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部下育成、性善説か性悪説か

2018年10月28日 | コンサルティング

会社設立後10年未満で売上高が30億円近いという急成長中の企業の話です。上司が部下に対するマネジメントにおいて、たとえ相手が新卒であったとしても「あなたの考えたとおりに自由にやってみてください」 「わからなければ私なりの考えは持っているので聞いてください。その上で参考にしてもいいですし、自分の思うやり方でやってみても良いです」という手法をとっているそうです。

私は率直に素晴らしいと思いました。こうした上司の姿勢は「性善説マネジメント」と言えるかもしれません。

しかし、一般に企業は社員を「性悪説」でとらえる傾向があります。昨今の大企業の不祥事やコンプライアンス強化の風潮を見聞するにつけ、やはり「性悪説」が基本でなければならないのかと思ってしまいます。

「性善説」と「性悪説」という二分法以外の考え方を調べてみたところ、告子(こくし)の「性白紙説」というものがあることを知りました。

「性白紙説」では「人の性(さが)には善もなく不善もなく、明君が現れると民は善を好むようになり、暗君が現れると民は乱暴を好むようになる、性が善である人もいれば不善である人もいる」と説いています。

告子は中国戦国時代(紀元前4世紀頃?)の思想家だそうですが、同時代の孟子(性善説を説いています)に比べると全くの無名と言ってよいでしょう。たしかに「性白紙説」について考えてみると、告子が無名である理由がわかる気がします。ものごとに白黒つけず「どっちもあり」と言っているからです。

さて、冒頭の会社が実践している「性善説マネジメント」ですが、私が素晴らしいと思ったのは、この会社が、新人も含めてそういうマネジメントが通用する(優秀な)人材を採用できたことです。

「あなたの考えたとおりに自由にやってみてください」 こう言う上司の元できちんと仕事ができる能力を持った人材は、めったにいないと思います。逆に、自由にやれと言われて100%サボりまくる人もめったにいないでしょう。

そう考えると、人の性(さが)は「性善説」と「性悪説」の間に幅広くばらついていると考える方が自然なような気がします。勝手な妄想ですが、善と悪の中間あたりが最も多く、それを頂点として両極端に行くにつれ減っていく山型の分布になっているのではないかと思います。

簡単に言えば「性正規分布説」ですね。少なくとも告子の「性白紙説」よりも具体的ではないでしょうか。

「性正規分布説」に基づいて上司がマネジメントを行おうとすれば、すべての部下の性(さが)の値(偏差値?)を把握しておく必要があります。それには(まさか試験を実施するわけにもいきませんから)、普段から人を観察する眼を養っておくしかありません。

毎度繰り返しになりますが、観察眼を養うためにはしっかりとしたトレーニングが必要です。自己流は絶対にダメです。

能力とやる気のある人には自由にやらせ、サボりがちの人にはやり方を教えてチェックする。それが部下に対するマネジメントの本質です。

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