共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日はバレエ《くるみ割り人形》初演の日〜キエフ・バレエ団による華やかな『花のワルツ』

2021年12月18日 16時16分16秒 | 音楽
今日はまた、一段と冷え込みました。最高気温も10℃に届かず、いかにも師走らしい寒さとなりました。

ところで今日12月18日は、チャイコフスキー(1840〜1893)作曲のバレエ《くるみ割り人形》が初演された日です。



バレエ《くるみ割り人形》はクラシック・バレエを代表する作品の一つで、クリスマスに因んだ作品であることから毎年クリスマス・シーズンには世界中で上演されています。同じくチャイコフスキーが作曲した《白鳥の湖》《眠れる森の美女》と共にチャイコフスキーの3大バレエとも呼ばれています。

1890年の1月、サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場でチャイコフスキー作曲によるバレエ《眠れる森の美女》が上演されて成功を収めました。これに満足したマリインスキー劇場支配人は同じ年の2月頃に早速チャイコフスキーに次回作を依頼し、オペラとバレエを2本立てで上演したいと提案しました。

この上演形式は当時のパリ・オペラ座に倣ったもので、オペラを公演の中心として、その後に余興のような位置づけでバレエを上演するというものでした。1890年の末に最終的な話し合いが行われ、オペラの演目はチャイコフスキー自身の提案により《イオランタ》に決まり、バレエはドイツのE.T.A.ホフマンによる童話『くるみ割り人形とねずみの王様』をアレクサンドル・デュマ・ペールがフランス語に翻案した『はしばみ割り物語』を原作とする《くるみ割り人形》となりました。

チャイコフスキーは当初このバレエの題材をあまり気に入っていなかったようですが、それでも振付家のマリウス・プティパから最初の指示書きを受け取って1891年の2月には作曲に着手しました。作業は難航したようですが、それでもその年の6月頃には下書きを完成させ、翌1892年の3月頃には管弦楽配置を仕上げました。

そして1892年12月18日、マリインスキー劇場でオペラ《イオランタ》と共にバレエ《くるみ割り人形》が初演されました。この公演は観客には好評だったそうですが、主演バレリーナが演じる金平糖の精が第2幕になるまで登場せず見せ場が少なかったことや、物語が観客の納得のいく形で完結していないと言われたことなどから、新聞評では不評だったようです。

このバレエの音楽で、チャイコフスキーは実験的な試みをしています。それは金平糖の精の場面に、当時開発されたばかりのチェレスタを導入したことです。

当初チャイコフスキーはガラスの音盤を使ったアルモニカという楽器を使うことにしていたようですが、パリ万博で鉄琴を仕込んだチェレスタを見て、早速この発表直後の楽器を新作に採り入れました。チェレスタを導入するにあたってチャイコフスキーはかなり慎重になっていたようで、特にオーケストレーションの天才としてライバル的存在だったリムスキー・コルサコフには絶対に知られないように、チェレスタの開発者に手紙を送ったくらいでした。

そんなエピソードを抜きにしても、このバレエはチャイコフスキーならではの華やかなオーケストレーションが随所に見られ、ロマノフ王朝下での華麗なバレエ文化の爛熟ぶりを彷彿とさせるものとなっています。その中でもクライマックスに登場する『花のワルツ』は、正にチャイコフスキーのバレエ音楽の真骨頂と言っても過言ではありません。

そんなわけで今日はその《くるみ割り人形》を…と言いたいところですが、さすがにバレエ全編となると1時間半くらいの時間になってしまうので、今回はクライマックスの場面である『花のワルツ』の動画を載せてみました。キエフ・バレエ団による、実に美しく華やかな舞台をお楽しみください。


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