「1枚1,900円のリネンシャツが、11時までは2枚で3,000円!」
半年くらい前のある日の通勤途上のこと、とある駅のエキナカの衣料品店での呼び込みに、2枚のリネンシャツを抱えた人達でレジ待ちの長蛇の列ができていました。
「リネンのシャツって人気があるんだな。それにしても、通勤前にあの長蛇の列に並ぶなんて、会社に間に合うのかな?」と思いながら、その場を通り過ぎたことを覚えています。
さて、先日の新聞に近藤麻理恵さんの「人生がときめく片づけの魔法」(サンマーク出版)がアメリカで100万部を突破し、米タイム誌では、近藤さんが「世界で最も影響力のある100人」に選出されたこと、また、ヨーロッパでも本が大ヒットしていることが紹介されていました。
近藤さんが日本のみならず、ワールドワイドに影響を与えていることがわかります。
私もこの本が出てすぐに読みましたが、内容は本のタイトルにあるように「ときめき」がキーワードになっています。モノの片づけをするとき、モノを残すのか捨てるのかを判断する際には、「ときめき」の有無を大切にすることを薦めています。ときめくモノは残し、そうでないものは捨てるとのことです。
この本が世界にこれだけの影響を与えているということは、モノの片づけに困っている人がそれだけ沢山いるということです。「ときめき」を感じて購入したモノであっても、時の流れでやがては色褪せて、捨てる際の基準も「ときめき」によって決められる。何だか、少々皮肉な話のように感じます。
私自身は、身の回りのモノを「ときめき」によって判断しなければならない程多く購入することはないので、「ときめき」で片づけなければならないことはあまりありませんが、私のような人間ばかりだと、きっと日本の経済は潤わなくなってしまうことでしょう。
一方で、冒頭の衣料品店に並んでいた人達の中には、リネンのシャツ自体にときめいているというよりは、「お買得感」にときめいて購入している人も多かったのではないでしょうか。
つまり、本来ならシャツを2枚買えば2倍の値段になるのに、それを1.5倍強で買うことができるからと、シャツそのものの魅力や本当に自分に必要なのか否かは脇に置いて、お買い得感にときめいて購入しているように思えるのです。
そして、経済的には本来なら1900円だったはずの消費が、お買い得感にときめくことで1,100円のプラスアルファの消費を生み出しているわけですから、「ときめき侮りがたし」です。
これはあくまで一つの例ですが、このように考えると日本経済の中で「ときめき」で動いている部分は結構大きいのではないかと思っていますし、今後も経済の活性化において重要なキーワードだと思っています。
さて、先ほど私自身はときめきで判断しなければならないほどにはモノに囲まれていないと書きましたが、実は私は自称「文房具オタク」で、文房具だけはセールに行くと、つい「ときめき」にやられてしまい、必要のないものを買ってしまうことがあるのです。
たかが「ときめき」、されど「ときめき」・・・「ときめき」を侮ってはいけません。
(人材育成社)