「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
多くの企業では新入社員(以下新人)の研修を終え、今週からそれぞれの職場へ配属しているタイミングだと思います。毎年、新人の配属後数週間~数か月が経過すると、OJTを担う先輩社員や上司から様々な声が聞こえてくるようになります。
たとえば「新人に仕事を教え始めたが、指示したことが伝わらない。その結果、とんでもないことになった」、また、「2人の新人が配属されたが、1人は優秀だと感じるが、もう1人は全く話が通じない」などです。いわゆる「打てば響く」人がいる一方で大器晩成型の人もいます。短期間でレッテルを貼ってしまうようなことはしないでいただきたいと思うのですが、このような話を聞くと現場で苦労されている様子が伝わってきます。
また、コロナ禍の今、新人が配属されてもすぐにテレワークとなってしまい、仕事の指示もオンラインで行うことも多いです。そのため一人一人がどういうタイプなのかを見極めるのも難しいことでしょう。
これに関して、先日以前コンサルティングを担当させていただいていた企業のA社長から、参考になる素敵な話を伺いました。
A社長の会社は社員数が200名強の規模ですが、社員数は毎年少しずつ増えていて5年前からは定期的に新人を採用しています。新人教育はOJTが中心なのですが、特筆すべきはA社長自ら新人を対象に1週間に1回、勉強会を実施しているとのことです。そしてその時間は、仕事上のスキルや知識を伝えるのではなく、ともに論語(孔子)や韓非子、荘子、老子などの書物を読み解くことにあてていて、少しずつ読み進めていらっしゃるのだそうです。
そうした時間を新人と共にすると、仕事ではすぐには表れない一人一人の素顔が見えてくるのだそうです。たとえば、1人ずつ順番で音読したときに、読めない字に行き当たることがあります。そうすると、読み方を質問する人がいたり、一生懸命考えたりする人がいる一方で、読めないことをごまかしたり、適当にすっ飛ばして読んだりする人もいるのだそうです。
そういう時間を毎週重ねていると、各々がどういう人なのか、何を大切にしているのかなどの本質的なところが見えてくるとのお話でした。
これを聞いて感じたのが、仕事を教える側からすると、目の前の仕事をミスなく効率よく進めることのみに重きをおいて新人を評価しがちです。しかしそれだけで判断するのはやはり早急だということです。
今後社員として一緒に仕事をしていく上では、仕事を少し離れた一人一人の人間としての本質的な部分を知ることはとても大切です。それを知るためにはこの会社のように仕事にはすぐに直接つながらなくても、このような時間を共有することが大切だということです。
昨年の春に入社した新人からは、入社直後に緊急事態宣言が発令されて即テレワークになってしまい、この1年間で出社した日数は一月にも満たないという話を少なからず聞くことがあります。また、現在もコロナ禍が続いていることから、会社によっては今年も同じような状況になるケースが少なくないと思いますが、オンラインでのやりとりのみでは、仕事上の要件のみに終始してしまいがちです。
ぜひ、経営者や上司、先輩社員の皆さんには新人の人となりを理解するためにも、先に紹介したA社長のような仕事から少し離れてやり取りを行う機会を設けるように心がけていただきたいと思います。