「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
弊社が研修を担当させていただく際に、テーマにかかわらず研修の冒頭で受講者の方々に、受け身の姿勢でなく主体的に研修に取り組んでいただくことの意義や効果をお話させていただいています。そうすると、たとえ自ら参加を希望していなかった研修であっても、またオンライン研修であっても、多くの場合、受講者は質問に対して積極的に答えてくれたり、グループ討議にも積極的に参加をしてくれます。
その結果、研修が講師から受講者への一方通行の情報伝達にならずに、双方向でやり取りをして進めることができますので、研修が活気づくとともに、受講者自身にとっても得られるものが多いと感じています。
しかし、先日私が担当させていただいたある研修は、同じ企業グループ内の3社からそれぞれの社員が参加されていたのですが、前述のように主体的に参加する意味等を冒頭でお話しても、その後自ら積極的に手を挙げる人もおらず、受け身の姿勢が見受けられました。そこで、研修の途中で、挙手を募るのではなくこちらから受講者を指名して答えてもらうように変更しました。そうしたところ、それにはきちんと答えていただけましたので、特に研修内容が難し過ぎたり、話を聞いていなかったりいうことではなかったようでした。
では、なぜこの研修では主体的に参加する人がいなかったのでしょうか?いろいろな理由が考えられると思いますが、一つには同じ企業グループとはいえ、他社の社員のことを意識し過ぎてしまったということがあったのかもしれないと思っています。
あくまで想像ですが、「発言してもしその答えが違っていたら、○社の社員はだめだなと思われてしまうのではないか」などということを気にしていたのかもしれません。
研修担当者がおっしゃるには、このグループ会社では研修に限らず会議などでも、自ら積極的に発言する人は普段から少ないのだそうです。それには何らかの背景があったことが想像されますが、確かに発言することが難しい関係だったり、発言すると何か厄介なことに巻き込まれて損をしてしまうようなことがあったりすると、発言を控えるようになってしまいます。
そして、そうした状態が続いた結果、徐々に「積極的に発言しない」という同調圧力が働いて、それがある種の企業風土となってしまっているのかもしれません。同調圧力とは、集団の中で多数意見が暗黙のうちに少数意見を従わせるよう強制する圧力のことです。もしかするとこれが研修にまで尾を引いて、積極的に参加しようとする姿勢を控えるように働いたのかもしれません。
企業の風土や空気というものは、長い時間の積み重ねで形作られることが多いことから、これを変えていくのは簡単ではないことが多いのです。
しかし、たとえばこうした同調圧力が働いてしまうと、何か問題が起きた場合であっても発言が難しい雰囲気になってしまいかねません。それを避けるためにも、まずは全社で発言すべき時にはきちんと発言することの大切さを共有できると良いと思います。そのためには先ず経営者自身がそれを認識することから始める必要がありそうです。わが社の社員はおとなしい、あまり話さないなと感じている経営者の皆さん、道のりは長いかもしれませんが、先ずは自らが一歩を踏み出していただきたいと思うのです。