今日は大事な説明会があって、厚木市の下荻野という地区に行きました。
1時間ほどの説明会を終えて最寄りのバス停のところまで行くと、道を挟んだバス停の向かい側に
《ばってん》という豚骨ラーメン店があるのが目に留まりました。私はそこまで豚骨ラーメンに愛が無いので特段気にも留めていなかったのですが、道沿いにある看板のところに
こんなものが立てかけられていて、それに釘付けになったのです。
この看板に書かれている『駅前にあった屋台タンメン』というのは、かつて本厚木駅北口のタクシー乗り場のところに夜中に出ていたラーメンの屋台で出されていたタンメンのことです。
今から24〜25年前、まだ私が20代の頃に終電近くに都内から小田急線で本厚木駅に戻ってくると、タクシー乗り場の横にあるスペースに『タンメン』と書かれた真っ赤な看板を掲げた白い軽トラの荷台に簡易なキッチン的なものを搭載した屋台が出ていて、その上で白髪頭のおじさんが一人で黙々とタンメンを作って提供していました。タクシー待ちをしていると横からタンメンの美味しそうな香りが漂ってきて、夜中なのに我慢できなくなって思わず列を離れてすすって帰ったことが何回あったことか。
その後、名物屋台はいつの間にか駅前に現れなくなってしまいました。一時は
「無断で営業していたのを摘発された」
「地元のヤクザに嫌がらせを受けた」
といった様々な憶測が飛び交っていましたが、真偽のほどは誰にも分からず、そのまま何年もの時が経過していたのです。
その『駅前タンメン』がこの店にある!もう、矢も盾もたまらず道路を渡って店に入りました。
カウンターのメニュー表で間違いないことを確認してオーダーすること暫し、遂に20年以上ぶりに再会を果たしたのが
これです。
透き通った白湯スープの中にあるのはちょっと縮れ気味の細麺と玉ねぎのみじん切りのみ!正に、駅前広場の屋台で食べたあのシンプルで香り高い『駅前タンメン』が、今私の目の前に…。
およそ四半世紀ぶりの対面の感動に打ち震えそうになりながらスープを一口…タクシー待ちの寒空の下で味わったあのタンメンの味が即座に甦ってきました。ちょっと泣きそうになりながら麺をすすると、ちょっと薄味めのスープと生玉ねぎの香りが口の中でブレンドされて、実に美味しいのです。
見る人が見たら
「何かつまんなそうなラーメン…」
と思われるかも知れませんが、このあっさり加減が夜中にすするにはちょうどよく、何より日付を跨ぐような時間に食べても罪悪感を感じずに頂けたことが本当に有り難かったのです。
このタンメンには
自家製のラー油が用意されていて、好みでタンメンにトッピングすると
こんな感じになります。ラー油が入ることによって淡白なタンメンにアクセントが加わって、ガラッと味わいが変わります。当時もトッピングはこのラー油と別料金のゆで卵だけ、実にシンプルなものでした。
ノスタルジーに浸りまくりながら昔と変わらないタンメンを堪能して、お会計時にお店の方にお話を伺いました。すると、何とこちらのお店の方は駅前にタンメン屋台を出しておられたおじさんの御身内の方で、御本人から直々にレシピや調理法を伝授された上で提供されているのだそうです。そして驚いたことに、屋台を引退されたあのおじさんは現在御年94歳で御健在なのだとか!
普段全くと言っていい程用事の無いところに来て、こんな懐かしいものに再会できるとは夢にも思っていませんでした。これから折りを見て通ってみようかと、真剣に考えております。