私たちは研修終了後、「研修内容についてのアンケート」をとります。用紙には研修に対するご意見をいただくために、自由記述欄を設けてあります。単なる感想ではなく、今後の研修をより良いものにするためのヒントが書かれていると大変うれしく、また、ありがたく思います。
一方、「講義の内容はほとんど知っていることばかりで、あまりためにならなかった」という意見を書かれる方も、ごく少数ですがいらっしゃいます。
たしかに、本や他のセミナーですでに学んだことをまた聞かされるのは、つまらないに違いありません。
ただ困ったことに、こういう意見を書かれる方には2つのタイプがあることです。
ひとつは「知っていて、実践している人」、もうひとつは「知っているが、実践していない人」です。
人事部門の担当者と行う「研修の振り返り」の際に確認してみると、前者(知っていて、実践している)と思われる人の割合は5%未満というのが事実のようです。
つまり、「講義の内容は知っていることばかりだった」と書く人のほとんどは、「知っているだけで何もしない人」なのです。
知っているのに何もしないのですから、会社からすればそういう人の研修費用は「無駄」という以外にありません。その人の知識が増えたところで実践されなければ、会社にとっては無意味だからです。
私は、研修をクッキング・スクール(料理教室)にたとえることがあります。
料理を学ぶ目的は、自分で料理を作ることです。「知っているが、実践していない人」は、料理の知識はあるけれど料理を作ったことがない(本当は作れない)人なのです。
最近は研修のはじめに、「テキストにざっと目を通して、知っていることがあったらディスカッションの時に職場でどのようにして実践しているのか、あるいは使えないとしたらどの点に問題があるのかを具体的に話すようにしてください。」と伝えるようにしています。
そして、「職場に戻ったら実践すること」を具体的にコミット(約束)していただきます。その際、上手く行ったら周りを巻き込んでどんどん進める、上手く行かなかったら止めれば良いのです。
家に戻ったら料理をする、それがクッキング・スクールに行く「意義」というものです。
(人材育成社)