「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

デジタル機器の非情な世界

2015年10月06日 | オーディオ談義

随分、間が空いたが1週間前の「AXIOM80愛好家の集い~第5回~」(2015.9.29)の続きを。

オーディオ機器を比較試聴することによって、少しでもその個性に近づこうという趣旨で開催した試聴会だったが、その際に掲げたテーマが次の3つだった。

1 SACDとCDの違い

2 DAコンバーターの「dCS」と「ワディア」の違い

3 SPユニット「フィリップス」と「グッドマン」の違い

1については、すでに明らかにしたとおりで、圧倒的な差でSACDに軍配が上がった。ま、今更という話なのでそれほど目新しいことでもないが、弱者の視点から「CDにもいいところがある」と弁護したいものの、これがまったく皆無なのが残念。原理上、0か1かで割り切るデジタルの非情な世界がこんなところにも現れている(笑)。

そういえば・・・。

アナログの世界を例にとるとレコードプレイヤーや真空管アンプなどは安物は安物なりにシンプルなツクリが意外なところで訴える力があったりして、なかなか捨てがたく高級器との対決においても一方が100点、片方が0点という一方的な結着はまずあり得ない。

ところが、これがデジタル機器同士の対決になるといとも簡単に「100対0」が成立してしまう。裁量の余地をまったく残さない。つまり白か黒かで灰色が無い。はたしてこれがいいことなのか、悪いことなのか・・・。

1980年代初頭のCDの登場によって、オーディオの世界が様変わりし、「音質改善の工夫の余地が少なくなってしまい、良い音質を得ようと思えば必然的にお金がかかる。」というあまり好ましくない風潮が蔓延したのもこのせいかもしれない。この時期辺りから若い世代が一斉にオーディオから遠ざかっていったのもむべなるかな~。

アンプによる電気系の増幅、スピーカーによる振動系の変換ももちろん大切だが、その前に位置する音の入り口部分のデジタル系で、ある程度音質が決まってしまうのだからその重要性は計り知れない。

オーディオの中では異質な存在で、カルチャーというよりもサイエンスの色彩がとても濃い。

そして、まったく同じことがデジタル・オーディオを象徴する機器「DAコンバーター」(デジタル信号をアナログ信号に変換する機器:Digital to Analogu Converter:通称DAC → ダック)にも当てはまる。

前置きはこのくらいにして、2番目のテーマであるDAコンバーターの「dCS」と「ワディア」の違いに移ろう。

両者の比較に入る前にまず双方の諸元を明らかにしておくが、
ネットで調べても曖昧模糊の部分があって、おおかたのところで述べると、

まず、dCS「エルガー プラス」について。

イギリス製、1995年前後に登場、当時の定価は250万円前後、CDとSACDの再生が可能

次にワディア「27ixVer.3.0」について、

アメリカ製、1990年前後に登場、当時の定価は155万円前後、CDのみ再生可能

両方の機器ともに、両社のフラッグシップ(旗艦)的な存在だが
ワディアの登場の方がやや早い。当時はデジタルの雄として業界を席巻したものだったが、後発のdCSの登場によって、どなたかのブログによると「dCSの登場によってワディアは奈落の底に叩き落とされた」(笑)とあったが、そもそも当初からお値段が相当違うのでワディアにも同情すべき点がある。

しかし、採算を度外視したフラッグシップモデルの持つテクニカル的なイメージの浸透力はなかなか侮れないものがある。

たとえば、自動車の世界でのベンツとトヨタを例に挙げると、世界販売台数が年間1位のトヨタ、つい最近あのフォルクス・ワーゲンが排ガス規制機器の不正により自らコケてしまったので、ますますその地位を強固にしているが、それにもかかわらずいまだに高級車のイメージではベンツに及ばない。

いい見本がベンツの旗艦車種「マイバッハ エクセレロ」(8億円!)だが、これにはいかにトヨタとはいえ天下の「レクサス」をもってしてもちょっと無理。もちろん伝統の持つ重みも無視できない。

今となってはワディアもdCSに負けじと採算を度外視してフラッグシップモデルにチャレンジすべきだったと思うがもう後の祭り。いまだに技術的に後れを取ったイメージをずっと引き摺っている。


実はここ15年ほどワディアを使ってきて音質に対する不満はいっさい無かったし、とうとう部品の供給が途絶えて「メーカーでは修理不可能」という情報が入ると、恐怖心を覚えて同じ中古をもう1台購入したほどだった。

そして、たまたまオークションで見かけて、はずみで(?)手に入れたのがエルガープラス。我が家にやってきたのはおよそ2週間前の9月18日。

まず、エルガーを聴いてみて音響空間のなかで音が消え入るときの余韻の漂い方に驚いた。以後、テレビ音声を聴くときはワディア、そして本腰を入れてクラシック音楽を聴くときはdCSと勝手に決めつけてしまった。ま、CDトランスポートの「ヴェルディ」もdCSなので純正の組み合わせの利点ももちろんある。

そして、今回の試聴会である。改めて3人による複数の耳での「dCS」と「ワディア」の一騎打ち~。はたして巷間言われるほどの差があるのか。

試聴条件は同じにした。

CDトランスポート「ヴェルディ・ラ・スカラ」(dCS) → DAコンバーター「ワディア」 or 「dCS」 → 「真空管式プリアンプ」(入力2箇所) → 真空管式パワーアンプ「PP5/400」(初期版:英国マツダ)シングル → スピーカー「フィリップス」(口径30センチ、ダブルコーン)

            

プリアンプのセレクタースイッチひとつで両者の比較ができるようにしており、それもSACDではなくCDで比較した。そして2時間ほどかけての試聴結果では・・・。あえて言うまい、いや言いたくない。武士の情けである(笑)。

次に、急いで3番目に移ろう。

SPユニット「フィリップス」と「グッドマン」の違いについて。

フィリップスは口径30センチのフルレンジ・ダブルコーン型、アルニコマグネットで1960年前後の製品。

グッドマンの「AXIOM80」は口径20センチのフルレンジ・ダブルコーン型、1950年代の製品。

いずれもヴィンテージ品といっていいが、試聴結果の結論から言うと、ピアノの響きはフィリップスに軍配が上がり、ヴァイオリンの音色はグッドマンといったところで両者とも実力伯仲、お値段からするとフィリップスの善戦ぶりが目立った。

口径30センチのフルレンジが持つ音の豊かさとバランスの良さはAXIOM80の繊細な音色に十分太刀打ちできると、きっと試聴者は思われたに違いない。

我が家では「AXIOM80」の出番がますます減っていきそう(笑)。

そして、特筆すべきは3日(土)のことだった。近くにお住いのYさんがお見えになったので、ウェストミンスターの箱に入っている「フィリップス」を初めて聴いていただいたところ、Yさんご持参の寺島靖国さん監修のジャズから豊かな低音が出てきたのにはお互いにビックリ。

Yさん曰く、
まさかこの家でこれほどの低音が聴けるとは夢にも思いませんでした。JBLのD130(口径38センチ)の時よりも、質のいい低音が出てますよ!」

SPユニットは振動系の機器だから、容れてやる箱次第で音が激変するのは当たり前の話だが、これほどとは思わなかった。やはりシステムの調整にはジャズの最新録音も必須だとの思いを強くした。

「これで我が家の音は決まり!」といきたいところだが、いったん電気回路を通った音が原音そのままということはまずありえない。どこかに歪があるはず。

所詮は、せいぜい「うまく騙して欲しい」という錯覚の世界なので、結局、これからも「狐と狸の化かし合い」が果てしなく続いていくことだろう~(笑)。
 


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