「研修って本当に効果があるの?」研修会社をやっていると何度もこのセリフを言われます。言い換えれば「形のない、品質の良し悪しがわからない、効果さえはっきりしない研修などというものに金を払うのは疑問だ」ということです。「効果」というものを企業の業績すなわち「利益」とするならば、まったくその通りです。
研修に関する評価モデルとしては「カークパトリックの4段階評価」が知られています。
Level1 (Reaction)は研修終了後に受講者の好感度を評価するもので、アンケートが用いられます。研修内容や講師について「満足した」「役立った」等が多ければ効果があったとするものです。
Level2 (Learning)は研修で得た学習成果による評価です。研修後のテストなどで理解度や習得度を測定します。
Level3 (Behavior)は研修終了後職場に戻った後で、研修で学んだ内容を生かしているかといった職務行動の変化を、上司による行動観察などにより評価します。
Level4 (Results)は研修を実施した結果、企業の売上や利益にどれだけ貢献できたかを評価します。それにより投資対効果(ROI:Return on Investment)を測るわけです。
研修業界ではこの「カークパトリックの4段階評価」が唯一の公認(?)評価モデルとして広く利用されています。たしかに技能面や知識面だけにフォーカスすれば、このモデルは役に立ちます。
たとえば、工場の労働者に作業効率をアップさせる技術を教え込めば、生産ラインの稼働率は上がり、不良率も下がります。その結果、製品の生産量は増え、品質は上がるので利益の増加に貢献することは間違いありません。投資金額と利益額の増加分も比較的はっきりしますからROIの計算も十分可能です。
その他にも公的資格が必要な分野ではLevel4までの評価は容易です。法律関係のコンサルティング会社で、従業員を学校に通わせて弁護士資格を取らせることを「研修」とすれば、かなりはっきりしたROIが計算できるでしょう。
というわけで「研修って本当に効果があるの?」という問いに対しては「技能教育や専門教育では効果があります。投資対効果も計算できます。」と答えることができます。
しかし、それ以外の研修、特にヒューマンスキル(対人関係能力)に関するものはどうでしょう。リーダーシップ、コミュニケーション力などのヒューマンスキルは、企業の規模、業種、職種に関係なく組織で働くすべての人にとって必須の能力です。
言うまでもなく、ヒューマンスキル研修の成果は測定が難しく、ROIの測定などは不可能に近いでしょう。
しかし、全社員の技術力がアップし、資格取得者が大幅に増えたとしても、社内のコミュニケーションが上手く行かず、パワハラが横行し、メンタルの不調を訴える社員が増えていくようなことがあれば、どんなに優れた技能研修も無駄になってしまいます。
ヒューマンスキル研修を行ってから技能研修を行えば、技能研修の成果は上がります。ヒューマンスキル研修は、研修成果を確実にするための「必要条件」なのです。
「研修って本当に効果があるの?」はい、(必要条件を満たせば)あります!