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本当のコミュニケーション能力とは

2015年06月07日 | コンサルティング

企業研修や公開セミナーのテーマで最も多いものは何かと問われたときに、真っ先に頭に浮かぶのは「コミュニケーション」です。「マナー」や「コーチング」、「プレゼンテーション」も多いのですが、それらはいずれも広い意味で「コミュニケーション」のカテゴリーに分類できます。

コミュニケーションは、単なる言葉や非言語(表情や態度など)のやり取りだけで成り立っているわけではありません。

誰しも、「言葉の意味は分かるのだけど話が通じない」という経験をしたことがあると思います。言葉はもちろん、ジェスチャーも使って一所懸命コミュニケーションを取ったつもりだけれど、上手く行かなかった・・・。内田樹氏(神戸女学院大学名誉教授)のブログに非常におもしろい事例がありました。

内田氏がフランスの地方都市でマグカップを買ったときの話です。レジの女性店員に言われた言葉の意味は分かったのだけれど、話が上手く通じなかったそうです。以下、引用させていただきます。

「・・・レジの上に身を乗り出して、ひとことひとことゆっくり噛みしめるように「さきほど、僕に何を訊いたのですか?」と問いかけた。
すると店員もゆっくり噛みしめるように「郵便番号を訊いたのだ」と答えた。「なぜ、郵便番号を?」と重ねて訊くと「どの地域の人がどんな商品を買っているのかデータを取っているのだ」と教えてくれた。郵便番号(code postal)というのは基本的な生活単語である。もちろん私も知っている。でも、それがスーパーのレジでマグカップを買うときに訊かれると、聞き取ることができない。ふつうレジで訊かれるはずの質問のリストの中にその単語が存在しないからである。」

そして、こうなってしまった原因を次のように述べています。

「一方において意味が熟知されたこと、当然相手も理解してよいはずのことを口跡明瞭に発語しても、相手が聞き取ってくれないことがある。文脈が見えないからである。「スーパーのレジでは買い物に際して顧客情報をとることがある」という商習慣を知っていれば、文脈がわかる。知らなければ、わからない。」

さらに、「(内田氏が)あえてレジに身を乗り出して郵便番号の理由を訊いたこと」そして、「その店員が、フランスの商習慣になじみのない外国人であることを察知して、私のためにこの説明の労をとってくれたこと」こそが本当のコミュニケーション能力であるとして、「コミュニケーション能力とは、コミュニケーションを円滑に進める力ではなく、コミュニケーションが不調に陥ったときにそこから抜け出す力だということである。」と締め括っています。

言葉の意味が分かっても話が通じないのは、お互いが異なる文化の内側から会話をしているからです。自分が所属している組織(勤務している会社や業界、職種など)が異なれば、コミュニケーションが上手く取れないことは十分にあり得ます。

私たちは、お互いに異なる文脈を持つ「文化」という見えないバリアを身につけて生活しています。内田氏の経験では、日本とフランスという大きなギャップがあったからこそ、そのバリアをはっきり認識できたのでしょう。

日本人同士の場合、そこまではっきりしていないからこそ、ややこしいことが起こるのかもしれません。

そこで、バリアを機能しにくくするために、たまには日本人同士でも英語で会話をしてみてはどうでしょうか。

特に、社内の会議では英語を「公用語」にすることをお勧めします。その方が文脈の違いによる誤解が生じないし、結論も明確になります。

そして、何より偉い人の話が思い切り短くなるので、会議が早く終わること請け合いです。

(人材育成社)

コミュニケーション能力とは何か? (内田樹の研究室)


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