「いじめをするような者がいたら、私が許さない」 「信頼をされれば、人は人にやさしくなれる、思いやりを持てる」 「○○さん(社員)は本当に頑張ってくれているね」
これは、先日お邪魔した、ある中小企業の経営者の言葉です。
また、この経営者は「言葉が持つ意味が大事である」ともおっしゃっています。
このお話のとおり、社員ととことん話し合うことに時間をかけているとのことでしたし、自分の考えをわかりやすい言葉で伝えることに心を砕いていらっしゃるようにも感じました。
これらの話を伺って、「このような経営者の下で働く社員は、どういう人たちなのだろう」と考えつつ、工場や社屋にお邪魔したところ、廊下などですれ違った社員の方はもちろんのこと、こちらが気が付いていなくても、相手の方から元気よく「こんにちは」とあいさつをされました。
四方八方から気持ちの良い声が響いてきましたので、まるで「こんにちは」という言葉のシャワーの中にいるように感じられて、私もついつい気持ち良くなってしまい、気がつくとすっかりこの会社のファンになっていました。
さらに、社員の方と具体的に話をしてみると、皆さん「とても勤めやすい会社です」「会長や社長や副社長のことを皆が慕っています」「こういう会社とご縁があったことを本当にうれしく思っています」と異口同音におっしゃるのです。
この会社の経営者と社員の方々と接してみてあらためて感じたのは、組織の文化や風土は、経営者の姿勢や具体的な発言がつくるのだということです。
経営者の想いを具体的な言葉で表したり、目指すべき方向を経営理念につなげて説明をしたり、日々社員を観察して具体的な行動をほめる。そのような行為の一つ一つの積み重ねによって社員は経営者を信頼し、やる気を持ち、明るい組織の文化や風土がつくられていくのだと思います。
このように、組織の文化や風土は決して一朝一夕にでき上がるものではなく、良につけ悪しきにつけ、長い時間をかけて作られるものなのです。
そして、一旦形作られた文化や風土は、例えそれが少々の問題を含んでいたとしても簡単には壊れません。
だからこそ、経営者の言葉は大変に重いものです。たかが言葉、されど言葉です。
時々、「1割の社員が理解できればいい方だから」、「うちにはその程度の社員しか来ませんから」と嘆く経営者にお会いすることがあります。はたしてこのような経営者の下で働くのと、前述の経営者の下で働くのとどちらが良いか、どちらの方が社員をやる気にさせるかは、答は言うまでもありません。
このように、経営者の言葉の影響力は侮れません。社員は経営者の言葉に敏感に反応します。
「そんなことは気にしたことがない」という経営者は、自分が社員に対してどういう言葉を語りかけているのか、一度じっくりと考えてみていただきたいと思います。
(人材育成社)