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第1,100話 「いただく」と「くださる」の使い分けを改めて考えてみる

2022年02月23日 | コミュニケーション

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

新入社員フォロー研修や、入社してからの経験年数が少ない若手社員を対象にした研修を担当させていただく際に、必ずと言ってよいくらい受講者から挙がるのが、敬語の使い方の難しさです。敬語をはじめとして言葉遣いについては、新入社員の研修の際にも練習をしているはずですが、実務についたからこそ感じる疑問がたくさんあるようです。

疑問の具体的な内容を聞いてみると、「敬語を使い慣れていないと、こんな細かい点まで疑問に感じるのか」というような微笑ましいものから、完全に間違っているものまで実に様々出てきます。そういうときには、「間違ってもよいからどんどん使ってみることで、一つずつ身に付けていくこと」がいかに大切なのかということをあらためて認識することが多いのです。

しかし、社会人歴が40年近くなってきた私自身も、最近改めて使い分けが難しいと感じるものがひとつあります。それは「いただく」と「くださる」です。たとえば、「ご連絡をいただきありがとうございました」と、「ご連絡をくださりありがとうございました」とするのと、どちらが適切な表現なのかということです。

これまで様々な人から受け取ったメールを改めて確認してみると、このような場合には「くださる」よりも「いただく」を使う人の方が圧倒的に多かったのですが、では実際のところ、どちらが適切なのでしょうか。私自身は、これまで「いただく」は「もらう」の謙譲語、「くださる」は「くれる」の尊敬語であるという程度に考えていました。そのため、どちらであっても相手に対しては少なくとも失礼な表現ではないのではないかという程度に考えていましたが、この際もう少し明らかにしてみたいと思い、いろいろと調べてみました。

まず、文化庁日本語国語研究所の 『日本語の研究』第3 巻2 号2007 .4,1〔研究ノート〕「〜てくださる」と「〜ていただく」について 金澤裕之 によると、以下のとおりです。

「いただく(もらう)」は自分が相手にしてもらうのであり、 「くださる(くれる)」は相手が自分にしてくれるのです。行為の主体が逆になり、 行為の方向が反対になります。自分なのか、相手なのか、どちらを行為の主体として表現するかの違いということです。

また、「近年「OC (=相手) が、△ △ していただく」表現が好まれつつある背景には、こうした状況において心理的に「~てくださる」が使いにくくなっているため、それに代えて「~ていただく」を使用することにより、自身の側で感じる「ありがたさ」だけに焦点が当てられて相手側と直接関わる(意識を持つ) ことなく事態を終了させることが可能となるというところに、問題のポイントがあるのではないかと推測される」ともありました。

上記によれば、主語を相手とする行為の場合は、「くださる」が正しいわけですから、「ご連絡をくださり、ありがとうございます」が正しいということになります。しかし、「ご連絡をいただき、ありがとうございます」であっても、それを受け取った人が不快な気持ちになるわけでもないと思いますし、「くださる」「いただく」のどちらを使っても相手に対して失礼にあたることはないのではないかと私は考えています。

つまりは、あるべき姿や正しい使い方を把握することはもちろん大切ですが、要は状況に応じて適切に使い分けることが一番大切だということなのではないでしょうか。

とはいえ、実際のところ「状況に応じて適切に使い分ける」ことこそが、実は一番難しいのかもしれません。そのためには、少しずつでも構わないので一つ一つの事柄をしっかり意識して、きちんと選択して使い分ける練習が必要です。まずは、前述のような身近な言葉遣いからトライしてみるのはいかがでしょうか。

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