オークションで購入した品物は“当たり”もあれば“ハズレ”もする。今回は前回と違って“大当たり”のケースである。
☆ E180CC PHILIPS MINIWATT 2本組 真空管(落札日:2014.12.7)
たまたまオークションで見かけた「E180CC」という真空管。
「オランダ フィリップス」ブランドに大いに魅かれるものがあったので、真空管の薀蓄(うんちく)にかけてはおそらく右に出る人はいないKさん(福岡)とGさん(福岡)に訊ねてみた。
「オランダ フィリップスのE180CCという真空管がオークションに出品されてますが、使ったことがありますか?」
お二方とも口を揃えて「いいえ~、これまで使ったことがありません。E80CCなら名管として知ってますが。」
この答えに怯むような自分ではない(笑)。さっそくネットで調べてみるとE180CCは「μ(ミュー)=46」だった。μとはその真空管の持つ特性のうちでも最も大切な「増幅率」のことである。
たとえば、「電圧増幅管」として代表的なものは「12AX7」「12AU7」といったところだが、そのμを例示してみると次のとおり。
12AX7(μ=100)、12AT7(60) 12AZ7(60) 12AY7(44) 12AV7(41) 12AU7(17) 12BH7(16.5)といったところで、最も汎用されている「12AU7」のμはかなり低い。
これらの真空管を思い切ってほかの真空管に差し換えることで音質が随分良くなることがあるのでこのところズッポリ嵌っている。一番重宝しているのが「E80CC」や「12BH7」で我が家のアンプに使っている「12AU7」はすべて差し換えている。ただし、我が家のシステム環境ではという条件付きなので他家では当然ハズレもあるだろう。その辺は保証の限りではない(笑)。
ちなみに、この真空管の「増幅率」(μ)の違いによりアンプの音色が激変する。しかも出力管と違ってミニチュア管なので価格の方も比較的安価に済むので非常にありがたい。
とはいえ、真空管の基本特性の諸元はいろいろあって、単なる「μ」だけで使用判断するのは危険なのは分かっている。
「差し換えてノイズさえ出なければ良し」という具合だから随分荒っぽい話ではある。出力管も含めて他の部品に与える影響を無視しているのだから専門家の観点からはきっとタブーに違いない。ま「虎穴に入らずんば虎児を得ず」というところで許してもらおう(笑)。
さて、話は戻って「E180CC」だが、「μ=46」という値はそれほど大きくもなく小さくもなく随分使いやすそうである。まあ、「冒険してみるか」というわけで落札。入札は我が1件だけだった。誰にとってもあまり馴染みのない未知の球なのだろう。
すぐに丁寧に梱包されたE180CCが我が家に到着した。ピンの根元辺りをじっくり拝見したが、あまり変色しておらず中古には違いないが程度は良さそうである。
大いに期待して、まず「71Aシングルアンプ」に挿し込んでいる初段管「E80CC」に差し換えて試聴してみた。
一聴した瞬間に「オッ、なかなかいいじゃない!これならE80CCと、どっこいどっこいだなあ。」。
ところが1時間ほど連続して試聴してみると、左右両側の「AXIOM80」から何とも表現しようのない非情なノイズが聞え出した。もともとは「6SN7GT」(μ=20)が使ってあったアンプなのでおそらくμ値が高すぎるのだろう。これはいけませぬ!どんなに「お気に入りの音」が出ても、ノイズが出ればたちどころにアウトなのが我が習性である(笑)。
「71Aシングルアンプ」は失敗の巻で、次に目を向けたのがJBL375用に使っている「刻印付き2A3シングルアンプ」である。
現在、初段に使っているのは「6SL7GT」(ムラードECC35)でこの真空管は「μ=70」だが、使えないことはあるまいと踏んだ。水と同じで高き(μ=70)より低き(μ=46)に流れるのは自然の流れ(?)。
ただしソケットのピンサイズが合わないので、こういう時のためにちゃんと「6SL7、6SN7=12AX7、12AU7」にマッチングするアダプターを準備している。
これでJBL3ウェイシステムを聴いてみると、信じられないほど音が柔らかくなった。どちらかと言えばあの華やかな音を出す傾向のある「375」がである!クラシックを聴くにはもってこいで、出力管の「刻印付き2A3」も欧州管だし「これはオランダ フィリップスの匂いがしてくる音だなあ」と大いに感じ入った。
肝心のノイズの方も10日ほど経つがいっさい無しで、「E180CC」当たりの巻~。
調子に乗って、またまたオークションに出ていた「アンペレックス」ブランド(オランダ)の「7062=E180CC」4本も落札した。まるで「無人の荒野を行くがごとき」で今回も入札は自分だけ。
これでスペアは十分確保したのであとはもう高枕~。