「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。さて、いつもはビジネスに関わる内容をお届けしているこのブログですが、ステイホーム週間に合わせて「お薦めの本」を紹介しています。3冊目はちょっと渋い本です。
「印刷に恋して」 松田哲夫 (著)、内澤旬子 (イラスト)
実は、この本をお勧めすることには、ためらいがありました。少々マニアックすぎるからです。Amazonの「商品の説明」には次のように記されています。
「活版、手動写植、オフセット、グラビアなど多彩で多様な印刷の現場をルポルタージュ。そして内沢旬子のイラストが、ルポを的確に補完する。」
たしかに、印刷自体に興味が無ければ、誰も読もうとは思わないかもしれません。
それでも、ぜひ読んでほしいと思う理由があります。個人的な、多少センチメンタルな理由ですが。
誰でも子供の頃、「好きだった本」があったと思います。絵本でも物語でも図鑑でも漫画でもなんでも良いのですが、その本のことを記憶の底から引っ張り出してみてください。すると、その内容(お話や絵など)はもちろんですが、手にした時の形や大きさ、手触り、重さをなんとなく思い出さないでしょうか。小さかった頃に本が好きだった人なら、なんとなくわかってもらえると思います。
私は仕事で印刷工場を訪れたことが何度かあり、稼働する印刷機を間近に見る機会に恵まれました。子供の頃の記憶と相まって、印刷のプロセスや印刷機の面白さに惹かれてしまいました(もちろん「恋」とまでは言いません)。
「印刷に恋して」は、筑摩書房の編集者であった著者(同社の専務を経て現在は顧問)が、印刷会社の仕事を事細かに解説するルポルタージュです。印刷機の構造やデジタル印刷の技術の解説まで、詳細でありながら本当にわかりやすく書いてあります。
そして、この本のもうひとつの魅力はイラストレーションです。いや、著者には大変申し訳ないのですが、この本はイラストレーションが主役であると言って間違いありません。60枚のイラストレーションは細密でありながら生き生きとしており、本当に素晴らしいです。写真以上に「真実」が伝わってきます。
現在は電子書籍もかなり普及しており、印刷物は徐々に減ってきています。それでも、私たちの記憶の中の「本」がある限り、紙の本が無くなってしまうことはないでしょう。