私がこの写真「ダリと猫と椅子」をはじめて見たのは、小学生のときでした。父が買ってきたジャポニカという百科事典の中に、「1948年、Life誌に掲載された」とありました。ダリという芸術家の名前を知ったのもこの時でした。
ところで、大人になってからこの写真について新たに知った事実があります。それはこの写真が合成ではないということです。
18 Old-Timey Photos You Won't Believe Aren't PhotoshoppedというWebページによれば、イーゼル(画架)の前で絵筆を持っている男(もちろん、ダリその人です)、水しぶき、3匹のネコ、椅子はすべて宙に浮いた瞬間、シャッターを押してカメラに収めたものだそうです。
つまり、イーゼルを吊り上げ、ダリがジャンプし、撮影助手が3匹の猫を放り投げ、バケツで水をぶちまけた瞬間の写真というわけです。
写真家のフィリップ・ハルスマン(Philippe Halsman)は28テイク目でこの写真をものにしたそうです。
この写真を撮る前にダリとハルスマンは次のように話し合いました。
ダリ:「吾輩は、絵とはどうあるべきかを分かっておる・・・鴨を持ってきて、ちょっとばかりダイナマイトをケツに突っ込むんだ。で、鴨が爆発する瞬間に吾輩が飛ぶので、それを撮りたまえ。」
ハルスマン:「ここがアメリカだってことを忘れないでください。鴨をダイナマイトで吹き飛ばしたら刑務所行きですよ。」
ダリ:「そうだな。じゃあ、猫を連れてきて水と一緒にぶちまけよう。」(訳:平野)
かくして、この写真史史上に残る名作が誕生しました。
私は、撮影したハルスマンも28回もジャンプしたダリも「凄いプロ根性を持っているなあ」と素直に感心しました。芸術家という常人離れした人たちだからと言ってしまえばそれまでですが、プロと言うのは手抜きをしないときには徹底的にしないものなのだということです。
仕事中、常にフル回転・100%で走り続けて途中で倒れてしまってはプロとは言えませんが、私もここぞのタイミングでは満点を出すこと、それを心掛けていきたいと思います。
ちなみに今は、猫を28回も放り投げたらアメリカではなくても警察が来ることでしょう。真似しないでくださいね。
(人材育成社)
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