今年の春、蜷川幸雄の演出で話題になったシェイクスピアの「ヘンリー四世」ですが、フォルスタッフを吉田鋼太郎が、ハル王子を松坂桃李が演じていました。(残念ながら私は観ることができませんでした。)
この芝居のPR動画※で蜷川氏自身が語っているように、「ヘンリー四世」はとても面白い作品です。
以前に私が観たのは1982年に劇団昴が上演したもので、フォルスタッフ役は故・小池朝雄さんでした。小池朝雄さんといえば、刑事コロンボの声であり、水戸黄門などの時代劇でよく悪役を演じている役者さんです。
芝居の中心人物であるフォルスタッフは太っちょで、だらしなくて、臆病なくせに大口をたたく老騎士です。
物語の前半は笑わせどころが満載で楽しいのですが、後半は一転して深刻なムードになります。
そして、死屍累々となった戦場でフォルスタッフが吐く有名なセリフが「What is that honour? air・・・(名誉とはなんだ? 空気だ・・・)」です。名誉とは実体を伴わないただの言葉なのだ、という意味を含んでいます。
このシーンでは小池朝雄さんが抜群に上手くて、まさに戦場に佇むフォルスタッフそのものでした。
さてこのセリフ、実は最近の管理職研修でたまに耳にする言葉に少し重なる気がしています。
管理職になりたくない人が増えているという話は以前も書きましたが※、実際に昇進した人からも「収入は減るし、仕事はものすごく増えるし、不満は口にできないし・・・」という愚痴を聞くことが多くなりました。
フォルスタッフではありませんが、「What is that manager ? air・・・(管理職とはなんだ? 空気だ・・・)」という感じです。
組織がある程度大きくなれば、管理する人は必ず必要になってきます。
できれば管理職には大幅な昇給とそれなりの権限を与えてほしいものです。
そうしなければ管理職になりたい人がどんどん減り、やがて組織が維持できなくなってしまうでしょう。
(人材育成社)
※「13.5%の課長は「ショムニ」で働くことができるか?」 http://blog.goo.ne.jp/jinzaiikuseisha/e/13d8ef59eec0e502e78064bbc2968d1c
「ヘンリー四世、PR動画」 http://www.youtube.com/watch?v=rP0CfOLIRa0