかけていたので、その名残りだともいわれている。
なお、アメリカで電話が実用化されたばかりの頃、第一声の呼び掛けの言葉として、電話の発明者グラハム・ベルは「Ahoy」(船員が他船に呼びかける言葉)を考えたが、友人のトマス・エジソンが「Hello」の方がいいと提案して、これが一般化したとされている。
☆ 「なぜ、日本人はこんなに働くのですか?」
実をいうと、日本人はもともと勤勉だったわけではない。古い海外の文献ではむしろ、怠惰な姿が描かれていることもあるくらいで、実際、江戸時代以前の日本人は、夏場などには涼しい午前中しか働かなかったという。
そんな日本人が勤勉になったターニングポイントはふたつある。
明治時代の富国強兵政策のもとに、産業や軍事の面で西洋に追いつこうとしたとき。
それから、戦後の廃墟から復興しようと国民全体が一丸となって頑張った高度経済成長期。
「日本人は個よりも集団を重んじる風潮がある」ため、国を挙げての政策が掲げられたり、戦後復興のために皆が頑張る風潮が出てきた中で、勤勉こそが美徳と信じ込んでいった。
つまり、まず集団として勤勉であるべきとの価値観が生まれ,個人としてもそれに従うようになったというわけで、そこで生じた新たな性格が、日本人のDNAに刷り込まれているともいえる。
以上、3項目を紹介したがこのようなスタイルで他にも沢山の興味ある質問と回答が展開される。全て見開きの英訳つきであり、これは英語の勉強にももってこいの本と見受けた。