「できない踊りを一緒に踊ったり、ワインをついだり、芸者になろうと思いました」
これは先日のNHK「SWITCHインタビュー 達人達(たち)」で、俳優の渡辺謙さんからのインタビューの中で京都大学iPS細胞研究所教授でノーベル賞受賞者の山中伸弥教授がおっしゃっていた言葉です。
山中教授は「科学ジャーナルのエディターはほとんど女性。彼女らにファーストネームで呼んでもらおうと、そういう関係が作れないと対等にいけないから」ともおっしゃっています。
ファーストネームで呼んでもらうためには、オープンマインドが役に立つとのことで、彼女らをいかに笑わすか。今日はどのネタにしようとネタを事前に仕込んでいるともおっしゃっていました。
世界に名だたる山中教授が日々IPSの研究に力を注がれているだけでなく、アメリカ人のエディターとの関係構築のために並々ならぬ努力をされているとのことで、びっくりするやら親しみを感じるような、頭が下がるような思いがしました。
さて、多くの会社などでは先週から新入社員研修が続いていますが、今年も弊社が担当させていただいている研修の中で、新入社員から「飲みに誘われたときに、断ることは可能か」という質問が出ました。
質問の背景には、「お酒はあまり好きではないし、さらに年長者との飲み会は気を使わなければならいので可能であれば出席したくない」との思いがあるようです。
言うまでもありませんが「ノミュ二ケーション」によって人間関係が築けることありますし、人脈を広げることもできます。さらに、上司や先輩の仕事のときとは異なった一面を見られることもあります。
このように、飲み会の良さは数え上げればきりがありませんが、「ここだけの話なんだけれど・・・・」というFace to Faceならではの情報を得られることも、とても大きなメリットだと思います。
先の番組で、山中教授はこのようにもおっしゃっています。
「情報のやり取りはインターネットで出来るけれど日本にいたらだめ。向こう(アメリカ)に行って、ワインを飲みながら教えてもらった情報がとても有効。毎月向こうに行くのは情報の入り方が違うから」
デジタル先進国と言われるアメリカであっても、大切な情報はメールではなく、顔を突き合わせてアナログでやりとりされているということです。最近の日本では情報の発信や共有の手段というと、すぐにSNSやグループウェアなどのデジタルツールが最適のように言われていますが、実のところはアメリカであっても本当に大切な情報はアナログでやりとりされているということです。
「オフレコでお願いします」という話は、間違いなく耳元で囁かれるものであって、オフレコの話がSNSやグループウェアを通して発信されるということはないとあらためて思います。
IPS細胞にかかる論文に関しても、他のグループがサイエンスに投稿するとの情報が入り、慌ててセルに投稿したとのことで、タッチの差でこちらが早くできたと思ったところ、サイエンスの方も特例で掲載を早めてしまい、結局は同じタイミングでの掲載になったとのことでした。
いずれにしても、山中教授がもしその情報を得られていなかったら、ノーベル賞をとっていたのはアメリカの研究者になったのかもしれません。
情報はやはり、現場に足を運んで得るものだということです。
(人材育成社)