「男子三日会わざれば刮目してみよ」という中国の故事がある。意味はくどくど言わない(笑)。
これは、男子ならぬオーディオシステムにも当てはまりそうで、我が家みたいに日変わりのようにクルクル変わるのは論外として、熱心なオーディオ仲間の場合、半年も過ぎれば相当変わっているに違いない。
きっと得るところがあるに違いないと、大分市内在住のMさんとNさん宅を訪問することにした。去る5日(月)のことだったが、丁度当日は未明に台風12号が本県をわずかに逸れて北上した後だった。ちなみにご両人は先日我が家のシステムを聴きにお見えになられたばかり。
最初に訪れたのはMさん宅だった。
2系統のシステムを楽しんでおられて、クラシック用に「タンノイ・オートグラフ」そしてジャズ用に「クリプッシュ」(3ウェイ:アメリカ)のスピーカー。
完全なレコード派で3台のプレイヤーを駆使しておられる。それぞれカートリッジが「TSD15」「シュアー」そしてモノラル用に「ピカリング」。レコードで鳴らす場合のカギとなる「イコライザーアンプ」は「カンノ製」(電源は別)。
プリアンプは自作で出力管にWE310Aを使用したもの、パワーアンプはクラシック用として「KT88プッシュプル」(新藤ラボ)、ジャズ用には「マランツ8B」。
以前は、一部にトランジスターアンプを使用されていたがこの程全面的に真空管アンプに転向され、今ではすっかりその魅力の虜になっておられるようだ。まことにご同慶の至り(笑)。
はじめにクラシックを聴かせていただいたが、大型スピーカーなのに低音域をドスンとかボンつくような鳴らし方をいっさいされていないことに気が付いた。その点に水を向けると「低音域のボンつきだけは警戒しています。どうしても中音域に被ってきて全体的に音の透明感が失われますからね。」
まったく当方と同じ考え方なので安心した(笑)。
音の「量感を優先するか」それとも「質感=スピード、透明感を優先するか」。
もちろん両立が理想だが、これがなかなか難しい。オーディオにとって永遠のテーマみたいなものだが、楽器の位置や音色をくっきり鮮やかに再生できるのは絶対に後者だと思うが、量感たっぷりの鳴らし方にも聴くソースによってはいわく言い難いふてぶてしさがあって、一概にいい悪いとはきめつけられない。
「こうして鳴らす引き締まったタンノイもなかなかいいですねえ」と申し上げたところ「正直言って〇〇さんのウェストミンスターにももう一度タンノイのユニットを入れて、もっと音を詰めて欲しいと思ってます。」と、いきなりカウンターパンチをくらった。もちろん我が家のことである。さすがにタンノイ愛好家さん(笑)。
「まあ、常に気にかかっていることではありますよ・・・。ヤル気になればいつでもユニットを取り代えてもいいんですが、現行のフィリップスの口径30センチのユニットにも愛着があってなかなかその気になれないですねえ。
今さらながら口径の大きな38センチのユニットのスピード感の鈍さについていけるかという不安もあります。我が家のユニットは同じタンノイといってもHPD385とは少々違っていますのでね。ま、そのうち一度試してみることにしましょう。」と返しておいた。
次にクリプッシュでジャズも聴かせていただいたが、こちらも低音域を程良く締めてあってレンジも広く実に聴き心地が良かった。やっぱりNさんは「凄腕」の印象を強くした。2時間ほど堪能させていただいてから一緒に次の訪問先のNさん宅へ伺った。
これがNさんご愛用のアルッテクのA5システムで、Mさんと同様にレコード派で1台のプレイヤーに3本のアームを取りつけて楽しまれている。プリアンプとイコライザーアンプは一体化してあり(画像左:出力管「WE310A」)、パワーアンプはWE300Bシングルのモノ×2台。両方とも自作である。
試聴結果の印象はどちらかといえばレンジを狙わずに厚みを前面に打ち出した中身の濃い音という印象を受けた。
Nさんのお好きなジャンルはジャズオンリーとのことで、ジャズマニアにときどきみられる大音響で聴かれるタイプではなく比較的しめやかな音で聴かれるのがお好きのようでローレベルでもいっさい音が痩せることなくその表現力はさすがで、このアルテックの鳴らし方ならクラシックが聴きたくなったほどだった。
それからNさんはとても器用な方で、いろんな便利な道具を揃えてあり、中でも今回感心したのは次のリフター。
100キロクラスの大きくて重量のあるスピーカーをテコの原理で片手で楽々持ち上げられる優れもの。持ち上げた隙間に付属のコロを入れてスピーカーを動かしやすくする仕組み。お値段も2000円以内ということで、近くのホームセンターで購入された由。
我が家のウェストミンスターのユニットを入れ替えるときはいつも狭苦しい裏側に潜り込むのでひと苦労するが、これがあると非常に便利だ。
しかし、毎日使うものでもないし、せいぜい年に1~2回といったところだろう。その時になってお借りしようか、それともアッサリ購入しようか、ここが思案のしどころ(笑)。アッ、そういえばオーディオ以外にも大きな箪笥などを動かすときも使える!
それにしても今回も実り多き試聴会だった。