「99人以下の中小企業の社員が辞めずにイキイキ働くようになる」を実現する人材育成社です。
「46.9%」、これは、この春に入社した新入社員のうち「今の会社に何年働くと思うか」との質問に対して、「10年位まで」と答えた人の割合です。
また、今の会社で長く働きたくと思わない理由としては「キャリアアップしたい」が29.7%であり、「ライフステージに合わせて働き方を変えたい」の44.4%に次いで多かったとのことです。(マイナビによる調査結果)
実際、弊社が新入社員や新入社員フォロー研修、また若手社員を対象にした研修を担当させていただくと、この調査結果のように受講者の「キャリアアップしたい」という言葉をよく耳にします。
こうした話を聴くたびに、「キャリアアップをするとは、具体的にどういう状態になることを想定しているのだろう?」と思っていましたので、実際に何度かそのように質問したことがあります。
そうすると、大体は「転職して様々なスキルを身に着けること」、「専門性を身に着けること」、「今の給料よりも高い給料をもらえる会社に移ること」、「権限を与えられるような仕事に就くこと」などの答えが返ってきます。
しかし、これらは本当に「キャリアップ」することなのでしょうか。
「キャリアアップ」という言葉にはいろいろな定義がなされているようですが、私は主に「業務遂行能力を向上させることによって経歴を高めること。また、それによって高い地位や高給職に就くこと」だと考えています。
ですから、仕事そのものは変わらなくても、その質を上げること自体はキャリアアップの一つだと考えています。仮に雇用形態が正社員からフリーランスになったとしても、その結果として仕事の質やレベルを上げたり、自身がやりたい仕事ができたりするのであれば、それはキャリアアップと言えます。
このようなことから、私は「キャリアップ=転職」ではないと考えています。
一つの組織の中で業務遂行能力を高めること。また、それによって専門性を高めることもキャリアップです。そのため、入社間もない新人社員が「キャリアップは転職すること」だと考えて、短期間で退職するということになってしまうとしたら、それは本人のみならず採用している企業にとっても非常に大きな損失になってしまいます。
そのようなことにならないためにも、経営者の皆さんにお伝えしたいことは、「転職されてしまったらどうしよう」と心配するのではなく、近年の若手の志向の特性を踏まえ、社内で着実にキャリアップできる仕組みを整えていただきたいということです。
具体的には、若手社員が今の仕事で経験を積み重ねることによって、今後どのようなスキルアップが可能なのかを具体的に示すことが、まず必要です。
その前提としては、規模が小さい中小企業であっても定期的なジョブローテーションや異動の仕組みを整えること。また、人事評価制度を明らかにし、評価結果を的確に本人にフィードバックすることなどの仕組みを構築することが必要になります。
もちろん、これらの仕組みを構築することは一度にできることではないと思います。
しかし、社長が「今後、時間はかかってもキャリアップのための仕組みを作っていく」ということを声に出して社員に伝えること、まずは、そこから行っていただきたいと考えています。