「うちの営業は他社が捨てたものまで拾ってしまいます。全く利益が出ないような仕事を引き受けて、喜んでいます。つまり、営業数字を上げることだけに注力しているんです」
これは先日、営業のコンサルティングの相談にいらした企業の経営者から伺った言葉です。そして、この経営者は続けて次の話もしてくれました。
「企業として利益を追求することは当たり前のことなので、それを改めて営業に言うまでもないことだと思っていたんです。それがいけなかったのかもしれませんが、遅ればせながらそれを理解させないと、とんでもないことになってしまいそうです」
この話を伺っていて感じたのは、改めて「営業の(本来の)使命を理解していない営業パーソンが意外にも多い」ということです。
営業の使命とは、自社の商品やサービスをお客様に提供することによってお客様の問題や課題を解決し、お客様に満足していただくことであり、その対価は売上となり利益になります。
つまり、営業の一義的な使命とは、あくまでも「利益を追求していく」ことなのです。
もちろん不当な利益を得ようとすることは論外ですから、顧客の満足度を上げたうえで、適正な利益を上げることが求められることになります。
営業パーソンであれば、当然この理屈を理解しているものだと考えがちですが、冒頭の例のようにそれを知らぬまま営業活動をしている人が案外多いのも現実なのです。
このように売上だけを追いかけて利益を全く考えなければ、いつも忙しくしているけれども結果が伴わない「貧乏暇なしの営業パーソン」になってしまいかねません。
貧乏暇なしの営業パーソンにはいくつかの特徴がありますが、一つには「お客様からの要望は全部引き受けてしまう」ということがあります。
その結果、「お客様からの要望なので、何とかしてほしい」というフレーズで社内の他部署にも無理難題を押し付けたりします。さらには、いつも「忙しい」という言葉を頻発し、遅くまで残業をしたりするので、結果的に周りを巻き込んで貧乏暇なしにしてしまうことさえあるのです。
営業には本来の使命を意識しつつ、たとえお客様の要望であっても総合的に判断して利益につながらないと判断される場合には、勇気をもって断るということも大切なことなのです。
もし、あなたの会社に冒頭の例のような営業パーソンがいるのなら、一度ぜひ売上と利益についてじっくり話し合ってみることをお勧めします。