中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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「わかりあえない」ことを前提にする

2015年01月14日 | コンサルティング

「心からわかりあえないんだよ、すぐには」「心からわかりあえないんだよ、初めからは」

これは、劇作家・演出家の平田オリザ氏の「わかりあえないことから」(2012)(講談社現代新書)の一節です。

私は、コミュニケーションの難しさを感じた時にふとこの一節見ると、ホッとするような気持ちになります。

コミュニケーションスキルの必要性がますます叫ばれるようになって久しいです。日本経団連が毎年行っている調査で、企業が新人に求めるスキルについてこの10年間不動の一位は、コミュニケーションスキルです。しかし、最近では新人のみならず、管理職研修においても、コミュニケーションを練習する時間を入れてほしいという要望をよくいただきます。

かつて私が研修業界に入った20数年前には、管理職研修のテーマにコミュニケーションスキルを入れると、少々嫌がられる節がありました。それは、当時コミュニケーションはやさしいスキルであると考えられていたため、新入社員や若手社員が学ぶスキルであって、管理者に今更コミュニケーションスキルもないでしょう、という風潮があったからだと思います。

ところが、今はどうでしょう?私には、老若男女にわかりあえるコミュニケーションについて必要以上に叫ばれているように感じます。コミュニケーションの質よりも量を追求し、いかにお互いにわかりあえるか、仲良くなれるかを必要以上に追求した結果、コミュニケーション呪縛にかかり、かえって窮屈になってしまっているように感じられる時があります。皆さんはいかがでしょうか。

そういう時に開きたくなる本が、冒頭の「わかりあえないことから」です。平田オリザさんは、本の中でこのようにも言っています。

「心からわかりあえることを前提とし、最終目標としてコミュニケーションというものを考えるのか、『いやいや人間はわかりえあえない。でも分かり合えない人間同士が、どうにかして共有できる部分を見つけて、それを広げていくことならできるかもしれない』と考えるのか。」

コミュニケーションを考える時に、引き算ではなく、足し算で考える。わかりあえたことを一つずつ喜びにしていく。こうやって考えると、何だか安心できます。あなたもコミュニケーションが上手くいかないと感じた時に、このように発想の転換をしてみませんか。

(人材育成社)