「やっぱりその道を右に曲がるといいよ。線路沿いをずっと歩けば駅に出るから」
先日、仕事の移動の際に時間に余裕があったので、すぐそばにある私鉄の駅ではなく、ちょっと離れたJRの駅まで歩くことにしました。だいたいの方向は見当がついたのですが、具体的な道順がわからなかったため、歩いている人に尋ねたところ「ここの者ではないから、よくわからないです」との返事。それではと、次はスーパーから出てきて自転車に食料品を積んでいる地元の方と思しき人に同じように道を尋ねました。
私「○○駅まで歩きたいのですが、道順をご存知ですか?」
地元の人「それなら、3つ目の信号を左折すると○○に出る。そこから・・・・」と丁寧に道順を教えてくれました。
お礼を言って歩き始めて1つ目の信号を通り過ぎたところ、先ほどの自転車が目の前に止まりました。
自転車の人「やっぱり3つ目の信号を左折するよりも、○○信金を左折した方がわかりやすいから、そこを曲がって」とわざわざ追いかけてきて、再び道案内をしてくれたのです。
追いかけてきてくれてまでの道案内。「本当に有難い」という気持ちでお礼を言って別れて歩くこと2分位、再び同じ自転車が私の前で止まりました。
「やっぱり○○信金を曲がるよりも少し戻ることにはなるけれど、そこの交差点を右折した方がいい。すぐに線路に出るから、そのまま線路沿いに歩いた方がわかりやすい」と言って立ち去りました。
その方は1度ならず2度までわざわざ追いかけて来て、案内をしてくださったのです。
「今時、何て親切な人なんだろう。見ず知らずの私にこんなにまで親切にしてくれるなんて」でも同時に、「私がよっぽど危なかっしく見えたのかしら?」などと考えながら歩くこと15分。ある意味「おせっかい」とも言えるようなくらいの丁寧な道案内のお蔭で、一度も迷うことなく私は無事にJRの駅までたどり着くことができました。
話は少々変わりますが、最近の企業では、「おせっかい」なまでに部下指導をする管理者がいなくなったと言われて久しいです。
それは管理者自身がプレイヤーでもあるため、部下の育成の必要性は感じていてもその時間をとることができなくなったこと。また、口うるさく言うと部下から嫌がられるのではないかといらぬ遠慮をしてしまうなど、いろいろな理由があげられると思います。
確かに私が若かりし頃には、口やかましい?と思うくらいに一挙手一投足を指導してくれる上司が何人もいました。それこそ、箸の上げ下ろしに至る?くらいの勢いで、事細かな指導を受けていたので当時は少々辟易したものですが、今になって振り返ってみると、「やっぱり有難かった」の一言につきます。
そしてこの年齢になってみると、口うるさく言う方ももちろん大変だったろうなと、当時の上司の気持ちにも思いが及びます。
いつでもどこでも誰にでも、おせっかいな指導が良いとは限りませんが、部下の成長段階に応じて、時には「適切なおせっかい」をやくことは管理者には大切なことではないでしょうか。
そのためには、きちんと「観察」していないと、部下の成長段階が確認できません。
なかなかその時間が取れないんだよと言う方は、まずは1日3分でもいいので、じっと部下のことを観察する。その時間を惜しまず、そして「おせっかい?」なくらいの指導を心掛けていただきたいと思います。
(人材育成社)