では昨日の続きです。
クラスの偏差の一覧表を見ると、小林くんは数学が平均点より30点上、佐藤さんは英語が平均点より20点上です。ちょっと見、小林くんの90点の方が、格が上な感じがします。
でも、本当に「稀な」度合いが高いのはどちらでしょう。
それを知るために、それぞれの科目のバラツキを偏差の合計値で表現してみます。ところが現在のままでは偏差を合計してもゼロなので、バラツキをあらわす数字としては使えません。
そこで偏差のマイナスを取り払って、数字の大きさでだけで勝負します。
「マイナスを取る」と聞いて絶対値を思い出された方もいらっしゃるでしょう。しかし、絶対値は数字の1と紛らわしい上に、扱いが面倒なので使いません。その代り、偏差を2乗します。数字が大きくなりますが、マイナスは無くなります。
次に、偏差の2乗を全部足します。これを偏差平方和と言います。
英語は920、数学が2,882ですね。
さらにそれを、クラスの人数(10人)で割ります。つまり「偏差平方の平均」を出すわけです。
英語92、数学288.2ですね。
この値を「分散」と言います。
分散が大きいほど、バラツキが大きいということです。
次に、その「分散」をルート( √ )にして2乗を元に戻します。
「だったら最初から2乗しなきゃいいのに」という声も聞こえてきそうですが、マイナスを取り払うために少し遠回りしたと思ってください。
この(√分散)を「標準偏差」と言います。
英語は√92=9.6、数学は√288.2=17.0です。
では、英語の標準偏差9.6に対して佐藤さんの偏差20点と、数学の標準偏差17に対して小林くんの偏差30点、を同じ土俵に乗せて比べるにはどうしたらよいでしょうか。
答えは、「標準偏差で割る」です。すると、数値の大きさは無関係になります。
佐藤さんの英語は20÷9.6=2.083、
小林くんの数学は30÷17=1.765
となります。
佐藤さんの数字の方が少しだけ大きいです。
これは、佐藤さんの90点の方が小林くんの90点よりも、「稀な値」だということを意味しています。
さて、2.083とか1.765とか細か過ぎてピンとこないですね。
そこで、両方とも10倍して50を足しちゃいましょう。
佐藤さんの英語 2.083×10+50=70.8 ・・・約71
小林くんの数学 1.765×10+50=67.6 ・・・約68
実はこれが偏差値です。
同様に全員の科目ごとの偏差値を計算したものが以下の表です。
なぜ10倍して50を足すなんてことをするんだ?と疑問を持たれると思います。
その理由は、見る人が理解しやすいようにするためです。テストの満点は100点が多いですし、50点というとちょうど真ん中のイメージだからです。つまり、偏差値とは、(10倍して50を足すという)操作を加えた「わざとらしい値」なのです。
じゃあ、10倍して50を足す、じゃなくて、たとえば15倍して100を足しても良いのかと言えば・・・そうです。
(点数-平均)÷標準偏差×15+100
これは、知能指数(ウェクスラー式知能検査による偏差IQ)を計算する式です。
さて、偏差値の出し方が分かったところで、次回は正規分布の話に戻って最終回(?)となります。
(人材育成社)