小さな池の真ん中に石を放り投げるとポチャンと音がして全体にゆっくりと波紋が広がっていく。
古来「一石を投ずる」という言葉があるが、それと同じようなことが我が家のオーディオシステムにも起こっている。さしずめテレフンケンの「RS289」アンプが石の役割を果たしているとでも言うべきだろうか。
と、ちょっと気取った書き出しになってしまって申し訳ない(笑)。
試聴用として借り受けたこのアンプがやってきてからおよそ3週間あまり、既存のアンプやスピーカーへの波紋に「ああでもない、こうでもない」と右往左往している毎日だが、まったく暇つぶしにはもってこいだ(笑)。
それでは波紋の実例を挙げてみよう。
☆ AXIOM80への波紋
残念なことに「RS289アンプ」(以下「289」)と我が家のオーディオの「レーゾンデートル」とでも言うべきAXIOM80(以下「80」)との相性があまりよろしくない。
低音域の量感と制動力に目を見張るものがある「289」と、低音域に弱点がある「80」との組み合わせはどう見ても「GOOD」のはずだが、これが見事に期待外れで実に「しょぼい音」しか出てこない(笑)。
理屈倒れはオーディオには付きものの現象なので、こればかりは実験を繰り返しながら原因を究明するしかない。
まず、比較するためにアンプを代えて既存の「171Aプッシュプルアンプ」(以下「171A」)で「80」を鳴らしてみると、こちらの方がずっと聴きやすい。
音に「おおらかさ」があって、長時間聴いても疲れない感じ。したがって「80」を聴くのなら「171Aプッシュプルで十分だ」となれば、「これにて一件落着」と、八方すんなり納まるのだがそうは問屋が卸さない。
返す返すも腑に落ちない。「289」があっさり「171A」に負けるはずがない・・・。
これは、むしろ「80」の側に非があるのかもしれないと思い至ったのは自然の成り行きで、あとは行動あるのみ(笑)。
まず、「80」を容れている自作のエンクロージャーの全面的な見直しを行った。
☆ 吸音材の変更
内部に張り付けていた厚いフェルト地を外し、その代わりにごく薄めの吸音材を張り付けて箱内部の容量の拡大を図った。これで、片チャン3ℓほどの容量が稼げて響き具合がもっと良くなるはずだ・・・。
同時にエンクロージャーの補強を行って、バッフルと本体の隙間から音が漏れないように目張りの板を2枚張り付けた。
☆ ARUの変更
「80」にとって「ARU」(背圧調整器)の存在は死活問題である。背圧とは周知のとおりSPユニット(コーン型)の後方側に出る音(逆相)のことで、これをいかに逃がすかで音は激変する。各メーカーとも工夫に工夫を凝らしている部分である。後面開放、バスレフ、バックロードなどさまざま・・・。
「80」のケースでは背圧を簡単に逃がさないようにして、その圧力をユニットの振動にうまく吸収させて低音域の量感を増やす仕組みになっている。これがARUだが、もう天才的な着想としか言いようがないほどの匠の技である。
これまで自己流のARUとしてエンクロージャーの底板にごく目の細かい金網を30センチ四方に張り付けていたが、さらに背圧を逃がしにくいように目の細かい網を中央部分に被せてみた。
これで絶対に音が変わるはずだが、はたして吉と出るか、凶と出るかこればかりは実際に聴いてみないと分からない。な~に、悪ければ外すだけのことで命まで取られるわけではないので、ま、いっか(笑)。
そして最後の対策としてプリアンプを変更した。現用中のプリアンプ(12AX7×6本)はトーンコントロールが付いていない。その点、「クリスキット・カスタム・マークⅥ」は2段階の低音ブースト機能が付いているので「80」には向いていそうだ。
ほんとうはこの機能を使わないのが一番だが、「80」に限っては仕方がない。
半日ほどかけて作業が完了し、いよいよ音出しへ~。
ワクワクしながら聴いてみると、おお、なかなかいけるじゃないか!(笑)
理想的とはいかないまでも以前よりも明らかに良くなっている。
やっぱり、じたばたしてみるもんですねえ。
一石が投じられて、他の機器の欠点をあぶり出す効果は確実にあったようでして(笑)。