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「全体教育」か「選抜教育」か

2013年10月06日 | コンサルティング

企業の人材育成において、誰を教育の対象者とするのか、全体に対して行うのか、選抜者のみに行うのか、どちらを重視するのかは古くて新しい議論です。

厚生労働省が毎年行っている「能力開発基本調査」(平成24年)によると、正社員では、「全体教育」を重視する企業は57.0%( 前回55.3%) に対し、「選抜教育」を重視する企業は41.8%(前回43.3% %)で、全体教育を重視している企業が多いことがわかります。

また、今後の方向性としては、「労働者全体の能力を高める教育訓練」を重視する企業割合が高くなっていくようです。

私自身も、この数字が示すとおり、一昔前は「選抜教育」に関する研修の相談や、他社の選抜教育の動向についての情報を求められることが多かったと感じていますが、最近では滅多になくなりました。

「全体」か「選抜」か、どちらを重視するにしても一長一短ありますが、私自身は全体教育の有効性を感じています。理由は、全体教育によって社内の「共通言語」を獲得できるからです。

例えば、「問題発見・課題解決」スキルを学ぶ場合、多くの社員が教育を受けていれば、そこに共通言語が生まれます。

通常、組織の問題を発見したり解決する場合、一人で取り組むことはありません。

また、問題の原因を追究したり課題を設定する場合、一つの職場だけで解決できないこともあります。前工程や後工程の部署の協力も得て、取り組まなければなりません。

その際、一人でも多くの社員が「問題発見・課題解決」の手法を知っていれば、組織全体の問題として取り組むことができ、自ずと解決までの道のりも短くすることができます。

このような話をすると、「全体教育の良さは十分わかっているけれど、予算がない。限られた予算で行うのであれば、選抜した人だけにせざるを得ない」、「そもそも本当に全体教育を行っている企業があるのか?」などと思われた方も多いと思います。

確かに、全体教育に取り組んでいる企業は、先の調査のデータが示すほど実感としては多くはないです。しかし、実際にあるのです。

私が担当させていただいているある企業は、昨年度483名が「問題発見・課題解決」研修を各一日間受講しています。 

その割合は、全社員数の81%です。(100%でないのは、出向者がいるため)。さらに、この会社の素晴らしいところは、今年度も引き続き、同じテーマの研修を第2弾として行っているところです。

このように、8割の社員が同じテーマに関して深堀りをしていくと、自ずと共通言語は生まれやすくなります。そして共通言語を持つことが企業風土となり、やがて企業文化となっていくのです。選抜者だけを教育対象とするのでは、やはり共通言語は生まれにくいのではないでしょうか。

全体教育の有効性は、このようなところにあるのだと思います。

 (人材育成社)


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