今日は昨日の荒天とは打って変わって、暖かな春らしい陽気に恵まれました。ただ、こんなにいいお天気でも外出出来ないことには違いなく、今日も元気に引き籠もり生活を満喫しておりました。
さて、歴史上では様々な疫病が流行っては人々の命を奪っていったようです。しかも世界史的にみると、100年置きに厄災が猛威を奮ってきたことがわかります。1720年にはペストが、1820年にはコレラが、1920年にはスペイン風邪が、そして2020年にはコロナウィルスが大流行し、多くの犠牲者が出ています。
これは単なる偶然なのでしょうか?それとも自然の摂理で増え過ぎた人類の間引きが行われているのでしょうか?
今までに世界でも日本でも様々な疫病が流行りました。そうした中でも外国、特にキリスト教社会と日本では、疫病に対しての捉え方が違っていたようです。
キリスト教社会では疫病の流行を神が人間に与えた罰として捉えていたようで、人間の驕りと不信心が引き起こすものと考えられていたようです。その様子は絵画にも描かれ、疫病はサタンのような悪魔の姿で表されています。悪魔の姿の疫病は人々を否応無しに死の淵へと追いやり、それを天使や神が討ち滅ぼして勝利する、つまり『闘うもの』として扱われます。
一方、日本的仏教社会では疫病は邪鬼の仕業と考えられ、疫病は鬼の姿で描かれることが多いようです。キリスト教社会と同じように人々を死へと追いやるものではありますが、高僧や行者の功力によって調伏されたり、時にはその高僧や行者に対して鬼たちが
「お宅の信徒さん達には手出ししません。」
と誓約書を書かされたりする絵巻があったりという『割と近くにいるもの』として扱われたりしています。やはり、八百万の神の坐す日本ならではの考え方と言えるでしょうか。
さて、一連の新型コロナウィルスの流行に伴って、最近話題になっているものがあります。それが『アマビヱ』という物怪の絵です。
上の写真は江戸後期、孝明天皇が即位した弘化3(1846)年の瓦版ですが、それによると肥後国(熊本県)の浜に長い髪を垂らしてくちばしを持ち、身体全体が鱗に覆われ脚が3本あるというロン毛の半魚ドンのような生き物が現れ
「疫病を退散させたくば、我が身の絵を描いて肌身離さず持つべし。」
と里人に伝えたという伝説がありますが、そのことを伝える貴重な資料です。
この『アマビヱ』については、詳しいことは分かっていないようです。この『アマビヱ』という名前についても、それよりも昔から言い伝えのある3本脚の猿の姿で描かれる『アマビコ』を書き間違えたのではないかとも言われていますが、この瓦版から150年近い時を超えて現代日本のSNS上でこの『アマビヱ』が話題となっており、様々なクリエイターやイラストレーター達が『アマビヱ』を元にした作品を発表しています。
考えてみれば、この21世紀の御世になってもこうしたものに疫病退散の願いを託す日本人という民族は、実に微笑ましいと言うことも出来るかも知れません。何となくギスギスした空気の漂う昨今、物怪にひと時の思いを馳せるのもいいではないかと思います。