「新型定期預金に家族2名以上で預金すると、金利に上乗せ」との金融商品の宣伝を聞き、ある大手信託銀行の本店を訪れた時のことです。
案内の女性にパンフレットをもらい、質問しました。
私:「家族2名以上とのことですが、兄弟でも可能ですか?」
行員:「はい、兄弟も大丈夫です」
と説明されたのですが、その後、家に帰りパンフレットをよく見てみると、兄弟の欄の表記の色が他の欄と異なっていたため、少々心配になり後日あらためて同じ店舗で別の行員に同じ質問をしたところ、
行員:「兄弟は対象ではありません」
私:「先日案内の方は兄弟も可能とおっしゃっていましたが、兄弟は対象ではないのですか?」
行員「対象にはなりません」
私:「同じ商品に対して、言うことが異なっていたということですか?」
行員:「そうです」
私:「・・・」
といったやりとりがありました。
また、同じ商品について、私の母が別の支店で同じ質問をしたところ、同様に対応する行員によって説明が異なったとのことで、最終的にその支店では、兄弟は対象になるという説明だったそうです。
「真実はどちらなの?」「いったい、誰の説明が正しいの?」と思わざるを得ない対応ですが、この一連のやりとり中で私が思い出したのは、「蟻の穴から堤も崩れる」(韓非子)という言葉です。
千丈(せんじよう)の堤であっても、蟻の穴のように小さいところから崩れることがあるということで、「些細なことでも、油断すると大きな災いを招くことがある」という例えです。
これまで私自身は、この銀行との取引はありませんでしたが、今回、この商品を検討しようと思ったのは、やはりこの銀行に対する信頼感があったからのことなのです。
「大手の信託銀行だから」と、無条件に信頼をしてしまっていたのかもしれませんが、この一件で一瞬にして私の中からこの銀行に対する信頼感はなくなってしまいました。残念なことではありますが、この商品はもちろんのこと、私がこの銀行を訪れることはもうないだろうと思います。
信頼とは、過去からの信用の積み重ねによって、なし得るものだと思います。しかし、今回のようなことがあると、例え歴史の中で長い時間をかけて積み上げてきた信頼であっても、一瞬にして崩れてしまうのだとあらためて思いました。信頼を築くのには時間がかかりますが、損なうのはあっという間です。
今後もこのような、ちぐはぐな対応を続けていれば、やがてはお客の信頼を失ってしまうでしょうし、そのことは人伝いにどんどん拡がっていってしまうことと思います。
そして、このことは決して他人事ではありません。
私自身会社を経営する者として、たった一つの蟻の穴がいずれ堤を壊すことにもなりかねないということを肝に銘じ、信頼の大切さをあらためてかみしめた瞬間でした。
さて、兄弟が対象になるのかどうかが気になるところですが、この銀行のホームページを見ると、対象にはならないとの表記があります。真実はいかに??そして、この信託銀行の誰が真実を知っているのか、謎が残ります。
(人材育成社)