日本の会社はミドルマネジメント(中間管理職層)が支えていると言われてきました。とりわけ課長の役割は重要で、トップダウンでもボトムアップでもなく、「ミドルアップダウン」であると言う人さえいます。
課長は、経営層の指示や意向を部下に伝えると同時に、部下から上がってくる様々な情報を経営層へ伝える役割を担っています。さらに、他部署との調整や社内外の組織との交渉窓口でもあります。
このように、課長は組織における「上・下・左・右」の関係を構築し維持する重要な連結点です。実際に、多くの課長は仕事の重圧の耐えつつ、残業代も出ないのに深夜まで仕事に没頭しています。その働きぶりはまさに超人のようです。
しかし、「課長職を命ず」という辞令を受け取った瞬間に、誰もが急に超人になれるわけではありません。いや、絶対になれません。ある仕組みが必要です。
係長、課長代理、課長補佐、主任、グループリーダー・・・呼称はともかく、課長を支えるポジションに優れた人材がいることが、超人的な活躍をする課長の必要条件です。
係長の役割は、実は課長以上に大変です。課長が意思決定しやすいように資料を作っておく、関係者を集めた会議を設定する、課長の手が回らなかった仕事をフォローする、そして課長のミスを尻拭いする!です。「課長が決め・係長が実務をこなす、課長が収め・係長が処理する」という体制が、課長を超人にしているのです。
大抵、すごい課長の陰にはすごい係長がいます。「A課長の陰に切れ者B係長あり」、「鉄壁のC課長・D係長ライン」などといった名コンビのうわさ話(・・・と言っても、本人が吹聴しているのですが)を以前はよく耳にしました。
また、係長も課長を助けることで実務に精通し、他部署とのパイプがつながり、少しずつ課長になる準備ができていきます。
しかし15年ほど前から、人員削減と組織のフラット化の影響もあって、こうした名コンビの話を聴くことが少なくなりました。
十分な係長経験もなく課長になり、しかも自分をサポートしてくれる係長もいないとなれば、かなりしんどいことは間違いありません。
組織が大きくなればなるほど、課長は係長のサポートを受けながら経営層の意思を係長に伝える、係長は課長の仕事の実務部分を引き受けることで課長から学ぶ、というプロセスが必要になってきます。
つまり、課長の元で係長を経験するということは、正統的な人材開発のルートなのです。
そして、30代、40代という働き盛りの人材が通る「係長→課長」というハードな過程で選抜(あるいは自然淘汰)され、経営層にふさわしい人材が残っていきます。
こうしたことは、終身雇用(長期安定雇用)でなければ実現できませんし、毎年コンスタントに将来の係長候補者を採用していく必要もあります。
会社の根幹を支える人材を手に入れるには、手間と時間がかかるのです。
(人材育成社)