「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

凄いアンプ!

2018年08月17日 | オーディオ談義

連綿と続いた「SPユニット遊び」もようやく一段落し、今度は我が家の6台の真空管アンプとの相性テストに移ろうとした矢先に朗報が飛び込んできた。

「今年の秋の真空管オーディオフェア(東京)に出品予定の真空管アンプがようやく完成しました。まだプロトタイプですが一度試聴してみませんか。」

新潟県の老舗の真空管アンプ工房「チューブオーディオラボ」のK村さんからだった。

「いやあ、それはまたとない機会ですね。ぜひ試聴させてください。」と、一つ返事。

それから3日ほどして我が家に到着したものの、あまりの容れ物の大きさに仰天した(笑)。

        

すぐにK村さんと交流のあるKさん(福岡)に連絡して、「かねがね話題に上っていたアンプが到着しましたよ。よろしかったら明日一緒に試聴してもらえませんか?」

「エッ、急な話ですね。多分うかがえると思いますが・・。」と、当然のごとく歯切れが悪い。

「どうも無理を言ってすみません。」

翌日の午後、予定通りお見えになったKさんともども新型アンプの試聴に入った。

      

アンプの概要を紹介しておこう。

プッシュプル方式で出力管は「RS289」(テレフンケン:1942年製)×4本、整流管は「83」(水銀蒸気入り:刻印)、アンプの要である出力トランスとドライバートランスは「TSMProducts」特注品というなかなか凝ったツクリ。

「RS289」は5極管(傍熱管)だが、それを3極管接続にしてあり、第二次世界大戦中のドイツ地上(戦車)部隊の通信用に製造された球である。
兵士の生命ひいては国家の存亡にかかわる真空管だからツクリの精度は民生用の比ではない。

70年以上も前の希少な球だし、さぞやあの独特のドイツ語の発音にも適応した優れた球なのだろう。戦後になってロシアから大量に出てきたりするそうで、おそらく戦利品として持ち帰ったと推測される。いまだに戦争の爪痕が色濃く反映された球として実に興味深い。

かっては、血まなぐさい戦いの中で使用されていた真空管が見事に現代に蘇り芸術鑑賞用として優雅な音で我々の耳を愉しませてくれるなんて、天と地ほどのあまりの境遇の違いに「これこそ本来の使命だ!」と、真空管もきっと喜んでいるに違いない(笑)。

これらの珍しい真空管の採用は「北国の真空管博士」のアドバイスを参考にされており、独自の「裏技回路」なども組み込まれているとのこと。

アンプのスイッチは2段階に分かれており、まず、整流管の「ヒートアップ・スイッチ」をオン、3分ほどしてアンプのパワースイッチをオン、傍熱管なので本格的なサウンドを出すまでには30分ほどかかるという代物である。気忙(ぜわ)しい人にはまず向かないアンプ(笑)。

テストに使ったスピーカーはワーフェデールの2ウェイ、CDシステムはdCS(イギリス)のトラポとDAC、プリアンプは12AX7を6本使った真空管式。

記念すべき最初の試聴盤はKさんともども愛好してやまない「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲K364」(モーツァルト)。

          

「五嶋みどり」と「今井信子」のコンビだが、
ヴァイオリンとヴィオラの押したり引いたりの「阿吽の呼吸」が神業としか言いようがないほどの素晴らしい演奏。モーツァルト一筋に40年以上に亘ってひたすら聴き込んできた自分が言うのだからどうか信じてほしい(笑)。

ほかにもパールマン盤やグリュミオー盤も持っているが「みどり・信子」コンビの方が断然上回っているので同胞としてまことにうれしくなる。

第一楽章から耳を澄まして聴いてみたが、Kさんともども「可聴帯域の周波数レンジをすべて網羅している印象です。これまで聞こえてこなかった音が聴こえてきますねえ。」と感嘆しきりだった。

プッシュプル方式だから中低音域の厚みとスケール感はほぼ予想した通りだったが、中高音域の透明感もシングルアンプと比べてそん色がないことに驚いた。

二人で驚嘆しながら次から次にCD盤を取り換えて鑑賞に耽った。マルサリスの「バロック デュオ」も素晴らしかった。ホーンタイプのユニットを使っていないのに、唾が飛んでくるほどのトランペットの迫力と勢いに圧倒された。サキコロ(ソニー・ロリンズ)のシンバルもバッチリ!

「とても我が家でこんな音を出すのは無理です。」とKさんが白旗を掲げられるほど(笑)。

さらにこのアンプはスピーカーを完全に牛耳っているところが頼もしい。両者の関係はケースバイケースで様々だが、あるべき姿はやはりアンプがスピーカーをコントロール下におく主従関係に尽きる。


それに、いかなるオーディオ機器もじっくり聴き込むと何かしら欠点が見えてくるものだが、このアンプに限ってはそういうことが感じられそうにない印象を受けた。

実を言うと我が家の6台の真空管アンプも相当なレベルに到達していると自負していたのだが、中低音域の分解能と分厚い響きには正直言ってとうてい敵いそうにない。

Kさんが辞去された後、K村さんに連絡した。

「このアンプはだいたいどのくらいのお値段を考えられているんですか。」と単刀直入に切り込んだ。

「う~ん、そうですねえ・・・・。〇〇万円ぐらいですかねえ。」と、まだ具体的なお値段までは想定されていなかったご様子。

実を言うと、このところ知人に委託して不要になったオーディオ機器をオークションに出品してもらったところ、その代金がかなり溜まっている。

いわば軍資金だが、たとえば3ペア持っていた「AXIOM80」のうち1ペアを処分したところ「278千円」と予想以上の価格だったし、真空管のWE300Bオールドは「300千円」近いお値段だったし、ほかにもいろいろあって「懐」はかなり潤っている状況だ。

それに、真空管「RS289」のストックにも限界があり「早い者勝ち」になることは目に見えている。

まさに「猫に鰹節」のような危険な(?)状況だが、はてさて、どうしようか・・・(笑)。




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする