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異次元緩和の狙いは二転三転し国民の暮らしに重圧

2023年06月26日 | 経済

 

円安と物価高で税収増を図る

2023年6月26日

 円が1㌦=143円(26日現在)まで下落し、為替安もあり、5月の消費者物価は3・2%まで上がりました。9か月連続で3%を超え、政策効果(物価抑制の補助金政策)がなければ実質4・3%というインフレ状態です。引き締めを続けている米国の4%を上回ります。それなのに日銀は動きません。

 

 メーカーは商品の容量を減らし、見かけの価格上昇を抑えていますから、単位容量当たりの価格動向で考えると、実質4・3%を超えるでしょう。第2次石油危機(1981年)以来、41年ぶりのインフレ到来です。

 

 物価高はまだ進み、高止まりし長期化するとの指摘が聞かれます。そうなる前に緩和縮小・利上げに動き、経済が失速するようなら、金融緩和に戻せばいいのです。金融政策は本来短期的で、柔軟性があるべきです。そうしないのは不思議で、何か理由があるのでしょう。

 

 円の力を示す実質実効購買力は低下し、1973年の変動相場制移行後、最低水準になり、インフレ鈍化の兆しは見えません(日経新聞)。5月の実効為替レートは76・2(2020年=100)です。アベノミクスの異次元金融緩和が始まる直前の2012年12月の1㌦=80円台に対し、最近は143円で、輸入物価を押し上げ、国内の物価高を招いています。 

 

 日銀はデフレ脱却の目標にしていた2%を超えているのに、「まだ安定的な数字ではない。コストプッシュ型の上昇であり、また2%以下に戻ってしまう可能性がある」など、理屈をいろいろ言って動きません。

 

 6月の内閣支持率が15㌽も急落し41%、不支持率は44%(読売新聞)となり、岸田政権に衝撃が走りました。マイナンバーカードを巡る失態が直接的な原因のようです。私はそのほか、勢いを増す物価高で国民の暮らしが苦しくなっていることの影響も大きいと思います。

 

 日銀は金利を引き上げませんから日米間の内外金利差(短期金利)は5%まで広がり、海外の投資家の日本株買いが勢いつき、3万3千円まで最近上昇しました。円を超低金利で調達し、投資に回しています。

 

 日銀は大規模金融緩和を維持することを決めていますから、海外投資家にはにとっては、日本株は安心して投資し、ぼろ儲けができます。その裏では、超低金利・円安で国内物価が上がり、国民の暮らしが苦しくなっています。外国勢が喜んでいる株価バブルの裏側には、物価高に悩む日本国民の暮らしがあります。

 

 「なぜ日銀は利上げに動かないのか」、「円安や物価高騰をいつまで放置しておくのか」。そういう問いをどう考えるかです。

 

 私が思うに、日銀は当初の異次元金融緩和の狙いをすでにすり替えています。「物価上昇は消費税収を増やす好機だ」、「円安を容認して大会社の企業収益を膨らませば、法人税が増える」、「政治が抵抗する国債発行の抑制より、このほうが財政収支の改善に即効性がある」と政府、日銀は考えているに違いないと考えます。

 

 7月に固まる22年度の税収は70兆-72兆円の見通しで、3年連続で過去最高を更新します。消費税収と法人税収の増加によります。

 

 インフレで商品価格が上昇すれば、それにかかる消費税が増え、国庫に入る消費税収(23年度予算では23・4兆円)が増えます。大会社の企業収益も円安効果で過去最高の純利益35・6兆円に達し、法人税収(同14・6兆円)も増えます。

 

 政府、日銀が狙っているのがそういうことなら、いつまで経っても物価抑制、円安阻止に動かないわけです。「2%の物価目標以下に逆戻りする見通しだ」と日銀が繰り返しているのは、動かないための理屈です。

 

 税収が増えても、政治主導で歳出に回してしまったら、財政状態はいつまで経っても改善しない。増額が決まっている防衛費、少子化対策の財源の当てが乏しく、そうなる可能性があります。税収増を国債返済に使うのではなく、歳出に回してしまう。

 

 物価高は国民の暮らしを苦しくする。大企業が潤っても、それが円安によるものなら、その裏側では国民の暮らしが犠牲になっている。しかも円安のおかげで企業収益が増えるので、経営者は企業努力をしないし、株価が上がっているので経営責任を問われることもない。

 

 国民一人当たりのGDPは先進40か国中で38位まで落ち、低迷を続けています。異次元緩和と財政拡大に甘えてきた結果です。日銀の市場への介入が度を越し、市場機能が喪失し、経済が活性化しない。

 

 「2年、通貨供給量2倍、物価2%上昇、デフレ脱却」で始まった異次元金融緩和は10年以上、経ちます。物価が上がり始めたのは、国内の金融政策の結果ではなく、海外要因(コロナ禍、ウクライナ戦争)、輸入物価の上昇の結果です。貨幣数量説は空振りに終わりました。

 

 次に「アベノミクスは財政ファンナス(日銀の国債購入)が本当の狙いだ。円安は金融緩和に付随して起きている」に変わった。最近では「経済成長で財政収支の好転を図るのではなく、消費税と法人税の直接的な増収を狙う。円安は物価高に効く。株高も日本復活の兆しで歓迎する」になった。

 

 異次元金融緩和の狙いが二転三転し、出口が見えないまま迷走を続けているのです。海外は「お手並み拝見」の構えでしょう。長すぎる異次元金融緩和のつけはあまりにも大きいのです。

 

 

 

 

 

 

 

 


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